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高齢者の皮膚の特徴というと、どのようなイメージされるでしょうか?
高齢者の皮膚は、加齢に伴い様々な症状が出てきます。
そのため、スキントラブルが起こりやすいです。
高齢者に限らず、あらゆる世代でもスキントラブルは多く見られます。
まずは、皮膚の構造と役割を知り、高齢者の皮膚の特徴についてみていきましょう。
この記事の目次
皮膚の構造と役割
皮膚の構造
皮膚は、
・表皮(ひょうひ)
・真皮(しんぴ)
・皮下組織(ひかそしき)
の3層から構成されています。
さらに表皮は、
①角層(かくそう)
②透明層(とうめいそう)*手のひらと足裏のみ
③顆粒層(かりゅうそう)
④有棘層(ゆうきょくそう)
⑤基底層(きていそう)
の5層に分かれています。
表皮の一番深い層である基底層では、日々新しい細胞がつくられ、少しずつ表面に押し上げられて、角層となり、最後は垢となって剥がれ落ちるというサイクル=ターンオーバーを、約40~50日周期で繰り返しています。
表皮は、厚さが平均約0.2ミリのとても薄い膜です。
皮膚のいちばん外側にあり、外部からの異物の侵入や体の水分の蒸散を防ぐバリアとなって、内部を保護しています。
表皮には、免疫に関する細胞などが存在していますが、神経や血管は通っていません。
真皮は弾力性があり、血管、神経、リンパ管が通っています。
また、炎症に関与する肥満細胞や、免疫に関与する組織球が存在しています。
皮下組織は、真皮の下の組織で、脂肪を多く含んでいるため皮下脂肪組織とも言われます。
皮膚の「付属器」として、
①汗腺(かんせん)
皮膚にある汗を分泌する腺。主に2つの汗腺があります。
・エクリン腺…
主に体温を下げるために利用されます。エクリン汗腺は表皮に直接開口します。
・アポクリン腺…
エクリン腺よりも大きく、主にわきの下、耳の中、鼻の中や乳輪や陰部等に存在します。
アポクリン汗腺は性ホルモンの影響を受け、体温調節に影響を及ぼします。
②皮脂腺(ひしせん)
皮脂を分泌する小さい腺。脂腺ともいいます。
皮脂には、皮膚の表面を保護する作用があるとともに、不感蒸泄を抑える、皮膚の保湿や角層の水分を保つ役割もあります。
③毛包(もうほう)
毛包のうち、皮膚表面から見ることのできる部分は、一般に毛穴と呼ばれています。人の肌の1cm四方には、少なくとも20個は存在します。
発毛以外にも毛包の役割は幾つかありますが、いずれも体内から体外へと放出する役割をもっています。
皮膚呼吸が代表的で、水蒸気などを発散しています。
また皮脂も分泌されますが、皮脂が毛穴に溜まると角栓となり毛穴を塞ぎ、毛穴の機能を低下させます。
また、毛穴の重要な役割として体温の調節のために汗を発散することが挙げられます。
④毛
毛は体温を保ち、外からの刺激(紫外線、こすれ、衝撃など)から体を守る役割があります。
毛が多く生えている場所には脳(頭)、生殖器(デリケートゾーン)、リンパ節や太い血管(ワキ)など大切な臓器があります。
といった特別なはたらきをしている器官も備えています。
皮膚の役割
皮膚にはさまざまな役割があり、次のような6つの主なはたらきがあります。
・保護作用
体外からの刺激(機械的・物理的な外力、化学刺激物質、微生物、紫外線など)から体を守るとともに、体内からの水分喪失を防ぎます。
・分泌作用
皮脂や汗を分泌します。
皮脂腺から分泌される弱酸性の脂(皮脂)は、皮膚の乾燥を防いだり、細菌の繁殖を防いだりする役割を担っています。
・体温調節作用
暑いときには汗を出して体温の上昇を防ぎ、寒いときには立毛筋を収縮させて体温が奪われないようにします。
・貯蓄作用
