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看護師がわかりやすく解説! がん⑤ 日常の困りごとのサポート体制について

がんの治療をされると、今まで当たり前にできていたこと、簡単だったことが一時的でも、難しくなる場面があるます。今回はどのような問題点があるのか、そしてそれを補うサポート体制をお伝えします。

がん⑤ 日常の困りごとのサポート体制について
この記事の目次

がん治療中の症状

がん治療には様々な副作用があります。
使用する薬剤や治療方法によっても様々です。
また副作用は複数出現することもあります。

日常のほんのささいな事が難しくなっているとき、家族や職場の人で補えることも多々あります。
まずは、治療を受けられている方にどういう副作用があり、日常生活が困難になるのかをお伝えします。

疲労

がん関連疲労は長期に続く作用です。
通常は入眠、マッサージなどすれば疲れが取れますが、回復しにくいものです。
疲労によって衰弱したり、精神的に鬱のような症状を発症される方もおられます。

下痢・便秘

排便コントロールが難しくなります。
内服で調整されていますが、食べ物やその日の水分摂取にもより常に気をつけていなければなりません。
痛みを抑えるために、医療用麻薬を使用すると便秘がよくおこりますが、緩下剤を使用すると、下痢になる方もおられます。

口内炎

口内炎から食事の量が減ります。
うがい薬や軟膏処方があります。口腔内は粘膜ですので、痛みもありとても辛い症状の1つです。

皮膚症状

全身や指先に出るなど出現場所は様々です。
皮疹、痒み、乾燥、皮膚の亀裂などがみられます。爪が薄くなり、割れる・脱落するなどもあります。

末梢神経障害

手先足先の症状です。
しびれ、感覚麻痺、痛み、力が入りにくいなどがあります。
指先などは手袋などをされ保護されている方もいます。

吐き気

食事の量が減り、体力低下につながりやすいです。
食事の匂いでも吐き気が誘発される方もおられます。また、内服も困難になることがあります。
ご本人様が食べられるもの・形態を考慮して摂取してもらうことが重要です。

骨髄抑制

聞きなれない言葉かもしれませんが、治療により血液をつくる機能低下が起こります。
出血しやすくなる、貧血、体のだるさなどが起こります。

代表的な副作用をあげました。
治療中の方で副作用がない方はほぼおられません。
何かしらの症状を抱えながら育児や仕事をされています。

日常の困りごと

がん⑤ 日常の困りごとのサポート体制について

癌治療中の方へ、2017年にライフネット生命保険が572名のがん患者に日常生活で困っている事についてアンケート調査を行っています。

男女共に共通している問題は「食生活の配慮」「買い物」「外見の変化」「治療体調の相談」が上位の悩みという結果でした。

以下に実際どういう悩み、困りごとがあるのか一部ですが、ご紹介します。

・1週間分の野菜を切ってくれるだけでも助かる。
 
・がんについての知識のある人に買い物や家事サポートをしてもらいたい。
 
・治療中は体力がなく、味覚の変化で料理が苦痛なことも。買い物や食事の準備を気軽にできるサービスがあるといい。
 
・抗がん剤投与日に子供が発熱し、預かってくれるところがなく治療を延期した。
 
・保育園の送迎だけでもサポートがあれば随分楽。
 
・家族にも言えない弱音をはける相談場所が欲しい。

などがあります。

私が病棟や訪問時にも困りごとをよく聞きます。

ペットボトルの蓋が開けられない、服のボタンがかけられない、同意書のサインができない(文字が書きにくい)、お椀の蓋が開けられない、などよく聞き、お手伝いしていました。

こういった日常の些細な動作に支障をきたします。

今までは行政や介護保険内のシステムをお伝えしてきましたが、今回は民間のサポートシステムをお伝えします。
こういった日常の細かい困りごとは公的システムと民間サポートをうまく併用していくことが大切かと思います。

がん⑤ 日常の困りごとのサポート体制について

サポートの種類

シルバー人材センター

シルバー人材センターは全国に設置されており、60歳以上の方々が所属されています。
今までされてきた仕事を活かして専門性のあるサービス提供をされる方もいます。

申し込み手続きは簡易で、地域によっては買い物やお料理など家事代行をしてくれるところもあるようです。

どういったサービスをしてくれるのか、お住まいの地域のシルバー人材センターをインターネットで検索すると出てきます。
わからない場合には自治体の窓口などに相談されますと、教えてもらえます。

治療に費用がかかったり、仕事を一時的にも減らされていると金銭問題が気になりますが、利用料金がリーズナブルというのが特徴でしょう。

ただし、サービス事業者並みのクオリティという点では難しいところがあるようです。

家事代行サービス

民間の家事代行サービスがあります。

サービス内容は買い物、お掃除、洗濯、お子様の送り迎え、会社によってはペット対応などもあるようです。

利用料金は会社により様々であり、金額によってはホテル並のサービスを提供するところもあるようです。

必要なサービスを検討する必要があります。

保険会社の生活サポート

まだ認知度は低いですが、生命保険会社による生活サポートサービスがあります。

これまでは掛け金により診断時・入院・手術などの治療に対する給付金・先進医療に対するサポートなどでした。
対して生活サポートとは、給付金などを使用し、家事代行や配食サービスの提供をしています。

提携事業者があり、その事業者のサービスを利用します。

がん支援団体のコミュニティ

治療が進むにつれ、様々な症状、悩みがでてきます。
ご家族に打ち明けられないこともあるでしょう。知り合いに話をしても理解が得られないということもあるかと思います。
そういった時、がんサバイバーと呼ばれるがん罹患経験のある方、また、医療機関が無料相談を設けているところがあります。

①がん相談支援センター

全国のがん拠点病院・地域がん診療病院に設置されています。
他の病院にかかっている患者様、ご家族、地域住民であれば誰でも相談可能です。がんに対する専門知識をもった看護師やソーシャルワーカーが対応されます

②がん無料相談

公益財団法人日本対がん協会で行なっている事業の1つです。
電話相談ホットラインを解説しており、看護師や社会福祉士が相談相手となります。

③がん患者会

がん罹患された方が自主的に行なっている集まりになります。
患者会によっては電話やメールでの相談などをされています。定期的に集まり情報交換を行なっているところもあるようです

④がん患者サロン

病院やクリニックで開催されているところが多いようです。
看護師や栄養士、社会福祉士など医療職が主催し、同じ境遇を語り合い、また、専門職がアドバイスする場でもあります。ここが患者会とはやや異なるところです。

自費訪問看護

自費の訪問看護サービスとなります。
日常生活サポートを看護師の資格を持ち者がサービス提供を行います。

これまであげたサービスと異なる点は専門職の視点があるという点です。
家事代行のお料理ひとつとっても疾患や飲み込みの能力を考慮してお食事を作ることができます。

また歩行状況を考慮しながらのお掃除を行います。
必要時は介護保険導入されていればケアマネージャーや訪問看護と連携をとることもできます。

まとめ

本記事では日常の困りごとをカバーするサポートシステムをお伝えしました。

これまでの記事でお伝えした公的サポートの介護保険や各種訪問サービス、経済的負担緩和のための高額医療制度や医療費控除などを使っても全てをサポートできないのがこの日常生活の困りごとです。

公的サポートと併用すれば、より生活しやすくなります。
また、家事やペットボトルの蓋を開ける、重い荷物を持つなどはご家族様や、職場の方でも協力できるサポートです。

少しでも治療を受ける方が楽に社会生活が送れるよう、周囲の人が当たり前のようにサポートする社会になればと思います。


この記事を書いた人

看護師山川さちえ

山川幸江
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」

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