人気司法書士の村山澄江先生が実際に対応したトラブルケースをモデルに、解決法のヒントをお届けします。
※実際に登場する人物・所属・家族関係などはすべて架空のものです。
「親が認知症になって、弟が母のところに頻繁に通っているのですが、 どうやら母のお金を弟が使い込んでいるようなのです」
この記事の目次
母の認知症をいいことに、弟が財産を使い込み!
これは、85歳の認知症の母を持つ50代男性Aさんからの、成年後見の依頼でした。
2歳下の弟さんが、母が認知症なのをいいことに、母の財産を使い込んでいるというのです。
「弟が勝手に母の通帳からお金を引き出して使い込んでいるみたいで。
証拠はないですが、母の通帳をみると母が認知症になったあとに使途不明金の引き落としが数度あって…。どう考えても弟だと思うんです」と依頼者。
母親の預金は2,000万円以上あるそう。
弟は母の近所に住んでいて、けっこう母のところに通ってはいるんですが、正直、認知症の母の面倒をみているとはいえません。
昔から弟は母のところによくお金をもらいにいっていました。
そして『自分の子どもへの贈与をしてくれ』と、母が元気なころからよくおねだりもしていました。実際、母は可愛い孫のことですから、よくお金をあげていたようです。
でも、弟は本当にお金に関してルーズで、実際、湯水のごとく使うタチなんです
この兄弟は、実はあまり気が合わず、必要最低限しか連絡を取らない関係。
何かにつけて兄弟げんかが頻繁に起きていました。
「成年後見」の権限移動で通帳の管理を
兄のAさんから、「第三者に入ってもらって、母の通帳の管理を弟から切り離したい」と依頼されました。
認知症の方の成年後見人は、司法書士や弁護士などの専門職、ないしは親族がなるのが一般的です。
今回は、専門職である司法書士を「成年後見人」の候補者に立てて、これまで親族である子ども(兄・弟の両方)が事実上管理していた通帳を後見人へ渡し、管理権限を後見人へ移しました。
以降、母の通帳の使途不明金はなくなりました。
この成年後見人を司法書士が候補者となることについて、弟さんが納得いっているかどうかは別として、半ば強制的に手続きをしました。
司法書士立ち合いのもとでAさんが弟さんと久しぶりに面会をしたときには、後見人に対して文句を言うことはなかったですが、会話の節々から兄との仲の悪さはよく伝わってきました。
こういうケースはなかなかむずかしいものがありますが、後見人としては、どちらの味方でもないという立場を示しながらも、それぞれの話をじっくり聞くことに集中するとよいでしょう。
親族とは関係ない、公正な第三者が中立的な立場で介入することで、親族ではケジメをつけづらい問題もクリアに制止することができます。
もし、認知症の家族の財産をあくどく利用してしまう親族がいるなら、司法書士に成人後見を頼んでみるのもいいかもしれませんね。
認知症の親御さんを挟んで、家族間でお金のことでもめてしまうこともございます。
親御さんが認知症になってしまってからよりも、認知症になる前の方が、先々のお金の管理について打てる手が多いですし、親御さんご本人の意向も反映しやすいといえます。
お金のことは家族でも言い出しにくい、でも何かした方がいいのは確かな気がする…という漠然とした状態でも、人と話してみることで整理整頓できる場合があります。
*ご相談は無料です。なにかしらの実務を依頼した場合、お客様ご了承のもと有料となります。
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解説してくれたのは司法書士 村山澄江先生
村山澄江(むらやますみえ) 先生 プロフィール
民事信託・成年後見の専門家、司法書士
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員
簡裁訴訟代理関係業務認定会員
1979年名古屋生まれ。早稲田大学卒業。
2003年司法書士試験合格。
成年後見の相談者数300件以上。
民事信託と成年後見の専門家として全国でセミナー等行っている。