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看護師がやさしく教える 認知/認知機能②認知症とコミュニケーション
認知症の原因の1つに加齢があります。不可逆的な変化の為、脳は再生できないとされていました。 しかし最近の研究では、脳は再生されるのではないかという研究結果がで…
認知症の症状は大きく分けると、原因疾患によるものと、認知症の症状自体を大きく2つに分ける考え方があります。
それにより対応方法があるので、整理してお伝えします。
この記事の目次
原因疾患によるもの
認知症は発症した原因により大きく4つにわけられます。
・アルツハイマー型認知症
・レビー小体型認知症
・血管性認知症
・前頭側頭型認知症
の4つになります。以下詳細と対処方法について整理して説明します。
アルツハイマー型認知症
「認知症とコミュニケーション」でも書きましたが、加齢によりアセチルコリン分泌の低下、また特殊なタンパク質(アミロイドβ)の蓄積がアルツハイマー病の原因と言われ、記憶を司る海馬という部分から脳萎縮が始まり、徐々に脳全体に広がっていきます
アルツハイマー型認知症は、認知症の約7割を占めています。
また、比較的女性に多く、初期症状は物忘れがよくみられます。
初期症状
・比較的最近の出来事なのに覚えられない
・同じことを何度も訊いたり話したりする
・適切な言葉が出てきにくくなる
・物の名前を思い出せなかったり、親しい人の名前が出てこない
・日付がわからなくなる
・身だしなみに構わなくなる
・物をなくしたり、置き忘れたりする
・穏やかだった人が怒りっぽくなったり、活動的だったのにそうでなくなるなど性格に変化が生じる
・知っているはずの場所で迷子になる
症状が進行すると以下のような症状がみられます。
・失語
ものの名前がすぐにでてこない「あれ」「どれ」などで表現されることが多くなる
・失認
目で見えているがなにかがわからない(ペットボトルを見ているが何か理解できない)
・失行
モノの扱い方がわからない(ペットボトルのふたを開けれない)
・遂行機能障害
一連の行動が計画通りにできない(自動販売機でお茶を買おうとお金をいれ、ボタンをおしていないのに、商品を取ろうとするなど)
これらの症状は全て必ずみられるわけではなく、人によって様々です。
また症状はゆっくりと進行していくのが特徴です。
しかしアルツハイマー型認知症は食事、睡眠、運動など生活を整えること、またご家族様や他者とコミュニケーションをとることで、進行が緩やかになると言われています。
レビー小体型認知症
レビー小体というタンパク質が脳に溜まり引き起こされる認知症です。
認知症全体のうちレビー小体型認知症が約1割を占めます。
またアルツハイマー型認知症と合併することもあり、男性がやや多い傾向です。
初期症状
・睡眠障害、睡眠中の異常行動(睡眠中に大声を出すなど)
・便秘
・幻想、妄想、幻視
・うつ状態
・起立性低血圧
幻視は、そこにないはずのものが生々しく存在して見えることです。
他人がいくら「そんなものはいない」と言っても、本人にはしっかりと見えているものなので、話しを充分に聞いて落ち着かせるのが望ましいです。
なお、幻視は薄暗いところで置きやすいため、室内の明るさを一定に保つと予防になります。
また、動作が遅い、安静時に手足がふるえる、前かがみの姿勢、小刻み歩行、転倒しやすい、小声になる、無表情といったパーキンソン症状があらわれることもあります。
アルツハイマー型認知症よりも転倒リスクが高いので、室内の段差をなくす、床に物を置かないなど環境整備が必要です。
運動療法も重要で、体内の血流改善が脳の活性化を促します。
ご本人様の好きな音楽をかける、絵をかくなども脳への刺激につながります。
血管性認知症
アルツハイマーの次に多く、認知症全体の約2割を占めます。
脳梗塞・脳出血などで脳血流が悪くなることで脳細胞が破壊され起こります。
男性に多くみられ、高血圧・肥満・糖尿病・喫煙など生活習慣が一因となっていることわかっています。
症状は障害される脳の領域により様々です。
歩行障害や嚥下障害、失禁等の排尿障害など身体的症状などに加え、うつ状態や感情の起伏が激しくなる(急に笑い出す、泣くなど)など、脳の障害部位により、これらの症状が出たり出なかったりするのが血管性認知症の特徴といえます。
生活習慣が原因とわかっているので、規則正しい食生活や運動、禁煙などが望ましいでしょう。
感情的になられている時は、穏やかにゆっくりと傾聴することなどが必要でしょう。
