年齢を重ねると、体の変化を感じることが増えてきます。
「最近、立ち上がるとふらつく」
「なんとなくだるくて、横になる時間が増えた」
「前より食欲が落ちた気がする」
このような不調があると、多くの方は「年齢のせいかな」と考えるかもしれません。
たしかに、年齢とともに体力や筋力、食欲が変化することはあります。しかし、その不調は本当に年齢だけが原因でしょうか。もしかすると、今飲んでいる薬の影響が関係しているかもしれません。この記事では、ポリファーマシーによって起こりやすい体の変化についてお伝えします。
この記事の目次
1. 加齢による変化と見分けにくい薬の影響
薬の影響で起こる変化は、年齢による変化とよく似ています。たとえば、ふらつき、だるさ、食欲の低下、眠気、便秘、口の渇きなどは、年齢を重ねる中でも起こりやすい不調です。そのため、こうした変化があっても「年齢のせいだから仕方がない」と考えてしまうことがあります。
しかし、これらの不調は、薬の影響で起こることもあります。厚生労働省の資料では、高齢者では薬の影響が、ふらつき、転倒、食欲低下、便秘、認知機能低下などの形で現れることがあるとされています。これらは、年齢による変化や体力低下と区別しにくいため、本人や家族が薬の影響に気づきにくいことがあります。「ポリファーマシー」とは、単に薬が多いことではありません。薬が多くなり、飲み間違いや副作用、生活上の負担などにつながりやすくなっている状態のことをいいます。
薬はそれぞれ目的があって処方されています。血圧を下げる薬、痛みをやわらげる薬、眠りを助ける薬、胃の調子を整える薬など、必要な薬を正しく使うことは、病気の治療や体調管理のために大切です。薬が一つだけであれば、体調の変化が起きたときに「この薬が関係しているかもしれない」と考えやすい場合があります。しかし、複数の薬を飲んでいると、どの薬が影響しているのか、または薬同士の組み合わせが関係しているのか、見分けがつきにくくなります。
薬の数が増えることで起こりやすいのは、まず薬の作用が重なることです。たとえば、眠気が出やすい薬がいくつか重なると、昼間の眠気が強くなることがあります。血圧を下げる作用が重なると、立ち上がったときにふらつきやすくなることがあります。便秘になりやすい薬が重なると、便秘が続いたり、悪化したりすることもあります。
また、薬の飲み合わせによって、効き方が強くなったり、弱くなったりすることもあります。効き方が強く出ると、眠気、ふらつき、だるさ、食欲低下などにつながることがあります。反対に、薬の効き目が弱くなると、病気や症状のコントロールが不安定になることもあります。
さらに、薬が多いと、飲む時間や飲み方が複雑になります。朝・昼・夕・寝る前など、薬を飲むタイミングが増えると、飲み忘れや飲み間違いが起こりやすくなります。飲み忘れや飲み間違いを経験すると、「きちんと飲めているだろうか」という不安も増えて、薬を管理すること自体が、毎日の生活の負担になることもあります。
だからこそ、不調があるときは「年齢のせいだから仕方がない」と決めつけず、薬の影響も考えてみることが大切です。気になる変化があるときは、自己判断で薬をやめず、医師や薬剤師に相談してみましょう。
2. なぜ年をとると薬の影響を受けやすくなるの?
薬は飲んだあと、体に吸収され、作用し、体の外に出されるまでに、いくつかの過程をたどります。 口から飲んだ薬は胃や腸で溶け、主に腸から血液の中に吸収されます。血液の中に入った薬は、血流に乗って全身に運ばれ、必要な場所で作用します。これによって、血圧を下げる、痛みをやわらげる、眠りやすくなるなどの効果が現れます。
薬は一定期間作用したあと、主に肝臓で分解されます。 肝臓は、薬を体の外に出しやすい形に変える働きをしています。そして、体にとって不要になった薬の成分は、腎臓を通って尿として体の外へ出されます。薬によっては、便や汗などから出されるものもありますが、多くの場合、肝臓と腎臓が薬の処理に大きく関わっています。
まず、肝臓で薬を分解する力がゆるやかになってくるため、薬が体の中に長く残りやすくなる場合があります。また、腎臓から薬を体の外へ出す力も低下して、薬の成分が体の中にたまりやすくなることがあります。その結果、若い頃には問題がなかった薬も、眠気やふらつき、だるさなどが出やすくなる場合があります。
さらに、年齢とともに筋肉量や体の水分量が少しずつ減少します。これも、薬の効き方に影響します。薬は血液に乗って全身に運ばれますが、薬によって、体の水分に溶けやすいもの、脂肪に溶けやすいものがあります。
体の水分量が減ると、水に溶けやすい薬は、体の中で広がる場所が少なくなります。そのため、同じ量を飲んでも血液中の薬の濃度が高くなりやすく、効きすぎたり、副作用が出やすくなったりすることがあります。
一方で、年齢とともに筋肉量が減り、体脂肪の割合が増えてきます。脂肪に溶けやすい薬は、脂肪にたまりやすく、体の中に長く残り、薬の作用が長く続くことがあります。このように、年齢とともに体の水分量、筋肉量、脂肪の割合、腎臓の働きが変化すると、同じ薬を同じ量飲んでいても、効き方が強く出たり、作用が長く続いたりすることがあります。
3. 心掛けたいこと
・薬が多くなると、眠気やふらつき、食欲低下などの不調が出ることがあります。さらに飲み忘れや飲み間違い、薬を管理する負担も増えるため、「年齢のせい」と決めつけず薬の影響も考えることが大切です。
・年齢とともに肝臓や腎臓の働き、体の水分量や筋肉量が変化するため、同じ薬を同じ量飲んでいても、薬が体に残りやすくなることや、効き方が強く出ることがあります。
この記事を書いた人
ヤマダ カオリ
〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。
復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。
〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了
〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)