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看護師がわかりやすく解説! 糖尿病③ 糖尿病の予防・改善のための対策~食事編
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糖尿病の予防や改善には「運動」が効果的です。
運動は血糖値を下げるだけでなく、様々な生活習慣病の予防・改善に役立ちます。
この記事では、どんな運動をどれくらいやると良いか、また成功のコツについて具体的にお伝えしていきます。
この記事の目次
1.運動療法の効果
運動はからだの中の「糖」の利用を促進し、血糖値を下げる効果があります。また、筋肉を増やし内臓脂肪を減らすことで、悪くなっていたインスリン(血糖値を下げる体内ホルモン)の働きも改善します。
さらに運動は糖尿病の予防・改善だけでなく、以下のような様々な健康増進に役立ちます。
・血圧を下げる
・脂質を下げる
・動脈硬化の抑制
・がん予防
・便通改善
・骨粗しょう症予防
・認知機能の向上
・快眠・若々しさの維持
・ストレス改善、幸福感の向上
2.どんな運動が良いの?
①有酸素運動
有酸素運動とは、体内で酸素を使うことで糖や脂肪を燃焼させる運動のことです。
日常生活で誰もが行っている歩行も、早歩きをすることで有酸素運動になります。
有酸素運動は1日あたり20~40分の運動を1週間に3回以上行うと効果が持続すると言われています。
1日の運動時間は数回に分けてもよいです。
運動習慣のない人は、まずは今の生活に「プラス10分」運動を取り入れることから始めましょう。
運動の強さは、軽く汗をかく程度。笑顔で会話ができるくらいです。
<主な有酸素運動>
・ジョギング
・ウォーキング:今よりプラス3000歩または8000歩以上が目安
・スイミング
・エアロビクス
・サイクリング
・ラジオ体操
・テニスなどのスポーツ
・その他生活活動全般
②無酸素運動(レジスタンス運動)
無酸素運動はいわゆる筋トレです。
筋肉に繰り返し抵抗をかけて鍛え、筋力を増強させる運動のことを言います。
筋肉量が増えることで基礎代謝が高まり、エネルギーを消費しやすい体になります。
日常生活で行う階段の上り下りなどもトレーニングになります。
<主な無酸素運動>
・ダンベル運動
・腹筋
・壁腕立て伏せ
・スクワット
③ストレッチ
筋肉や血管、骨などの柔軟性を高めます。また血流を改善し、代謝促進に役立ちます。
ストレッチは準備体操や整理体操としても重要な役割がありますが、より効果的な機会は風呂あがりなどのからだが温まっているときが適しています。
痛みのない範囲で反動をつけず、ゆっくり意識的に伸ばしていきましょう。リラックスした状態で、呼吸は自然に行います。息を止めないことが大切です。
3.「ながら運動」・「ついでに運動」のすすめ
ご紹介した有酸素運動、無酸素運動、ストレッチはいずれも日常生活の行動の中に組み込まれています。意識しながら過ごすことで「ながら運動」「ついでに運動」が可能です。
相談者さんの成功事例をいくつかお伝えしますので、参考になるものがありましたら活用してみてください。
①有酸素運動
・エレベーターではなく階段をつかう
・昼食後に毎日10分間の散歩をする
・車は店の入り口から遠い所に駐車する
・一つ前のバス停で降りる
・畑作業中は大股歩きと大腕振り
②無酸素運動
・スーパーではカートを使わず、カゴは手で持つようにした。無駄買いもなくなり一石二鳥。
・足首におもりを巻きつけ筋力アップ
・電子レンジ待ちの30秒で踵上げ
・歯磨きしながら片足立ち
③ストレッチ
・入浴中に肩回し
・テレビを見ながら膝倒し
①膝倒しストレッチ
②膝倒しストレッチ
4.運動療法成功のコツ
せっかく運動をはじめても、途中で続けられない場合があります。
継続できない理由を知り、継続するためのコツを知っておきましょう。
①「気持ちが良い」ことをやる
運動療法と聞くと「辛いほうが効果がある」と考えている人もいます。