皮下に脂肪を蓄える作用をもちます。皮下脂肪は外部からのクッションの役割や、寒さに備える役割があり、身体を維持するために必要です。
・排泄作用
体内の老廃物を、汗腺から汗として体外に排出する作用があります。
・知覚作用
触覚や痛覚、温覚、冷覚、かゆみなどの感覚をとらえる役割もあります。
高齢者の皮膚の特徴
乾燥
肌は、たくさんの層によって作られていますが、一番表側に角層(かくそう)という層があります。
角層には、肌の水分を保つバリア機能と、肌のうるおいを正常な状態に保つ保湿因子が備わっています。
しかし、そのバリア機能と保湿因子は年齢を重ねると衰えてしまいます。
加齢とともに、肌の水分が保てなくなり、乾燥してカサつき、本来の防御機能も低下します。
乾燥が、引き起こされるとかゆみも生じやすくなります。
また、汗や皮脂の分泌の減少により皮膚のもつバリア機能が低下します。
軽度の乾燥では白く粉をふく状態ですが、乾燥が酷くなるとひび割れのようになり、網の目のようにひびが見えることもあります。
張力の低下
加齢により、新陳代謝が低下すると、真皮において膠原線維(こうげんせんい)=コラーゲンが減少します。
そして、弾性線維=エラスチンが変性することにより、皮膚にしわができ弾力性の低下が生じます。
また、たるみに関しては皮膚の深い部分、真皮に原因があります。
肌の張りは膠原線維と弾性線維とによって主に保たれています。
このコラーゲン線維と、エラスチン線維は年齢とともにダメージを受け、肌の弾力が失われていきます。
菲薄化(ひはくか)
表皮の最も深いところにある基底層で、基底細胞がつくられ、徐々に表面に押し上げられます。
やがて角層となり、最後に垢として剥がれ落ちるサイクル=ターンオーバーの期間は、加齢に伴い延長します。
基底細胞の増殖性が低下するため、表皮は薄くなっていきます。
真皮も、膠原線維(コラーゲン)の減少や、弾性線維の変性によって薄くなり、外力からのクッションの役割を果たす皮下脂肪層も、薄く脆弱になっていきます。
扁平化(へんぺいか)
表皮突起(表皮が真皮に入り込んでいる部分)が消失し、真皮との接合部が扁平化していき、表皮と真皮の間のずれが生じやすくなります。
さらに表面が平坦化して光沢を帯びることもあります。
このような皮膚は傷ができやすく、治りにくいこともあります。
免疫反応の低下
表皮において、皮膚の免疫に関連する細胞が減少すると、免疫反応が低下します。
高齢者の皮膚の変化の特徴に、汗や皮脂の分泌の減少があります。
汗や皮脂の分泌が少なくなると、皮膚のもつバリア機能が低下し、乾燥が引き起こされます。また、乾燥が強くなるとかゆみも生じやすくなります。
皮膚を掻くことにより、皮膚の表面に小さな傷がつきます。
高齢者は、皮膚の再生能力が低下しているため、傷口から細菌が侵入しやすく、免疫機能が低下しているため感染しやすい状態になります
まとめ
加齢に伴い、高齢者の皮膚には様々症状が出てきます。
高齢者に見られる、皮膚の特徴を知ることで皮膚疾患と対策についてもより深く理解することが出来ます。
次回は、高齢者に多い皮膚疾患について書いていきたいと思います。
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この記事を書いた人
全国訪問ボランティアナースの会キャンナス弘前(青森)代表。
看護師歴6年。(内科病棟)
結婚後は一時退職し、自分に出来る看護はなにかあるのだろうか、と模索していた時にキャンナスの存在を知り、キャンナス弘前を立ち上げる。
その後、様々な診療科(婦人科、皮膚科、特別養護老人ホーム、訪問入浴など)の経験の傍ら、看護学生や介護士の実習や演習、授業などの講師業などにも従事。
フリーランス看護師として様々な働き方にチャレンジ中。