皆様、毎日歯を磨いていますか?
子どもの頃、ちゃんと歯磨きをするように躾けられたのを思い出します。
今では少なくとも起床時と寝る前の2回は必ず歯磨きする習慣が定着し、今までに虫歯にならず済んでいます。
看護師として働く現場でも、患者様対して歯磨きの介助など歯の健康をサポートしています。
生まれてから死ぬまで歯のケアが必要です。
なぜなら歯には大切な役割があるからです。
今回のコラムは、知っていただきたい歯の大切な役割についてまとめました。
普段から歯を綺麗にしている方だけでなく、最近歯のケアを疎かにしてしまっていた方も、思い返していただければ幸いです。
この記事の目次
1. 歯の大切な役割4つ
人は一生に1回、歯が生え変わります。
生まれてすぐ生えてくる歯を乳歯、6歳前後で生え変わりが始まり13歳くらいまでに生え変わる歯が永久歯と言います。
永久歯を失うともう歯は生えてこないため、一生かけて大切にする必要があります。
乳歯と永久歯の役割は一緒で、代表的なものは4つあります。
歯は生え始めてからずっと私たちの生活をサポートしてくれています。
(1)食べる
歯を使う状況を考えたときに最初に思い浮かぶのは「食べる」ではないでしょうか。
食べる時に食べ物を細かく噛み砕いて消化しやすいようにするのが主な目的です。
他にも食べ物を噛むことで得られるメリットがあります。
食べ物によって食感や噛みごたえが異なります。
この感覚は脳に刺激を与え、食事の楽しさを広げる効果があります。
(2)話す
話すときも歯はとても大切な役割があります。
歯を意識しながら話していないので、意外に感じられるかもしれません。
歯は唇や舌の動きをサポートして、正確な発音が出やすくなります。
特に発音に影響があるのは下記の通りです。
前歯が抜ける | サ行の発音がしにくい |
奥歯が抜ける | ハ行・ラ行の発音がしにくい |
歯がない | タ行の発音がしにくい |
(3)表情をつくる
歯は内側から顔の形を支えています。
そのため、歯の有無で顔の形が変わり、表情にも影響します。
歯が全てある健康な状態だと、表情豊かで活力がみなぎっている表情に見えます。
歯を1-2本失った状態だと変化はあまり見られませんが、数本失うと顔にシワが増えるなど見た目が変化します。
さらに全ての歯がなくなった状態になると、口元や顔全体がかなり変化するため表情が違ったように見えます。
(4)バランスを保つ
歯は体全体のバランスを保つ役割もあります。
噛み合わせがよいと頭を支える力もつき、全身のバランスを整えます。
また、噛み締めると力が入りやすくなるため、運動神経も良くなります。
しかし、歯を失うと抜けた歯の両隣の歯が傾くなどし、噛み合わせが悪くなります。
全身のバランスが崩れるため、頭痛や肩こりの原因になります。
2. 歯は健康に直結する
日本だけでなく世界で歯に関する研究がされています。
中でも2015年に日本歯科医師会が分析した1,000件以上の質の高い研究論文からは、残った歯が多いほど寿命は延びるということがわかっています。
つまり、歯は健康に直結するのです。
歯と健康の関係について特に注目したい3点にまとめてみました。
(1)歯と運動能力
スポーツ歯学という分野はご存知でしょうか?
