子どもは温かい食べ物より、冷たいものを好むため、下痢をすることがあります。ただの下痢であればお腹を温めて安静にしていれば次第に治まってきますが、ウイルスや細菌感染による腹痛や下痢であれば適切な治療が必要になります。症状に対する子どもの反応はわかりにくいこともあるため判断に迷うこともあると思います。
そこで今回は、子どもの胃腸炎について詳しくお伝えします。
この記事の目次
1. 子どもの胃腸炎の原因
胃や小腸、大腸で炎症が生じている状態を胃腸炎といいますが、その大半が細菌やウイルスに感染したことで起きる感染性胃腸炎です。感染の経路は、病原体が付着した手指で汚染された食べ物や飲み物を口に入れることです。
1年中発症していることもありますが、特に冬場に感染者が増える傾向にあります。
①細菌性胃腸炎
冷蔵保存せずに放置しておくと細菌が繁殖する食べ物があります。
細菌性胃腸炎は6月~8月ごろに多くみられます。細菌で汚染されている食べ物などを介して発症する経口感染が原因です。
細菌性大腸炎が家族内、学校や飲食店で集団発生したものを食中毒と言います。
主な原因菌は 赤痢 コレラ サルモネラ 黄色ブドウ球菌です。
②ウイルス性胃腸炎
ノロウイルスは秋から春季に流行し、ロタウイルスは冬から春先に発生します。
感染力が非常に強く症状が治まった後でもウイルスが便中に排泄されることがあります。
主な原因ウイルスは、ロタウイルス アデノウィルス ノロウイルス
※原因菌やウイルスについては下の表を参照ください。
細菌性胃腸炎 | ウイルス性胃腸炎 |
赤痢菌 | ノロウィルス |
コレラ菌 | ロタウイルス |
黄色ブドウ球菌 | サボウイルス |
病原性大腸菌(O-157) | |
カンピロバクター | |
腸炎ビブリオ | |
ボツリヌス菌 | |
ウェルシュ菌 | |
2. 胃腸炎の症状
胃腸炎の症状は発熱、嘔吐、下痢が主な症状です。
腸の動きが不安定になり、腹痛が波のように出現します。
下痢は4~7日間続きます。
①細菌性胃腸炎
原因菌に汚染された食品が口に入ると数日後に腹痛、下痢、発熱、が起こります。
原因菌によって違いがありますが、下痢はどの細菌に感染しても起こります。
まれに血便が出ることがあります。
②ウイルス性胃腸炎
ウイルス性の胃腸炎の症状は突然の嘔吐から始まりムカムカした嘔気が続きます。
嘔吐の回数には違いがありますが、次に下痢を繰り返します。
下痢は3日~1週間くらい続く場合があります。
ロタウイルスに感染した場合の便は白っぽい色をしていますが次第に水様性の下痢になります。
発熱がないことが多いですがまれに高熱が出る場合があります。
3. 子どもの胃腸炎の治療について
医療機関で感染性の胃腸炎と診断されたら、感染を広げないために保育園、幼稚園や学校は欠席するのが原則です。
そのうえで安静と水分補給に努めていきましょう。
今のところ胃腸炎の辛い症状をすぐに改善する特効薬というのはありません。
少しでも子どもの症状が回復するように脱水を予防していくことが大切です。
①水分や食事の摂り方
- 水分を飲めないからと、すぐに脱水になることはありません。吐き気がある時は無理に水分を勧めず、落ち着いてきたらゆっくりと水分補給を開始してください。
- スプーン1杯から始めて少しずつ様子をみながらこまめに進めてください。
- 吐かないと思っても一度にたくさん飲むと吐きます。
1日量としては体重(㎏)×50~100mlを飲めると良いと思います。
- 水分の中身は糖分と塩分のバランスが整っていることが重要です。市販の経口補水液を飲めると良いですが、リンゴジュース、具のない野菜スープも良いでしょう。
※経口補水液とはスポーツドリンクよりも電解質の濃度が高く脱水症の人に用いる飲料水です。
(OS-1などがあります)
②水分が摂れない場合
嘔吐が続き、脱水の可能性がある場合は受診をする必要があります。
以下の症状を参考にしてください
- ぐったりして元気がない
- 顔色が悪く眠気がある
- 口の中が渇いている
- 尿量が少ない
- 皮膚に張りがない
③胃腸炎が重症化している場合
脱水はまれにけいれんやショック症状、脳症、腎不全などの合併症を起こすことがあります。
また、子どもの下痢や嘔吐の症状には重篤な病気が隠れていることがあります。
次のような症状が現れた場合は通常の胃腸炎ではない可能性があります。
- 意識がもうろうとしている
- 痛みが強く激しく泣きじゃくる
- 便に血液が混じる
- 嘔吐物が緑色をしている
このような症状がある場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
判断が難しい場合もありますが、頑張りすぎずに医療に委ねることも大切です。
4. 胃腸炎の予防について
胃腸炎には手指衛生が最も効果的な予防策です。流水と石けんによる手洗いを30秒以上することが推奨されています。また、出来るだけ生ものを控えることや、食品を十分に加熱することも大切な予防策です。
ノロウイルスやロタウイルスにアルコール消毒は効果がありません。
食器類などは薄めた塩素系漂白剤でつけ置き消毒をします。
使用した洗面台やトイレの便座も薄めた漂白剤で拭きとります。
薄めた次亜塩素酸は時間が経つと消毒の効果がなくなるため、24時間以内に使い切るようにしましょう。
授乳期の子どもがいる家庭は哺乳瓶など必要な物品を常に清潔にするよう心がけることが大切です。
5. まとめ
子どもの症状が悪くなるのは基本的に脱水か細菌やウイルスの繁殖によるものです。
特に脱水になると症状が急激に悪化するので親は脱水にならないように水分の摂り方を工夫する必要があります。
1週間寝込んだら身体が回復するのに同じ日数がかかります。
ウイルスや細菌がお腹の中から排出されると必ず症状は落ち着きますから、子どもが寝込んだ時こそ、親子の関係性を築ける良い機会と考えて子どもが安心して療養できるように努めましょう。
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この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」
動画配信YouTube「看護師mikakoの更年期チャンネル」