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国民病と言われるうつ病ってどんな病気

国民病といえば、どんな病気を連想されますか。がんや脳卒中、心臓病や花粉症などをイメージされる方が多いかと思います。

日本人の多くの人がかかりやすい病気のことを国民病といいます。

新たな国民病トップ3に「うつ病」がランクインされたことが、日本生活習慣病予防協会(2023年)が行った調査で明らかになりました。

国民病とも言われるうつ病とは、どのような病気でしょうか。今回はうつ病の原因や症状についてお伝えしていきます。

この記事の目次

1.うつ病が国民病と言われる理由

国民病とは、国語辞書には「国民の多くがかかり、人口が減ったり生産力が下がったりするなどの大きな影響を及ぼす病気」と定義されています。時代とともに、国民病と言われる病気の種類は変わります。主にがん、脳卒中、心疾患を指すことが多かったのですが、ここ近年にうつ病も国民病と言われるようになりました。

なぜ、近年になってうつ病が国民病と言われるようになったのでしょうか。それの理由は、下記のグラフが示すように日本全体に大きな影響を及ぼすからです。

(1)国民の多くがかかる

令和2年度の日本国内における精神疾患総患者数の推移は約614.8万人でした。

そのうち入院患者数は約28.8万人、外来患者数は約586万人と言われています。

Gensparku.ai 「日本の精神疾患患者とその予備軍について」 から引用

グラフが示すように、精神疾患患者は増加の傾向と辿っています。その中でも、うつ病を含む「気分(感情)障害」の項目は、他の精神疾患よりも多いことがわかります。

(2)人口が減る

うつ病は、自覚症状が表れにくく、早期発見と適切な治療が遅れがちです。うつ病の症状が悪化すると、自ら命を絶つこともあります。

令和6年の自殺者数は2万人以上おり、20~39歳までの若者の死因第1位となっています。

(3)生産力が下がる

うつ病の症状が強く現れると、

仕事のパフォーマンスが低下する

人間関係が悪化する

日常生活に影響を及ぼす

医療機関の受診による医療費が増加する

など、社会全体に大きな負担をかけてしまいますさらにうつ病は、心の病気として軽視される傾向があり偏見や差別を受け、社会参加が困難になることがあります。

以上3点がうつ病は国民病と言われるようになった理由です。

2.うつ病の原因は?

うつ病を引き起こす原因はご存知でしょうか?主にストレスと考えられています。1991年~1993年に起こったバブル崩壊後、経済崩壊によって日本はストレスが増大する「ストレス社会」になってしまいました。

さらに最近では、コミュニケーションの希薄化、緊迫した社会情勢、それに伴う経済状況の悪化など、ストレスはこれからも増え続ける傾向にあります。 うつ病の原因であるストレスは、大きく3つに分けられます。

1.環境によるストレス

✓就職や転職、結婚や妊娠・出産などライフステージの大きな変化

✓引っ越しや昇進に伴う生活環境の変化

✓ご家族や親しい人の死や離別・大切なもの(仕事や財産・健康)を失ったとき など

2.心理的なストレス

ストレスを感じやすい性格もあります。

例えば、

✓責任感が強い

✓仕事熱心

✓完璧主義

✓几帳面

✓凝り性

✓気遣いをする

などが挙げられます。

これらの性格は、心身ともに疲れやすいのが特徴です。

3.身体的なストレス

しあわせホルモンとも言われているセロトニンが不足することで、ストレスを感じやすくなるということがわかっています。セロトニンは脳内の神経伝達物質の一つであり、情緒の安定幸福感を得やすくなる効果があります。また、セロトニンは睡眠や食欲・学習に深く関係するホルモンであるためやる気にも関与しています。

3.うつ病の症状 

うつ病の症状は精神症状身体症状の両方に現れます。

精神症状

✓気分が落ち込む

✓やる気がなくなる

✓興味や楽しさを感じなくなる

✓不安や焦りを感じる

✓イライラと怒りっぽくなる

身体症状

✓食欲の低下

✓不眠や過眠

✓疲れやすい

✓身体がしんどい

✓頭が痛い

✓動悸

✓めまい

以上が一般的なうつ病の症状です。うつ病の症状は、個人差が大きく、病状によっても異なります。また、症状の程度は時間の経過によっても変化します。昨日は動けないほどつらい症状だったのが、今日は少し元気を取り戻している場合もあります。上記の症状が2週間以上続くようであれば専門医を受診されることをおすすめします。

4.うつ病を見逃せない理由

うつ病は早期に適切な治療が行えた場合、症状や病状も軽く済みます。しかし、うつ病の怖いところは身体的な不調と似ているため、心の不調と結びつかずに精神科に受診するまでに時間を要することです。

精神科に受診するまでに、病状が進んでしまう場合もあり、うつ症状が強くなり最悪の場合は自ら命を絶つことも少なくありません。現在は、少子高齢化で日本社会を支える年代がこれから更に少なくなってきます。

さまざまなストレスでうつ病を発症しやすい今、社会をあげてうつ病を予防する必要があると看護師として切実に感じています。

5.おわりに

うつ病が、国民病と言われるようになった背景には日本が辿った社会状況や個人の価値観や環境などが大きく影響しています。

しかし、近年では脳の神経伝達物質であるセロトニンの不足であることが判明してきました。

うつ病は治療が遅れると、取り返しがつかなくなる病気ではありますが、正しく理解し治療することで早期に完治する病気でもあります。

心身の症状が出た時に、一般診療科に受診する際に「もしかしたら」と可能性を考えて受診する診療科目の選択肢に付け加えていただけると幸いです。

引用・参考文献

Gensparku.ai 「日本の精神疾患患者とその予備軍について」

こころの耳 うつ病とは

こころの耳 うつ病の主な原因と症状

この記事を書いた人

看護師大竹加代子

大竹 加代子

大阪在住。身内の死をきっかけに、よりよい生き方を社会に広めたいと思い看護師となる。

整形外科・外科・脳外科・内科・循環器の急性期病棟を経て、回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟へ勤務・現在に至る。

現役看護師として医療に携わる一方、こころの健康が身体の健康に及ぼす影響を実感し、こころと身体の健康を取り扱う看護師Wellnessナースとしてメンタルケア・認知科学の学びをすすめながら、適応障害の人のための電話相談やセミナー開催に向け取り組んでいる。

《経歴》
看護師歴25年
プロコミュニケーター
NLPマスタープラクティショナー
一般社団法人 日本ナースオーブ所属 Wellnessナース
保険外訪問看護 看取り対話師

《執筆》
株式会社 ELAN 様 
看護師が解説!高齢者の骨折予防
看護師監修 介護側の食事指導
note 女性の適応障害に適応するブログ

《講座》
Wellnessチャートで賢くやせる/ウェルネス講座

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