アトピー性皮膚炎は強いかゆみと湿疹が見られる皮膚の病気です。
昔は、小児期に患っても大人になれば自然に治ると言われたアトピー性皮膚炎ですが、今は大人になっても慢性的な湿疹に悩まされている人が多いのが現状です。
実際、私も幼児期からアトピー性皮膚炎が始まり、大人になった今でもストレスがたまると皮膚が赤く、かゆくなり、それが夜間の不眠につながることがあります。
その体験から、アトピーは治すというよりも付き合うものだと理解しています。
そこで今回はアトピー性皮膚炎との向き合い方をお伝えしていきます。
これからの人生を快適にするためにも知っておくと安心です。
この記事の目次
1.アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、強いかゆみのある湿疹が良くなったり悪くなったりしながら慢性的に繰り返される皮膚疾患です。皮膚のバリア機能が低下するため、外からの刺激に敏感に反応し、炎症性の湿疹や乾燥を繰り返します。
乳幼児期に発症する発症するアトピー性皮膚炎は、成長とともに、皮膚のバリア機能が整い、改善していくことが多いですが、成人型のアトピーに移行し、治療を続けている人も多いのが現状です。
2.アトピー性皮膚炎と日常生活への影響
- 心理的な要因
大人のアトピー性皮膚炎は、顔や首周りに症状が出やすく、容姿を気にされる方も多いと思います。また、強いかゆみが我慢できずに掻きむしることで、さらに症状が悪化し、慢性的な睡眠不足に陥りやすくなります。「いつになったら治るのか」と、日増しに不安感が強くなり、ストレスが日常生活に影響を及ぼすことも多いと思います。
重症になると仕事に影響がでたり、異性との交際や結婚をあきらめることを選択したりと人生を大きく左右することもあり得る深刻な病気です。
このように、アトピー性皮膚炎は、症状そのものがストレスとなって苦痛を伴う場合と、社会的機能の低下や、生活の質が落ち、治療をする気力やセルフケアが障害されることにつながる場合もあります。
症状の改善だけではなく、症状からくるストレスと向き合い、症状と上手く付き合っていく心構えが病気と向き合う一番大切なことだと思います。
そこでまず、最初に改善したいのが、かゆみです。
②なぜ掻くことがやめられないのか
アトピー性皮膚炎の人は生まれつき、アレルギー反応を起こしやすい体質です。
体の中でアレルギー反応が起きるとかゆみを起こす物質、ヒスタミンが放出されます。そうすると神経伝達によって情報が脳に送られ、脳がかゆいと認識します。
最近の研究ではILー31という物質が、アトピー性皮膚炎のかゆみを引き起こす物質として報告されています。
これらの物質が引き起こすかゆみは炎症を起こしているので、とても、我慢できるものではありません。
あまりのかゆさに、皮膚を引っかくと一時的には気持ち良いと感じますが、掻きすぎると皮膚を傷つけ、さらに炎症が広がって、かゆみの悪循環となってしまいます。
アトピー性皮膚炎で優先されることは、まずかゆみを止めることです。そのためには、専門医を受診し、治療を受けると同時に、ライフスタイルを見直すことの同時進行が必要不可欠です。
3.アトピー性皮膚炎の治療について
アトピー性皮膚炎の治療は、薬物療法・スキンケア・悪化因子の除去の3つを組み合わせて行うことが必要になります。それぞれについて説明します。
①薬物療法
アトピー性皮膚炎の薬物療法の最終目標は、症状を抑えて薬を使用しなくても、生活に支障のない状態を維持していくことです。ここ数年で新しい治療薬が開発されて、患者の状態や皮膚の症状に合わせて治療法を選べるようになりました。
●塗り薬
現在広く使用されている外用薬はステロイド剤・非ステロイド系抗炎症外用薬です。
ステロイド外用薬
ステロイド外用薬は作用によってⅠ群(強い)~Ⅴ群(弱い)の5段階に分類されます。症状や部位によって軟膏、クリーム、ローション、テープ剤に分けられ、適切な薬剤を選択し処方されます。
非ステロイド系抗炎症外用薬
⑴タクロリムス軟膏(免疫抑制剤)
炎症を引き起こす酵素の働きを抑える働きにより、アトピー性皮膚炎による改善する効果が期待されています。ステロイド外用剤の副作用が出やすい顔や首の湿疹に使われることが多いです。
⑵デルゴシチニブ軟膏
細胞内にあるサイトカインという情報伝達物質を抑制する薬で、生後6か月から使用できる軟膏です。
⑶ジファミラスト軟膏
アトピー性皮膚炎の炎症を抑えるための信号を出す働きと皮膚のバリア機能を改善する効果があります。生後3か月から使用でき、使用にも制限がありません。
●飲み薬
かゆみを抑えるために抗アレルギー剤が処方されることがあります。薬の種類によっては副作用として眠気やだるさを感じる場合もあります。
●注射薬
外用薬や飲み薬で十分な効果がない場合に選択されます。強い炎症を伴う湿疹が広範囲に及ぶ患者には、かゆみや湿疹をブロックする注射が用いられます。
※これらの治療法は重症度によって使用が定められ、治療費も高額になります。また、処方された薬は必ず医師の指示を守り使用してください。
②スキンケア
皮膚のバリア機能を正常に保つには水分を補う・保つ・逃がさないことが重要です。
アトピー性皮膚炎の皮膚のほとんどがカサカサですから保湿を基本としたケアが大切になります。具体的な方法を次にあげます。
●水分を補う
洗顔後はできるだけ早く刺激の少ない化粧水や保湿剤を使用しましょう。
●保つ
化粧水で保湿した後は油分の含まれた乳液やクリームを塗ると、しっとりした状態が保てます。アトピー専用の商品が薬局でも購入できるため、相談してみると良いでしょう。
●逃がさない
私は赤みがあった時に幼児用のワセリンを使用していたことがあります。しかし、夜の睡眠中にかゆくて目が覚めてしまったことが何度かありました。ワセリンは保湿効果が強いですが、皮膚呼吸の妨げになるという難点もあります。
使用することで掻きむしり、保湿どころか余計悪化してしまうこともありますので注意が必要です。乾燥が強い時はアトピー用の保湿剤やオリーブオイルやつばき油など、加工していない自然のオイルを薄く塗ってみるなど試してみると良いと思います。
③悪化因子の除去
アトピー性皮膚炎はこれまでにお伝えしたようなケアと同時に、生活習慣を改善することでかなり症状が軽減します。
砂糖を多く含む菓子類はかゆみや炎症を起こしてかゆみを引き起こすこともわかっています。
また、夜間にスマートフォンで動画を見ることやゲームをすることを習慣にしていると良質な睡眠をとることが出来ません。翌日のパフォーマンスに影響されてストレスの原因につながってしまいます。自分自身と向き合い、体との対話を通して何を改めればよいか考えることが大切です。
4.まとめ
アトピー性皮膚炎は遺伝的なアレルギー体質によって引き起こされる皮膚疾患です。しかし、その症状は生活環境や生活習慣によって影響されるものであり、症状の現れかたも心の持ちようで大きく変わります。
遺伝された体質が変わらないのであれば、上手に付き合うという心構えと生活習慣の改善が必要であると感じます。とてもかゆくてつらい病気ですが、自分自身の生活に支障が出ているサインだと思えば、他の病気を食い止めることも可能であると思います。
この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」
動画配信YouTube「看護師mikakoの更年期チャンネル」