あまり考えたくないことですが、おひとりさまの終活において「孤独死・孤立死」のリスクは避けられないテーマです。今回は、孤独死・孤立死について考えていきましょう。
この記事の目次
自宅で一人で亡くなる人
警察庁は「自宅において死亡した一人暮らしの者」(年齢階層別・経過日数別)を公表しています。2024年上期(1月〜6月)のデータは以下のとおりです。
<自宅において死亡した一人暮らしの者(年齢階層別)>
<自宅において死亡した一人暮らしの者(経過日数別)>
65歳以上の高齢者が全体の76%を占めています。一人暮らし高齢者は、一人で亡くなるリスクが高いと言えそうです。また、死亡後に発見されるまでの日数(65歳以上)は、1日以内が41%、3日以内が62%、7日以内が74%ですが、1ヶ月以上のケースも9%程度あります。こうした状況にならないようにするには、どうしたら良いのでしょうか。
孤立死の定義
内閣府は2023年8月に「孤独死・孤立死の実態把握に関するワーキンググループ」を立ち上げています。議論がなされて、同年12月に「中間論点整理」が発表されました。
まず、用語の整理として、「『孤独』は主観的概念、『孤立』は客観的概念であることから、実態把握の対象としては、『孤立』からアプローチする『孤立死』が適当」としています。一般的には、「孤独死」「無縁死」「独居死」なども使われていますが、厚生労働省は以前から「孤立死」を使っており、客観的指標として「孤立死」を使うとしています。
また、孤立死の定義については「仮置き」であるとしながらも、次のように定めています。
概念的定義:誰にも看取られることなく死亡し、かつ、その遺体が一定期間の経過後に発見されるような死亡の態様。
今後は「尊厳の問題」「社会のあり方としての問題」「死因の究明の問題」などについて、検討されるようです。
一人暮らし高齢者の増加
2023年度の「国民生活基礎調査65歳以上の者のいる世帯の世帯構造の年次推移」(下図)から見ると昭和61年では3世帯同居は44.8%ありましたが、昨年2023(令和5)年は7%にまで減り、単独世帯と夫婦のみの世帯の合計が63.7%と高齢者の暮らしが大きく変化しています。
また、男女別・年齢階級別にみた65歳以上の家族形態(下図)を見ると、70代以降の年代は、女性の単独世帯が多く、高齢になるほど女性のおひとりさま世帯が増えており、80歳以上となると、女性のおひとりさま世帯は34.8%です。
このように、一人暮らしの高齢者は「生活状況を身近で見る人がいない」状況になりやすく、こうした人の増加が孤立死の増加につながっていると考えられます。
孤立死を防ぐために
孤立死の男女別割合は、男性が80%以上というデータがあります(下図)。また、死亡から発見までの期間が長いのも男性が多いそうです。「一人暮らしの高齢女性が多いが、孤立死は男性が多い」という傾向がありそうです。
(日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会 2024年1月)
一説には、「男性の方がコミュニケーションを積極的に行わない(コミュニケーション能力が低い)」ことが、孤立状態となる要因のひとつだと言われています。確かに井戸端会議をしているのはほとんど女性です。友達と連れ添って旅行に行くのも、女性を多く見かけるように感じます。「最近見かけない」「ちょっと調子が悪そう」など、お互いに気をつけています。しかし、男性は散歩も買い物も一人で出かけることが多いのではないでしょうか(私もそうです)。積極的なコミュニケーションが社会からの孤立を免れ、結果的に孤立死を防ぐのではないでしょうか。
孤立死と遺贈寄付
私は遺贈寄付を専門としているので感じるのですが、遺贈寄付をするような人は社会とのつながりを大切にしています。寄付やボランティアといった形に見える社会貢献に限らず、自治会やお祭りなどの地域活動、趣味のサークルや高齢者大学などに参加して、人との関わりを積極的に行う人が多いように感じます。
こうした方々は、遺贈寄付する遺言を作成すると、寄付先団体のイベントなどに参加してさらに交流を深め、より豊かな人生を歩んでいるように見えます。遺贈寄付も孤立死の防止に一役買っているのかもしれません。
この記事を書いた人
齋藤 弘道(さいとう ひろみち)
<プロフィール>
遺贈寄附推進機構 代表取締役
全国レガシーギフト協会 理事
信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。
遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の全国レガシーギフト協会)。
2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。
日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。