- 糖尿病だったらどうしよう
- 血糖値が毎年上がっていくけど大丈夫かな?
- 家族が糖尿病なので自分も心配
- 怖い病気って聞いたけどどうしたらいいの?
こんな心配や悩みをお持ちの方は多くいらっしゃると思います。
でも、大丈夫!正しい知識を身につければ糖尿病はこわくありません。
この記事では糖尿病とはなにかを分かりやすく解説し、今後の血糖ケアのため身につけておきたい知識をお伝えします。
この記事の目次
1.糖尿病とはどんな病気?
糖尿病とは血糖値が高い状態が続くことでおきる病気です。
糖尿病がこわいと言われている理由は、高血糖をそのままにしておくと重大な合併症を引き起こす可能性があるからです。
透析や失明、下肢切断により生活の質を大きく下げ、心筋梗塞や脳梗塞により命を落とす危険性もあります。
血糖値が高いとどうなるかについては前回の記事をご覧ください。
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糖尿病にはいくつか種類がありますが、主に「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があります。
日本人の糖尿病の95%は「2型糖尿病」です。
今回は多くの人がケアする必要がある「2型糖尿病(以下、糖尿病)」について解説していきます。
①糖尿病の原因は?
糖尿病の原因
- 食べすぎ
- 運動不足
- 肥満
- 内臓脂肪の蓄積
- ストレス
※生活習慣の乱れが大きな原因です。これに加え加齢や遺伝的な体質が影響して発症。
このため2型糖尿病は「生活習慣病」ともいわれるのです。
糖尿病を発症する人の体内は、生活習慣の乱れにより常に高血糖状態にあります。それをもとの血糖値に下げようと、膵臓は大量のインスリンを分泌し続けています。
一方では、内臓脂肪の蓄積によりインスリンの効きは悪くなっており、血糖値が下がらない悪循環になっています。
長期的な高血糖が膵臓を弱らせて糖尿病を発症する原因になっているのです。
②糖尿病の症状は?
代表的な自覚症状
- のどが異様に乾く
- 尿が多い、甘い匂いがする
- 手足がしびれる
- だるい
- 体重が落ちる
しかし、初期段階ではほとんど症状がなく、症状がでた時には合併症を起こすほど進行している可能性があります。
健診結果などで血糖値が高かった、糖尿病を指摘された場合には自覚症状がなくても早めの受診が大切です。
初期のうちに対策をはじめ、生涯の健康を維持していきましょう。
では、糖尿病かもしれないと思ったらどうしたらよいのでしょうか?
次は糖尿病の検査と診断についてお話していきます。
2.糖尿病はどうやって分かるの?
①糖尿病の検査は何をするの?
◎血糖値を調べる採血検査
慢性的に血糖値が高いかを確認し、隠れ糖尿病もみつけることができます。
HbA1c | 過去2か月の血糖値の平均を表します。 食事に左右されず健診時に測定されることが多い。 |
空腹時血糖 | 食事を抜いた空腹時に測定。 |
ブドウ糖負荷試験 | 10時間以上の絶食後、検査用の甘いサイダーを飲んで行う検査。 飲む前と飲んだ30分後、1時間後、2時間後に血糖値を測定。 食後の隠れ高血糖をみつけることができる。 |
◎合併症を調べる検査
②糖尿病の診断はどうやって出るの?
以下の検査値が出た場合、糖尿病である可能性が高くなります。
- HbA1cが6.5%以上
- 空腹時血糖が126mg/dl以上
- 食事をとった後に測った血糖(随時血糖)が200m
- g/dl以上
- 糖尿病特有の自覚症状がある
ただし、この数値に達していなくても隠れ糖尿病になっている可能性があります。
血糖が高いと言われたら、精密検査のため病院を受診し正確な診断を受けましょう。
1~2回の検査で判定可能です。
診断の結果は「糖尿病型」「境界型(糖尿病予備軍)」「正常型」のいずれかに判定されます。
判定後はどんなことをしていけばよいのでしょうか。
今回糖尿病と判定されなかった場合でも、血糖値を下げなければいずれ糖尿病になります。
血糖値が高いすべての人にとって、血糖ケアは大切です。
次は血糖値を下げるための治療についてお話していきます。
3.糖尿病はどんな治療をするの?
