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看護師がわかりやすく解説! 糖尿病⑤ 糖尿病の予防、改善のための対策 メンタルヘルス編

糖尿病を指摘されてから今日まで、様々な悩みや不安があったことと思います。

その悩みは上手に対処できてきたでしょうか?

一人で悩み、解決できないまま辛い日々を過ごしたり、あきらめたりしてはいないでしょうか?

糖尿病の治療において「悩みとの付き合い方」はとても重要です。この記事を読むことで、ご自分に合った上手な対処法をみつけ穏やかな日常を過ごしていただくお手伝いができたら幸いです。

糖尿病の予防、改善のための対策 メンタルヘルス編
この記事の目次

糖尿病における悩み

英国糖尿病学会は糖尿病患者9000人を対象に「糖尿病が及ぼす心理的な負担」を調査しました。
その結果、糖尿病を持っている人の5人に3人は感情的・心理的なメンタル不調を感じた経験があることが分かりました。

また、糖尿病を持っている人の3 人に2人が「糖尿病のために気持ちの落ち込みを感じることがある」と回答し、3人に1人が「糖尿病のために生活スタイルを変えなければならず、家族にも迷惑をかけている」と感じています。
さらに、「自分は糖尿病を確実にコントロールできている」と感じる人は10人に3人しかいないことが分かりました。

このように糖尿病の多くの人が悩みを抱えながら治療をしているのが現状です。

食事や運動療法のために慣れ親しんだ生活習慣を変えること、定期的な血液検査で評価されると感じること、合併症や将来への不安、社会の偏見、家族や職場での人間関係など悩みは多岐にわたります。

糖尿病の予防、改善のための対策 メンタルヘルス編

糖尿病とメンタルヘルスの関係性

糖尿病治療における日々の悩みが「ストレス」となり、糖尿病のコントロールに悪影響を与えることがあります。ストレスを感じると体内ホルモンの影響で血糖コントロールが悪くなります。
さらに、過食や飲酒、不眠により生活習慣が乱れ、合併症のリスクも高まります。

また、糖尿病を持つ人はうつ病を併発しやすいことが分かっています。
その発症頻度は糖尿病でない人の2~3倍にものぼります。

このように、糖尿病とメンタルヘルスには密接な関係があります。

糖尿病の予防、改善のための対策 メンタルヘルス編

糖尿病のメンタルヘルス対策

近年では、糖尿病治療と併行してメンタルケアを行うと、血糖値の改善が見られ予後が良いことが分かっています。

では、糖尿病の悩みにどう対処し日常を過ごせばよいでしょうか?

米国疾病予防管理センター(CDC)の提言を参考にいくつかの対処法をお伝えします。

①あるがままに受け入れる

病気による様々な不安や感情を否定することなく、あるがままに受け入れてみましょう。

森田療法では、病気による不安は「よりよく生きたい」という「生の欲求」の裏面であり、人間だれもが共通する自然な感情であると考えています。

ではどうしてその自然な感情であるはずの不安がメンタル不調をひきおこすのでしょうか。

それは不安そのものが問題なのではなく、不安が起こっていることに対して、こうであるはずとかこうしなければならないという「とらわれた思考」があるからです。
この思考を開放し、本来のありたい姿を描いてみることが大切です。

※森田療法:精神科医の森田正馬によって創始された日本独自の神経症の精神療法。

②自分と対話上手になる

「とらわれた思考」を解放するための方法として、いくつかの適した質問をご紹介します。

この質問を自分自身に問いかけることで、漠然とした不安の正体が明確になったり、事実と自分の歪曲した解釈を切り離すことができるようになったりします。
悩んだ時はこれらの質問を使って自分と対話してみましょう。

<とらわれた思考を開放する質問>

  • それは特に何のことですか?
  • それは特にどのようにしますか?
  • それをしたら、またはしなかったら、何が起こりますか?
  • すべて、いつもという言葉は本当ですか?そうでなかったことはありますか?
  • 具体的には何がそれを妨げていますか?
  • 不安を消すことはできなくても、せめて何ならできそうですか?