前頭側頭型認知症
名前の通り、脳の前頭葉と側頭葉が障害され発症。
アルツハイマー型認知症やレビー小体型にはみられない症状がみられます。
・前頭葉=人格・社会性・言語を司る
・側頭葉=記憶・聴覚・言語を司る
つまり、前頭葉は人が人らしく生きられる部分、側頭葉は記憶したり、見たり、感情をコントロールするのに重要な場所です。
そういった場所に支障が出ますから、性格の変化や同じことを繰り返すなどの症状がみられたり、社会性を失う傾向が顕著です。
万引きをする、赤信号を無視するなどの行動がみられることがあります。
逆に物忘れはあまりみられません。
発症年齢が50~60代と比較的若く働き盛りの年代で発症することも多いため、本人が認知症と気づかず、やたらと怒りやすくなる、暴力をふるうようになるなど家族が苦慮することも多いです。
病気が進行すると、意欲や活動性が低くなっていき、社会性に反する行動も徐々に見られなくなり、同じ行動を繰り返すぐらいが残ります。
少しずつ感情がなくなり、発語も聞かれなくなります。
やがてご自身から動作することが少なくなり、ベッド上での生活が長くなります。
同じことを繰り返すというのは、例えば指先で机をたたき続けるなどの単純行動の場合もあれば、同じ物ばかり食べる、同じ時間に決まった場所に行く、同じ服ばかり着る、などという場合もあり、その方によって異なります。
感情の抑制がききにくいため、それらのルーティーンを崩されることで怒り出すこともあります。
対処方法としては、同じ行動を繰り返すという特徴をふまえ、他の方法に置き換える療法があります。
例えば、ご本人様が以前お好きだったもの、編み物やパズル、踊りなどに置き換える方法です。
このご病気の方は道具を上手に使える方が多いというのが特徴です。
集中しているか、楽しそうにされているか、無理なく続けられるかを踏まえながら、その方にあったものを検討してみましょう。
認知症の2大症状
(1)中核症状
中核症状とは脳の神経細胞の減少で起こる症状のことです。以下にまとめて説明します。
記憶障害
何度も同じ話を繰り返す、約束を忘れる、薬の飲み忘れなど
注意障害
注意力低下で同時に複数のことができなくなる。会話についていけなくなる。
言語障害
適切な言葉がでてこない。相手の話の内容が理解できなくなる。
見当識障害
日にち、時間、場所がわからなくなる。友人や家族がわからなくなる。
実行機能障害
家事や仕事の段取りができなくなる。今までできていたリモコンなどの操作がわからなくなる
対処方法としては、まずご本人様に今なにができるか確認、見極めていきます。
そしてできることを行なってもらい、役割をもってもらいます。
ご本人様が楽しめることを行なってもらうといいでしょう。
地域の交流会などあれば参加する、デイサービスの利用などで他者との交流も脳の刺激に有効です。
(2)周辺症状(BPSD)
周辺症状は(1)の中核症状に合わせて、上記の原因やご本人様の性格、周囲の環境などで変わってきます。
つまり症状は個人差があります。
暴言・暴力
怒りや感情を抑えられず、大きな声を出される。
うつ
できないことが増えていき、うつ状態になる
妄想
お金を盗られたなどの妄想が生じる
徘徊
今いる場所がわからなくなる。自宅にいるのに家に帰ると徘徊が見られる
幻覚
見えないものが見えたり、聞こえたりする
対処方法としては、ご本人様は今まで出来ていたことができなくなってきた、新しいことが覚えられないなど不安や恐れがあります。
介護者としても焦りを感じるでしょう。
否定や相手を責めるのではなく、なるべく受け入れ、今できることを行なってもらうことが大切です。
ゆっくりと相手のペースに合わせ、もしお財布をとられたなどの発言がきかれたら、責めるのではなく一緒に探して、見つけてあげる、話をじっくり聞くなどの接し方が重要です。
まとめ
認知症の対処方法は1人1人異なるため、難渋すると思います。
その方にあった接し方を模索しながら関係性を構築していく必要があるでしょう。
特に周辺症状は暴言をはく、徘徊するなど介護者の心理的・身体的負担は大きくなります。
先に症状を知っておくことで、ご病気によって出ている症状であると理解できるため、本記事でお伝えしました。
一般的な症状についての対処法方でしたが、次の記事では、ご両親が認知症になった時の接し方をお伝えします。
この記事を書いた人
山川幸江
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」