毎年、死因の上位を占めている肺炎ですが、特に高齢者に多い誤嚥性肺炎は症状が悪化しやすく、救急搬送される代表的な疾患にもなっています。
高齢者は認知機能の低下によって感覚が鈍くなり、肺炎の初期症状が表面化しにくいという特徴がありますが、体の中では病状が急速に進行しているということがあります。
このように怖いイメージの誤嚥性肺炎ですが、心がけ次第で予防することが可能です。
そこで今回は、高齢者が誤嚥性肺炎を防ぐためにできることをお伝えします。
この記事の目次
1. 誤嚥性肺炎とは?
誤嚥とは、口腔内の食べ物や唾液が誤って気管に入ってしまうことです。
同時に細菌やウイルスが肺に入り込んで起こる肺の炎症を「誤嚥性肺炎」と言います。
通常は、咳をして反射的に防衛することができるのですが、高齢になると、飲み込む力や、気管に入ったものを咳で出す反射力も弱くなるため、誤嚥しやすくなります。
また、誤嚥は食べている時にだけ起きるものではありません。
口腔に食べかすが残ったままだと、寝ている間に唾液と一緒に細菌が気管を通り、肺に入ってしまうことがあります。
脳梗塞や脳出血による麻痺、バーキンソン症状の振戦があると飲み込みにくくなり誤嚥につながることがあります。
2. どのように進行するのか?
誤嚥性肺炎は1~2日以上経過してから症状が現れます。
最も現れやすい症状
- 発熱
- 長引く咳
- 苦しそうな呼吸
- 喉がゴロゴロする、肺雑音
このような症状を経てから徐々に元気がなくなり、食事や水分も受け付けなくなります。
さらに症状が進行すると、呼吸困難から酸素が不足して死亡する場合もあります。
高齢者は急激に症状が悪化する特徴があるため、熱が出て苦しそうな呼吸をしているようならすぐに救急車を呼び、手遅れにならないようにしましょう。
3. 誤嚥性肺炎を見逃さないためのポイント
嚥下機能は加齢に伴い低下します。
その原因としてあげられるのは、高齢になるにつれて唾液の分泌量が減ることや歯が抜けて噛む力が衰えること、飲み込む力が低下することです。
次のようなことに注意をすることが大切です。
- ボーッとするようになった
- 口の中にいつまでも食べ物をため込んで飲み込めない
- むせ込むことが多くなった
- 食事の時間が長くなった
- 食後、疲れるようになってきた
- 食欲がない
- 体重が減ってきた
このような兆候があればかかりつけ医に相談することをお勧めします。
いつもと違う様子が誤嚥性肺炎の早期発見につながることがあります。
4. 予防するために心がけること
誤嚥性肺炎は放っておくと死につながる病気ではありますが、日常の心がけ次第で予防することが出来ます。
特に心がけてほしいことを以下にあげていますので参考にしてください。
口の中を清潔に保つ
口腔内は適度な温度と湿度が保たれているため、細菌にとっては居心地の良い環境です。
そのため、歯磨きやうがいを怠ると、細菌が繁殖して唾液と一緒に誤って気管から肺に入ってしまう可能性があります。
高齢者は義歯や歯の隙間など、細かい部分に食物の残りかすが溜まりやすいため、食後の口腔ケアが非常に大切です。
- 義歯は毎食後に外して専用のブラシで洗うようにします。食べかすや歯垢の塊がついてヌルヌルしている場合は入れ歯洗浄剤に浸しておくきれいになります。
- 高齢者は、歯がないかた、食べることが出来ないかたもおられますが、口腔ケアは必要です。
歯だけではなく、唇の内側や頬、舌の粘膜にも細菌が付着している場合があるため、スポンジブラシの使用、ガーゼで拭うなど、清潔を保つようにしましょう。
食事中や食後の姿勢に気を付ける
加齢による筋力低下は足腰だけではなく嚥下力にも関係します。
食道と胃のつなぎ目にある食道括約筋の筋力が低下すると、胃の中に溜まったものが簡単に食道に戻ってしまいます。
食後、すぐに横になると逆流した食物残渣や胃液が少しずつ肺に入り、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
また、嘔吐したものが気道に詰まると窒息してしまうこともあります。
高齢者は食事をした後は、少なくても30分から1時間は横になるのを控えるようにしましょう。
体調により難しい場合はベッドの頭部を上げたりクッションを挟むなど工夫をして、30~45度に上半身を高く保つようにしましょう。
飲み込む力を鍛える
食べものや飲み物を咀嚼し、喉に送るのに必要な筋肉、舌や唇、頬を柔らかくするために舌や唇、頬の筋肉トレーニングを行います。
高齢者が集うサロンやデイサービスでは口腔体操を実施しています。
一人では続けるのが難しいため、地域のサロンやデイサービスを利用して、笑ったりおしゃべりをする機会をつくると誤嚥性肺炎の予防につながります。
食事の形態を工夫してみる
飲み込む力が弱い高齢者は、細かく砕いたものや、そぼろのようなバラバラとするものは、口の中に長くとどまるため誤嚥しやすくなります。海藻類も口の中に張り付いてしまうため、避けた方が無難です。
あんかけ風や、市販のトロミ剤を使用し、食材をまとまりやすくすると嚥下しやすくなります。
飲み物は、ポタージュのようにすれば、ゆっくりと喉を通り誤嚥を防ぐことができるでしょう。
5. まとめ
高齢者が発症する肺炎の7割以上は誤嚥性肺炎と言われています。
それによって救急搬送される高齢者も年々増えているのが現状です。現代は、ひとり暮らしの高齢者や、家族がいても疎遠になっているかたもおられますので、誤嚥性肺炎は、高齢者にとっては身近な問題となり得ます。
そのような中でも、元気なうちから適切なケアを続け、人とのつながりを通して予防と早期発見につなげることが可能です。高齢者だけではなく、すべての人々が誤嚥性肺炎を予防するためにできることを知り、実践することで救急医療に貢献できるのではないかと思います。
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この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」