しかし、運動が上手くいかない理由の上位には「運動をすると疲れてしまう」「からだの痛みがでるようになった」が挙げられており、辛い運動=継続できず効果がでません。
血糖値の改善や健康増進のために行う運動は「気持ちが良い」ことが大前提にあります。
勧められた運動が辛いと感じる場合には、自分の「気持ちが良い」を基準に運動時間や強度を落とし調整することが肝心です。
からだが慣れその運動量では物足りなった時、また「気持ちが良い」を基準に強度を上げていけばよいのです。
②「楽しいこと」をやる
運動が上手くいかない理由には「楽しくない」も非常に多く挙げられています。
しかし「楽しい」の基準は人によって様々です。自分の性格をよく見つめ、楽しむための工夫をしていきましょう。
下記には性格タイプごとの例を示します。
<きちんとタイプ>
・万歩計や脈拍管理アプリで記録分析する
・週ごとの体重
・血糖変化を分析する
・1日1万歩を目標に歩く
<即決タイプ>
・短時間で効果がでると聞いた、筋トレやインターバル速歩を行う
・エレベーターと階段で速さを競う
<おっとりタイプ>
・パートナーや犬と一緒にやる
・サポートしてくれる人を見つける
<元気タイプ>
・仲間と大勢でやる
・サークル団体に所属する
・趣味活動で外出を増やす
③からだの変化を意識する
運動が上手くいかない理由に「効果が実感できない」があります。効果を実感しやすくするためのポイントは2つあります。
1つ目は運動の目的を意識して取り組むこと。例えば筋トレの時は、どの筋肉を動かすか、伸ばすのか縮めるのなど動きの目的を意識しています。意識しているのと意識していないのでは効果の差は明確です。これはウォーキングなどの有酸素運動でも同じです。
2つ目は毎日のからだの状態を意識すること。今日はからだのこの部分が張っている、凝っている、だるい、動かしづらい、などの状態を意識するとよいでしょう。運動前後での変化が分かるようになるだけでなく、日々の体調が分かるようになり、その日の状態に合わせた運動を行うことができるようになります。
以上、運動療法成功のコツは3つあり、①気持ちよいことをやる、②楽しいことをやる、③からだの変化を意識する、をお伝えしました。
5.まとめ
日常に運動を取り入れることは、糖尿病の予防・改善だけでなく、様々な健康増進に役立ちます。すべての人にとって効果的な健康法です。
運動を辛いものにせず、気持ちよく、楽しみながら、自分に合った方法を探してみましょう。この機会にシフトチェンジし、健康生活を築いていきましょう。
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この記事を書いた人
安富由紀子
<プロフィール>
看護師・保健師として、何千人という生活習慣病やその予備軍と診断された方の保健指導や健康教育に携わる。その中で心身共に健康であるためには、「自分が大切にしていることを知ること」「なりたい自分に向かうこと」が重要であることに気が付く。
現在では「健幸ビジョンコンサルタント」として既存の医療では解決できなかった“心から健康で幸せになる方法”を社会に啓蒙するため、個人や企業での健康相談、研修、コンサルティングを行っている。
<クレド>
①指導をしない
②徹底した対話と、感情や意思を引き出す関わり
③クライアント自身の思考や情報取得を尊重して主体性を育む関わり
<経歴>
看護師・保健師 専門は生活習慣病予防
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
(一社)日本看護コーチ協会 認定看護コーチ
<講座・執筆>
・治療選択ワークショップ主催・講師(株式会社ぷれしゃす様 )
「もしもあなたが乳がんになったら」
・エンディングノート作成講座・講師(株式会社ウィシュレーン様)
「延命治療、あなたの意志の伝え方~家族に重圧を残さないために」
・ウェルネス講座 講師(一般社団法人日本ナースオーブ様)