糖尿病治療の目的は、高血糖が引き起こす様々な合併症を予防する、または悪化を阻止することです。
そのためには血糖値をできるだけ正常にしなければなりません。
治療は基本的に食事療法、運動療法、薬物療法の3つを組み合わせて行われます。
①最優先は食事療法、次に運動療法
最善の治療は生活改善です。特に食事療法が重要で、運動よりも食事の内容やバランスを整えることが優先です。
からだに入る糖の量が変わらなければ、いくら運動で消費しようと限界があるのです。
②最後に薬物療法を追加する
生活改善をしても目標血糖値にまで下がらない場合は薬物療法をはじめます。
薬は経口薬や注射薬など様々な種類があり、あなたの状態にあった薬が処方されます。
どんな目的で使っているのかを理解した上で治療を進めるとよいでしょう。
しかし例外もあります。
それは血糖値が高すぎる場合です。
生活改善を待たずに薬物治療を始める場合がありますが、併行して生活改善も行っていきます。
③薬を飲んでも食事と運動は続けましょう
薬を飲み始めると数値が下がるためほっと一安心ができるでしょう。
しかしこれまで継続してきた食事療法と運動療法をやめてしまうと、肥満が進んでしまったりインスリンの働きが悪くなったりして治療効果が弱まってしまいます。
必ずと言っていいほど血糖値は再び上昇します。
健康的な生活習慣を続け血糖値が安定すれば、将来的には薬の量を減らして止めることもできます。
糖尿病を機にこれまでよりも健康的で充実した生活を送ることも可能なのです。
4.2型糖尿病は治る可能性がある
生活習慣の乱れによっておこる2型糖尿病は、実は「治る可能性がある」と言われています。
医学的に言うと「完治」ではなく「寛解」という状態です。
糖尿病と診断されても、食事療法や運動療法を続け血糖値を限りなく正常に戻していけば、薬を使うことなく一生涯健康な人と同じ状態でいられるのです。
食事療法や運動療法などと固い言葉では「そんなものしたくない」と感じたかもしれません。
簡単に言い換えると「健康的な暮らしをする」ただこれだけです。
自分の生命維持に必要な分だけの食事をとり、心地よいと感じる必要な分の活動をする、自分のからだにちょうどよい暮らしをすればよいのです。
自分のからだに合わない生活をしていたことがそもそもの糖尿病発症の原因なのです。
寛解実例
下記には、糖尿病と診断され数か月から数年の時を経過し「寛解」に至った方の事例をご紹介します。
【糖尿病寛解実例】①
Aさん 56歳男性 会社員
HbA1c:11% 空腹時血糖:250mg/dl BMI:27
健診で血糖高値がみつかり精密検査のため近所のクリニックを受診しましたが、数値が高いため総合病院へ紹介されました。
紹介先を受診すると、2週間の教育入院が必要と言われ、なんとか仕事を調整しました。
入院後より食事療法と薬物療法(インスリン注射)を開始。
退院後も食事と運動を続けました。
食事は揚げ物総菜と炭水化物のみの生活から野菜総菜を追加し、野菜を先に食べるなど食べ方も意識しました
仕事の帰宅を早め朝晩の犬の散歩を担当し、そこに軽いジョギングと縄跳びを追加しました。
血糖値はみるみる改善し、2か月でインスリンをやめることができました。
その後、経口薬に変更しさらに3か月後にはすべての薬が中止になりました。
通院は3→6か月おきとなり、定期チェックを受けながら血糖値を良好に保っています。
【糖尿病寛解実例】②
Bさん 68歳女性 主婦
HbA1c:9.2% 空腹時血糖:220mg/dl BMI:29.5
健診で血糖高値が数年続いていましたが無症状のため放置。
3年目に市の保健師の訪問で受診勧奨を受け、糖尿病専門クリニックを受診しました。
初診時の医師より「薬は出さないから頑張ってみなさい」と言われ、市の糖尿病教室や料理教室に通い食事療法の勉強をしました。
また、運動不足の自覚があり夫と一緒に週3回のウォーキングを始めました。
クリニックには毎月通院し採血で血糖値の状態を確認していました。
そして3年経過する中で、食事と運動のみでHbA1cは5.8%にまで戻り良い状態をキープしています。
正常高値ではありますが、心もからだもこれまでで一番健康だとおっしゃっています。
薬は服用していませんが、定期チェックのため3か月に1回の通院を続けています。
お二人の糖尿病ストーリーを読み、何か感じることはあったでしょうか?
5.まとめ
今回は糖尿病の原因・症状・治療と糖尿病の寛解についてお伝えしました。
2型糖尿病は生活習慣の乱れによって発症し、初期では自覚症状がありません。
血糖値が高い、糖尿病の可能性があると言われたら、早めの受診と治療が大切です。
糖尿病はきちんと理解し対処をすればこわいものではありません。
これを転機とし、健康的な「自分にちょうど良い暮らし」にシフトチェンジしてみてはいかがでしょうか。
次回は糖尿病の予防・改善のための食事についてお伝えしていきます。
具体的な行動や患者さんの成功例・転機なども参考になったら幸いです。
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この記事を書いた人
安富由紀子
<プロフィール>
看護師・保健師として、何千人という生活習慣病やその予備軍と診断された方の保健指導や健康教育に携わる。その中で心身共に健康であるためには、「自分が大切にしていることを知ること」「なりたい自分に向かうこと」が重要であることに気が付く。
現在では「健幸ビジョンコンサルタント」として既存の医療では解決できなかった“心から健康で幸せになる方法”を社会に啓蒙するため、個人や企業での健康相談、研修、コンサルティングを行っている。
<クレド>
①指導をしない
②徹底した対話と、感情や意思を引き出す関わり
③クライアント自身の思考や情報取得を尊重して主体性を育む関わり
<経歴>
看護師・保健師 専門は生活習慣病予防
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
(一社)日本看護コーチ協会 認定看護コーチ
<講座・執筆>
・治療選択ワークショップ主催・講師(株式会社ぷれしゃす様 )
「もしもあなたが乳がんになったら」
・エンディングノート作成講座・講師(株式会社ウィシュレーン様)
「延命治療、あなたの意志の伝え方~家族に重圧を残さないために」
・ウェルネス講座 講師(一般社団法人日本ナースオーブ様)