スポーツを安全に楽しむために歯科的な問題を予防・治療する歯科分野です。
このような専門分野があるほど運動と歯は大きく関係していると考えられています。
例えば、噛み合わせや歯並びは運動能力と深く関係していると言われています。
なぜなら、人は力を発揮する時に歯を食いしばる傾向にあるからです。
歯を失うなどで歯並びが悪くなったり嚙み合わせに不具合があったりすると、全身の筋肉や骨格が歪んでしまいます。
トップアスリートの多くは、自身の力を発揮するために嚙み合わせを補う目的でマウスピースを作っているほどです。
一般的な生活をしている方でも、歯に問題があると慢性的な肩こりや腰痛など、全身の様々な不調を引き起こす危険性があります。
ご高齢の方だと、歯がある人とない人と比較し要介護認定を受ける割合に差があるということもわかっています。
このことから、歯と運動能力は密接な関係ということがわかります。
(2)歯と病気予防
歯にトラブルがある方は、心疾患・糖尿病・肺炎のリスクが高いと言われています。
- 心疾患
-
歯にトラブルがあると、特に心筋梗塞や狭心症と言った虚血性心疾患の発症リスクが高まることがわかっています。
歯に付着している細菌などが血管内に侵入し、心臓まで細菌が届いてしまい、結果的に心血管の病気が発症しやすくなります。
- 糖尿病
-
糖尿病の方は歯のトラブルが起こりやすく、歯のトラブルがある方は糖尿病が悪化しやすくなります。
歯にトラブルがある方は口の中で炎症が起こっており、この炎症によって血糖コントロールが上手くできなくなってしまいます。
見方を変えると、糖尿病の治療が上手くいっていなかった方が歯の治療を始めると、血糖コントロールがよくなることが明らかになっています。
- 肺炎
-
歯にトラブルがあると、唾液中の細菌などが肺に感染して起こる「誤嚥性肺炎」が起こりやすくなります。
特に要介護の高齢者などは飲み込む力や咳反射が低下しているため、唾液が気管に入りやすく誤嚥を起こしやすい状態です。
歯のケアを怠っていると、口腔内の細菌が増え唾液の中にも細菌が増えてしまうため、肺炎が起こりやすくなってしまいます。
以上のことから、歯を綺麗に保つことでこのような病気を防ぐことができるのです。
(3)歯と健康寿命
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を指します。
2019年の平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳です。
同年の健康寿命は、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳であり、10年ほど差があります。
この差は、日常生活に制限のある期間、不健康な状態の長さを指します。
つまり、平均すると約10年、何かしらの介護が必要な状況になっているのが平均的であると言えます。
厚生労働省は平均寿命と健康寿命の差を縮めるためにいくつかのポイントを提示していますが、その中の一つに「歯の健康」があります。
その理由は、過去に歯の研究からわかります。
代表的なものは、65歳以上の愛知県知多半島の住民を4年間追跡した研究があります。
その研究で明らかになったことは下記の通りです。
- 認知症になる方や転倒する方は、歯が多く残っている人より歯が少ない人の方が多い。
- 噛み合わせを正常に保っている人と歯がまったくない人では、認知症の発症リスクが約2倍の差がある。
この研究結果から、厚生労働省や日本歯科医師会は80歳で20本の歯を残そうとする「8020運動」という活動を推進しています。
3.まとめ
このコラムでは、以下についてお伝えしました。
- 歯の役割は、食べる、話す、表情をつくる、バランスを保つ
- 歯が多く残っていると、運動能力向上、病気予防、健康寿命が延びる
子どもの頃は虫歯になって痛い思いをしないように、歯を磨くように言われていました。
大人になってからは、自身で管理しないと𠮟ってくれる方はいません。
是非このコラムを機に、歯のケアに取り組んでくださいね。
次回は、「歯を失う原因ワースト3」についてまとめます。
併せてご覧いただけると幸いです。
<参考資料>
◆日本経済新聞 東北大、高齢期に保持できている歯の本数が多い人は健康で長生きであることを発表
◆産経新聞 「歯」を失うと、記憶力も運動能力も失う 研究結果で明らかに
◆保健指導リソース 残った歯が多いほど寿命は延びる 歯科医師会が最新エビデンスを公開
この記事を書いた人
冨永美紀
母親の入院で関わった看護師に心を打たれ、看護師資格を取得。
看護師の現場で、臨場の場に立ち会うことで『生死』について興味が沸く。
恩師の紹介でお寺とのご縁が結ばれ、2020年から密教塾生となり修行の世界へ。
現在は仕事と修行を両立するため岐阜県へ移住し、夫と犬2匹と自然豊かな場所で暮らす。
<経歴>
看護師歴10年
・腎臓内科、糖尿病内科、内分泌科病棟
・救急救命センター
・自由診療のクリニック
・コールセンター
・訪問看護ステーション
・家事代行業