前回は心筋梗塞の原因と対処方法についてお伝えしました。キーワードが動脈硬化でしたね。
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今回は起こりやすい症状と対処方法をお伝えします。
一刻も早い治療の必要性と理由があり、そのためには、どのような症状があるのかを知っておくことが大切です。
この記事の目次
1.日本の心筋梗塞の現状は?
まず、日本の心筋梗塞の概要からお伝えします。
「令和2年(2020)患者調査(確定数)」を厚生省が2022年6月に公表しています。
それによると、心臓疾患(心筋梗塞含む全ての心臓の病気)の患者総数は約173万人おられます。
そして、心臓疾患で亡くなる方はおよそ20万人と、がんに次第2位となっています。
その20万人の中で急性心筋梗塞の方は約3.5万人というデータが出ています。
2.一刻も早い治療の必要性
(1)発症後の早めの対応の必要性
急性心筋梗塞が他の病気と何が違うのかというと、一刻も早い治療が必要ということです。
なぜかというと、急性心筋梗塞で亡くなる人の半数以上が、発症から1時間以内に集中しているからです。
これは心筋梗塞の1つの特徴と言えます。
胸痛から心停止までの時間は、1時間以内が約86%(うち瞬間死が25%)となっています。
死亡する人の多くは病院に到着する前に亡くなっています。
このように言うととても怖い病気と不安を煽るだけになりますが、発症後、病院に到着してから早急に治療を開始できれば、約9割の方が助かっています。
(2)病院到着後の早めの対応の必要性
病院到着してからも早急な治療が必要となります。
治療には再灌流療法と呼ばれる治療が行われます。
できるだけ早く止まってしまった血液の流れを再開してあげます。
血栓という血液の塊で詰まっている血管を広げる、もしくは、薬物を使って、血栓を溶かす治療が行われます。
ACC(米国心臓病学会)/AHA(米国心臓協会)というところが、再還流療法に関するガイドラインを出しており、治療は90分以内、血液の流れが滞っている時間は120分以内を推奨しています。
日本循環器学会では、90分以内と150分以内に血液の流れが再開した場合では、150分かかった場合だと、病院内での死亡が1.7倍も高くなるというデータを出しています。
3.心筋梗塞の症状を知っておきましょう
(1)胸以外にも痛みがある?
上記でお伝えしたように早期の対応が必要となりますが、そのためにはどのような症状があれば、心筋梗塞を疑うのかが大切になります。
代表的な症状は、突然胸が締め付けられるような強い痛みや胸の圧迫感です。
しかも安静にしていても、治らず、20分以上続きます。
また放散痛といって、胸以外の部分、肩・腕・首・歯にも痛みが広がることがあります。
他には冷や汗、息が苦しい、吐き気、嘔吐が見られることもあります。
(2)ニトログリセリンが効かない?
人によってはニトログリセリンというお薬が処方されている方もおられるでしょう。
このお薬は血管を広げてくれる効果があります。
使用することで、胸痛や締め付けられるような症状を一時的に抑える効果があります。しかし、心筋梗塞の場合、ニトログリセリンは効果が見られません。
狭心症と心筋梗塞の違い
狭心症 | 血管内が狭くなっていますが、血液の流れが完全にとまってはいないので、血管を広げるニトログリセリンを使用すると効果が見られる。 |
心筋梗塞 | 完全に血管が詰まっており、血液の流れが止まっているのでニトログリセリンを使用しても効果がほぼみられません。 |
(3)予兆の症状があることも
心筋梗塞を発症した人の約半分の人は、発症する1〜2ヶ月以内に、胸の痛みや締め付けられる・息が苦しい・冷や汗がでる、などの自覚症状があります。
この予兆となる症状によく見られるのが、胸の痛みや圧迫感が5〜10分ほど繰り返されるという症状です。
しかし、安静にしていれば症状が一時的ですが治るので、病院受診をされない方も多くおられます。しかし、繰り返される胸の痛みや圧迫感が感じられる時は、心筋梗塞を疑い、医療機関やかかりつけ医を受診しましょう。
(4)高齢者は症状が出にくいことも
高齢者の方や認知症の方は、症状を感じていても、表現することが難しく、そのまま見過ごされることがあります。
しかし、いつもと違う症状があれば医療機関の受診を考えましょう。
症状としては、通常と同じ動きをしても、息が乱れている、冷や汗がでている、いつもより動く時間が少なくなっているなどの症状が見られれば、なにかしらの変化が本人にある場合が考えられます。
4.対処方法
(1)早急な119
胸痛が20分以上続く場合は早急に救急車を呼びましょう。
昨今、救急車の適正利用が求められています
。安易に救急車を呼ばないよう求められていますが、心筋梗塞を疑う症状が見られた時は、救急車を呼ぶ必要性があります。
20分以上続く胸痛と書きましたが、救急車が現場に到着する時間は令和4年版、救急・救助の現況によると、全国平均約9.4分です。また病院到着時間は平均約42.8分となっています。
20分待っていると、自宅到着まで約30分、そこから病院到着まで70分ほどかかってしまいます。
突然の胸痛が見られた場合は救急要請しましょう。
もし判断に迷う場合は救急安心センター事業(#7119)というのがあります。
救急車を呼んだ方がよいかどうか相談する場所です。
医師や看護師など専門家が状況を確認し、病院受診の必要性があるのか、受診できる医療機関はどこかを案内してくれます。
(2)救急車がくるまでにできること
上記で説明したように、救急隊が到着するまで平均9分かかります。その間にできることをお伝えします。
- タンやベルトをゆるめて、楽な姿勢をとる
- 呼吸がしやすいように、上半身を少し起こす。(枕や布団などを使用してもいいでしょう)もしくは、机の上に枕かバスタオルを敷き、もたれかかるような姿勢をとると、心臓に負担がかかりにくい姿勢となります。
- 逆にとってはいけない姿勢は、うつ伏せや仰向けの姿勢です。呼吸がしにくく、心臓に負担がかかるためです。
- 意識がない場合は、迷わず心臓マッサージか外出先であればAEDを探しましょう。
AEDは心臓の動きを把握し電気ショックを与えるか適切に判断してくれます。
- 外出先であれば、一人では対応困難なので、大声で助けをよびましょう。
- ご自宅であれば、救急隊が入りやすいように、玄関の鍵を開けておきましょう。
- すぐに入院になりますので、保険証、お薬手帳、かかりつけ医の診察券、内服している薬の準備を行いましょう。緊急時は、焦りがありますので、常日頃から準備しておくとよいでしょう。
5.まとめ
心筋梗塞の症状と一刻も早く対応をする必要性をまとめました。病院での治療効果は上がってきているので、症状が見られた時は、記載した対応を行いながら早めの救急要請を行いましょう。
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この記事を書いた人
山川さちえ
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」