子どもはハイハイからつかまり立ちをする頃、色んな事に興味を持ち始めます。
元気なのは喜ばしいことですが、同時にやけどをすることも多くなってくるため、親は目が離せなくなります。
私が以前勤めていた小児科では、太ももや腕、手にやけどをした子どもが大慌ての母親に抱かれて来院することも多くありました。泣き叫ぶ子ども以上に取り乱した母親の姿が今も記憶に残っています。
今から20年前のことですが、現在は昔よりも室内で遊ぶことが多くなり、子どものやけども増加していると言われています。
このような背景を踏まえると、子どもが健やかに成長するために大切なのは、安全な環境づくりと、もしもの時に慌てず対応できる心構えだと思います。
そこで今回は、「子どもがやけどをした時にすること」をお伝えしていきます。
この記事の目次
1.子どもに多いやけどの原因
子供のやけどは、0歳から1歳くらいの乳幼児によくみられます。
つかまり立ちや伝い歩きができるようになる時期は、好奇心旺盛で周囲のものに興味を示すようになります。
そのためこの時期にやけどの事故が多いと報告されています。
やけどの原因
- 熱い飲み物や汁物をかけてしまった
- 電気ケトルや炊飯器、アイロンの蒸気に触ってしまう
などです。特に湯気は熱湯以上に高温になるため、短時間でもやけどになってしまいます。
また、冬場はファンヒーターの吹き出し口につかまろうとしてやけどを負うケースもあります。
大人にとっては身近で便利な製品でも、子どもにとっては重大な事故につながる危険がたくさん潜んでいます。やけどを予防するためには、行動を制限するのではなく、安全な環境をつくることが親の責務であると感じています。
2.やけどの程度について
やけどには深さと広さによって段階があります。
その段階によって対応が変わるため、前もって知っておくと慌てずにすみます。
まずは、やけどの段階をみていきましょう。
始めにやけどの深さについて説明します
(1)やけどの深さ
皮膚の組織は外側から表皮、真皮、脂肪の3層で出来ていますが、やけどはどの部位まで損傷されているかで決まります。
皮膚の薄い子どもは同程度のやけどでも大人より深くなります。
深さは次のとおり1~3度に分類されますので参考にしてください。
- 1度 1~2週間で皮膚が再生されます。
-
皮膚の表面のみのやけどです。
この時、皮膚が赤くなってヒリヒリと痛くなりますが、この程度であれば、やけどの痕を残すことなく数日で治ります。
強い日差しにさらされて日焼けをするのもこれと同じ状態と言えます。
- 2度 2度以上は受診をし、適切な処置を受けましょう。
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熱が皮膚の神秘にまで届いた状態です。
皮膚には水泡ができますが、次第に敗れて皮膚がめくれて赤くただれて治りにくくなります。
水泡が破れると感染を起こしやすくなります。この状態のやけどは、痛みも強く治った後も痕が残ります。
- 3度 専門的な知慮が必要 やけどの痕が残ります。
-
熱が皮膚の深いところにある皮下組織に届いた状態です。
神経組織や筋肉もやけどで損傷しているため、黒く焦げたりタンパク質の編成により白く光沢して見える場合があります。
この状態のままでいくと痛みを感じなくなりますが、手術によって皮膚移植など専門的な治療が必要になります。やけどの痕も残ります。
やけどは深さだけではなく、広さも重要です。
全身の皮膚のうち、どのくらいの広さにやけどを負ったかで、対処法が異なります。
(2)やけどの広さについて
子どもの体表面積は判断しにくいため大まかな目安が示されていますので参考にしてください。
- ①てのひらの面積を基準にするとわかりやすい
-
やけどを負った子どもの手のひらは体表面のおおよそ1%に相当すると考えてやけどの広さを測ります。
- ②体の各部位のパーセンテージから割り出す「5の法則」といいます。
-
頭部:体感面積を20%、両手・両足をそれぞれ10%として計算します。
子どもの頃、沸かしすぎた風呂の湯に浸かり、全身の70%、3度のやけどを負った方がいます。
とても危険な状況でしたが、すぐに救急搬送され入院中に輸血や皮膚移植を行い、九死に一生を得ました。
現在は胸やお腹にケロイドと言われるやけどの痕が残っていますが、痛みもなく元気に過ごされている方もいます。
このような重度のやけどであっても迅速な対応で命が助かります。
次は、やけどの応急処置について説明します。
3.やけどの応急処置の手順
1~3度の状態はいずれも応急処置として次の対応をします。
(1)すぐに冷やす
すぐに10分以上冷やします。
シャワーや流水では子どもの皮膚に刺激が強いため、清潔な容器に水を入れて流水を溜めながら冷やしましょう。もし、服の上からやけどをした時は衣類を無理に脱がそうとせず、そのままの状態で冷やすようにします。
(2)2度以上は必ず受診をする
1度のやけどで範囲も狭いようであれば冷やしている間に治る場合もあります。
しかし、2度以上のやけどや、陰部のような粘膜や皮膚の薄いところは程度に合った治療が必要になるため必ず受診をしましょう。
3度のやけどは体温が奪われ、急激に状態が悪化する恐れがあります。
衣服は脱がさずにそのまま濡らしたバスタオルで覆いすぐに救急車を呼びます。
(3)水ぶくれは破らないこと!
水ぶくれしている所は無菌状態になっていますが、破るとそこから細菌が入ってしまいます。
細菌が入ると患部が化膿して、傷跡が残るだけではなく全身症状にも影響しますので破らないようにしましょう。
4.低温やけどについて
低温やけどは使い捨てカイロや湯たんぽ、電気毛布などで発症します。
44℃~50℃前後の低温であっても数分~数時間触れているだけで起こります。
通常のやけどであれば子どもが泣き叫ぶのでわかりやすいのですが、低温やけどはじわじわと症状が進行します。
特に乳幼児は皮膚が薄いため、ホットカーペットの上でお昼寝をしたり、使い捨てカイロを当てたままにしていると短い時間でも、皮膚が損傷し重症化しやすくなります。
ゆっくりと皮膚の奥深くまで進行する低温やけどは通常のやけどよりも治りにくいため予防が大切です。
水ぶくれやジュクジュクした低温やけどは必ず医療処置が必要になります。
やけどかどうかわからなくても、必ず受診をすることで感染症の予防ができます。
これまで説明した内容を前もって知っても、やけど負った子どもが大泣きしていると慌ててしまうのは親として当然なことです。
このような場合は迷わず、すぐに受診をすると良いでしょう。
- 顔や気道、陰部にやけどをした時
- やけどをした面積が広い時
- ぐったりしている時
- 陰部や口腔内など粘膜にやけどをした時
- 大泣きをしている時、苦しんでいる時
付き添う人は受診した際にはやけどをした時の状況を詳しく伝えていただくと適切な判断や処置につながります。
5.まとめ
子どもの好奇心は親が予測のつかないところにあります。
現代は忙しいからこそ便利な電化製品が役に立っていますが、その一方で便利なものが子どものやけどにつながることもたくさんあります。
普段から周囲に危険なものはないか見渡しながら、子どもの健やかな成長を見守っていきたいですね。
この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」