頭痛トリセツも、3記事目となりました。
今回は「タイプ別頭痛のセルフチェック」についてお伝えしようと思います。
片頭痛患者さんのうち、病院を受診している方は非常に少ないのが現状です。
日本で行われた調査によると、片頭痛患者さんのうち一度も医療機関を受診したことがない方は69.4%と報告されています。
しかし、同じ調査の中で、片頭痛患者さんの74%の方が日常生活にかなり支障があると答えています。
それは、日常生活で頭痛が起きても、「病院を受診するなんて」という気持ちがあるからかもしれません。
そこで、今すぐできる「頭痛チェックシート」をやってみては如何でしょうか。
頭痛持ちの方は、当てはまる「頭痛のタイプ」がわかり、どんな対処の仕方があるのかを知るきっかけになると思います。
この記事の目次
1. やってみよう!頭痛チェックシート
頭痛の種類は、大きく分けると3つあります。
最も多いものが「緊張型頭痛」、次に「片頭痛」、そして「群発頭痛」です。
最近は、市販の鎮痛剤を頻繁に使用することによって起こる「薬物使用過多頭痛」というものが増えています。
まずは、あなたの頭痛がどんな頭痛のタイプなのかをチェックしてみましょう。
【チェックシート】
2. タイプ別でわかる、セルフケア方法
1)片頭痛
強いストレスや悪天候時、ホルモンの影響(月経や更年期など)、寝不足または寝過ぎ、光や匂い刺激、騒音のある環境、アルコールやカフェインの摂取など様々な原因で発症します。
また、「閃輝暗点」(せんきあんてん)と呼ばれる、目の前にキラキラと星が降っているような風景や、ギザギザしたものが見える症状があります。
長時間持続はせず、数分〜数十分で消失します。これは、片頭痛特有のものと言われています。
ホルモン調整など、大切な働きをしている視床下部に上記のような原因が刺激となり、痛覚のある三叉神経に炎症が起こったり、脳内の血管が拡張することによって頭痛が起きるといわれています。
血管を拡げる成分を含む食べ物や飲み物:赤ワインやオリーブ油は血管拡張作用のあるポリフェノールを多く含みます。また、チラミン(ポリフェノール類)を含むチーズ、カカオ度数の高いチョコレート、グルタミン酸を多く含むうま味調味料を使った料理、保存料の亜硝酸(あしょうさん)ナトリウムを多く含むハムやサラミなども、頭痛が続いている時は避けることをおすすめします。
対処法
静かで暗い部屋で横になる。痛む部位を、アイスノンなどで冷やす。
刺激になるような食品を摂取するのは極力控えましょう。
2)緊張型頭痛
- 原因
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心理的・身体的ストレス、ストレートネックなどの姿勢の悪さ、長時間の運転・デスクワークなどが原因となります。
その多くが、生活習慣に関連しているものであることから夕方〜仕事(学校)終わりの時間帯に起こりがちです。
- 対処法
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筋肉の緊張からくる痛みが多いため、血行促進となるものがお勧めです。
ストレッチで肩〜首周りの硬くなった筋肉のこりをほぐしたり、入浴や蒸しタオルなどをあてるのもいいでしょう。
休憩時間には落ち着いた静かな音楽を聞く、ゆったりとした椅子で休むなど心身ともにリラックスできる環境で過ごすこともお勧めです。
ストレッチの例)「肩回し体操」
首や肩の緊張やコリによって起こる緊張型頭痛を解消するための体操です。
肩を回すことで腱僧帽筋をストレッチして血行を良くし、肩や首のこりを緩和します。
肩回し体操は、頭痛の最中に行えば痛みの緩和に、頭痛のないときに行えば予防になります
STEP
正面を向いて、足を肩幅に開く。
両肘を90度程度曲げ、肩を中心にして、前から後ろへ「上着を脱ぐ」感じで大きく5回、回します。
STEP
先ほどとは反対に、「リュックサックを背負う」感じで後ろから前へ、大きく5回回します。
力を抜いて、前から後ろから回す体操を2セット行います。
3)群発頭痛
何らかの刺激によって、目の奥にある内頸動脈に炎症が起き、血管が拡張することで神経が強く圧迫され、激痛となると考えられています。
休息時に優位となる副交感神経を刺激するため、結膜充血、涙が出る、鼻汁が出るなどの自律神経症状が出ると言われています。
対処法:
禁酒禁煙、規則正しい生活、湯温41℃以上の入浴やサウナ(交感神経優位となり、心拍数が上昇する)、刺激の強い香辛料は避ける
3. その他にできるセルフチェック方法
頭痛ダイアリー(監修:埼玉国際頭痛センター長 坂井文彦先生)の記載
ご自身の頭痛をじっくり観察し、記録をしてみましょう。
セルフチェックで行った頭痛のタイプを知るための記載もいいですし、頭痛が起きた時に日常生活にどの程度影響していたか、どのタイミングでお薬を内服したかを記入することで頭痛外来を受診する際、非常に診断の助けにもなります。
なんとなく「記憶」を振り返るよりも、こうして「記録」することで、より正確な対処、治療につながります。
記載項目:
痛みの程度、日常生活への影響度、頭痛が起こる前にあった症状、薬を飲んだタイミングなど
4、まとめ
一口に頭痛といっても、生活習慣や身体の状態によって異なるタイプがあります。適切なセルフチェックと、症状にあった日常の管理を行うことで、頭痛の軽減や予防が可能です。
しかし、症状が重い場合や自己管理が難しい場合は、必ず専門医の診断と指導を受けるようにしましょう。
自分に合った方法で頭痛と向き合い、健康な日常生活を送るために、まずはセルフチェック・セルフケアをお勧めいたします。
参考:頭痛の診療ガイドライン2021
一般社団法人 日本頭痛学会
NHK 今日の健康 2024年5月28日
出典:(株)エーザイ 埼玉精神神経センター/埼玉国際頭痛センター長 坂井文彦先生 頭痛ダイアリー
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この記事を書いた人
看護師:工藤 巳知子
北海道出身、看護師歴21年。
新卒で一般病棟勤務中、急変対応の経験不足を痛感したため手術室・救急外来へ部署移動。
上京後は大学病院の高度救命救急センター、民間病院の集中治療室(ICU /CCU)で12年。
その後、命を救う現場から病院と在宅を結ぶ訪問看護ステーションへ転向。営業やマネジメント、国際医療搬送を経験。
21年間、脳神経外科領域に関わり、現在は開業メンバーとして脳神経外科のクリニックに勤務中。
脳と意識、こころの探求を学びながら、フリーランスナースとして活動中。