このように、悩みの正体を明確にして解決策を探っていきましょう。

③日常に心地よい時間をつくる

日常に心地よいと感じる時間をつくりましょう。聴覚・視覚・嗅覚・触覚・味覚などの5感を癒す方法を意識して取り入れるとメンタルヘルスに有効です。

例えば、温かい湯船につかったり、好きな香りを嗅いだり、季節の花を飾ったりすることで心がリラックスする時間をつくれます。
その瞬間やほんの数分からでも体内のホルモンや自律神経の正常化に作用します。

ここでは糖尿病の悩みの対処法について3つお伝えしました。

糖尿病の予防、改善のための対策 メンタルヘルス編

相談相手をつくろう

糖尿病のメンタルヘルスに重要なことは相談相手をつくることです。
孤独感はメンタル不調をひきおこすことが分かっています。

以下に「相談」の効果をあげます。

<相談の効果>

・話すことで自分の話を整理することができる。
・新たな視点がみつけることができる。
・支えを実感でき、孤独感がなくなる。
・話を聴いてもらうことで、自己価値を認識でき、活力が湧く。
・専門家との相談では、正確で新しい情報を得ることができる。
・専門家と話すことで誤解に気付くことができる。
・専門家を通して他の人の体験談を聞くことができる。

 以下には専門家がいる相談先を記載しています。お近くの各相談先に連絡し、相談内容に対応してもらえるか聞いてみましょう。

<相談先>

・かかりつけの主治医
・近隣の大きな病院の相談センター、糖尿病専門外来、看護専門外来
・保健所、市町村保健センター
・精神保健福祉センター
・保険会社の健康相談コールセンター
・各糖尿病患者会(例:日本糖尿病協会の糖尿病友の会)
・医療相談アプリ、チャット
・医療専門職のヘルスコーチ
            など

まとめ

日頃から、糖尿病の治療とともにご自身のメンタルヘルスを意識することが大切です。

病気による不安は「よりよく生きたい」というあらわれです。周囲の力を得ながら現状を客観的にとらえ、今できていることを認めながら、今できそうなことから始めていきましょう。

記事を読んでいただいたこの機会をチャンスとし、健康生活を築いていきましょう。

参考:
The future of diabetes(英国糖尿病学会)
生活習慣病とうつ病の大規模ウェブ調査(国立精神・神経医療研究センター)


この記事を書いた人

安富由紀子 <プロフィール> 看護師・保健師として、何千人という生活習慣病やその予備軍と診断された方の保健指導や健康教育に携わる。その中で心身共に健康であるためには、「自分が大切にしていることを知ること」「なりたい自分に向かうこと」が重要であることに気が付く。 現在では「健幸ビジョンコンサルタント」として既存の医療では解決できなかった“心から健康で幸せになる方法”を社会に啓蒙するため、個人や企業での健康相談、研修、コンサルティングを行っている。 <クレド> ①指導をしない ②徹底した対話と、感情や意思を引き出す関わり ③クライアント自身の思考や情報取得を尊重して主体性を育む関わり <経歴> 看護師・保健師 専門は生活習慣病予防 (一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース (一社)日本看護コーチ協会 認定看護コーチ <講座・執筆> ・治療選択ワークショップ主催・講師(株式会社ぷれしゃす様 ) 「もしもあなたが乳がんになったら」 ・エンディングノート作成講座・講師(株式会社ウィシュレーン様) 「延命治療、あなたの意志の伝え方~家族に重圧を残さないために」 ・ウェルネス講座 講師(一般社団法人日本ナースオーブ様)

安富由紀子

<プロフィール>
看護師・保健師として、何千人という生活習慣病やその予備軍と診断された方の保健指導や健康教育に携わる。その中で心身共に健康であるためには、「自分が大切にしていることを知ること」「なりたい自分に向かうこと」が重要であることに気が付く。

現在では「健幸ビジョンコンサルタント」として既存の医療では解決できなかった“心から健康で幸せになる方法”を社会に啓蒙するため、個人や企業での健康相談、研修、コンサルティングを行っている。

<クレド>
①指導をしない
②徹底した対話と、感情や意思を引き出す関わり
③クライアント自身の思考や情報取得を尊重して主体性を育む関わり

<経歴>
看護師・保健師 専門は生活習慣病予防
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
(一社)日本看護コーチ協会 認定看護コーチ

<講座・執筆>
・治療選択ワークショップ主催・講師(株式会社ぷれしゃす様 )
「もしもあなたが乳がんになったら」
・エンディングノート作成講座・講師(株式会社ウィシュレーン様)
「延命治療、あなたの意志の伝え方~家族に重圧を残さないために」
・ウェルネス講座 講師(一般社団法人日本ナースオーブ様)

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