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看護師が解説!介護負担軽減⑤家族介護をラクにする介護保険外サービス

連載1回目からお伝えしてきた通り、介護保険サービスは介護負担を軽減してくれるものですが、時間や日数が限られます。
もっとサービスを必要としていても、介護保険内ではサービスを受けられないケースもあります。
今回の記事は、ここ数年需要が高まっている介護保険外サービスをご紹介します。

この記事の目次

1. 介護保険外サービスが利用される背景

2000年に介護保険サービス制度が始まってから、高齢者の単身世帯、介護者の高齢化、家族の就労状況など高齢者の支援状況も変化してきています。

2021年度末で要支援・要介護認定者は約690万人に達しています。
この数字は、介護保険サービスがスタートした2000年の要介護認定者約256万人に比べると、約2.7倍も増加していることになります。

また、単身世帯や核家族化が多くなり、昔のように多世代で高齢者を支える環境がなくなってきています

2022年に介護や看護を理由に離職した人は、10.6万人で過去最高の人数となっています。

介護をするご家族の仕事にも影響が出ており、家族だけでは介護を続けることが難しくなっている現状にあります。
以上のことから介護保険ではカバー出来ない部分を補い、様々なニーズに対応できる役割を担っている介護保険外サービスの需要が増加しています。

2. 介護保険外サービスとは

団塊の世代が2025年には75歳以上になります。
それを見据えて、国は高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるように、介護保険内サービスだけでなく保険外のサービスを一緒に活用することを推奨しています。

介護保険外サービスとは介護保険サービスで提供できない部分をおこなうサービスです。
介護保険サービスと介護保険外サービスの違いを簡単に表にまとめています。

介護保険サービス介護保険外サービス
利用できる人要介護認定を受けている人要介護者・要介護者の家族
介護認定を受けていない高齢者、障害者でも利用可能
金額自己負担は1割から3割
(収入により負担額は変わる)
全額自己負担
サービスの種類訪問介護・訪問看護・訪問リハビリ
通所介護・通所リハビリなど
家事支援(訪問介護で出来ない部分も可能)
夜間の付き添い・通院付き添い・外出サービス・旅行付き添い・訪問理容・美容など

国はこれらの介護保険内サービスと保険外サービスを地域包括ケアシステムの中に位置づけています。

地域包括ケアシステムとは、「住まい」・「医療」・「介護」・「生活支援」・「介護予防」が一体的に提供される地域の包括的な支援・サービスの提供体制です。

地域包括ケアシステム

地域包括ケアシステムの実施へむけて

今までご紹介した訪問サービス(訪問介護・訪問看護・訪問リハビリ)、通所サービス(通所介護・通所リハビリ)、小規模多機能型居宅介護、ショートスティ、レスパイト入院も地域包括ケアシステムの中にあるサービスのひとつです。

3. 介護保険外サービスの紹介

現在展開されている介護保険外サービスを図にまとめました。

見守り・買い物などの生活支援や旅行、趣味や生きがいなど保険外サービスは多岐にわたります。

介護保険外サービス例

ここでは「自治体」、「介護事業所」、「社会福祉協議会」、「独立起業した介護・医療専門職」が提供するそれぞれのサービスの特徴を説明しています。

⑴ 自治体によるサービス

自治体の主なサービスを説明します。
以下のサービスは自治体によって内容や料金が異なりますので、お住まいの市町村窓口、地域包括支援センター、ケアマネジャーにお問い合わせください。

①緊急通報システム

高齢者のいる世帯に提供しているサービスです。体調不良や転倒など緊急事態が起こった時、専用の端末から民間の警備会社または消防庁、消防局の受診センターに通報されます。必要に応じて救急車の手配や協力員による安否確認や緊急時連絡先へ連絡をしてくれます。

※介護保険内のレンタルで「認知症老人徘徊感知器」という名称で見守りカメラのレンタルが可能です。要介護2以上、認知症の診断が条件となります。

②おむつの支給、おむつ代の助成

常時おむつが必要、世帯収入が一定額以下、65歳以上の要介護者におむつを支給またはおむつ代の助成をするサービスです。

③高齢者向けの配食サービス

栄養バランスの良いお弁当を自宅まで届けてくれるサービスです。
本人に手渡しし、本人が直接受け取ったかを確認してくれる安否確認のサービス付きが多いです。

④訪問理美容

自宅療養中、介護施設利用中の人に向けたサービスで、理容師・美容師が自宅や介護施設に出向いて出張理容・美容サービスを提供します。

⑵ 介護事業所によるサービス

【通所介護(デイサービス)で行える介護保険外サービス】

①通所介護へのお泊りデイサービス

日中利用している通所介護施設に宿泊するサービスで、慣れた施設やスタッフなどの環境が高齢者の不安を軽減できます。

②買い物代行サービス

通所介護を利用中に職員に買い物の代行を依頼できるサービスです。

③理容、美容サービス

予定されている通所サービスの提供プログラムに影響しないようにすれば、理容・美容サービスを受けることは可能です。

④通所介護事業所内での物販や移動販売サービス

物販:事業所内で買い物をすることができます。
移動販売:決まった曜日や時間に事業所内の駐車場などに販売者が来ます。

【訪問介護でおこなえる介護保険外サービス】

  • 通院時の付き添い、見守り
  • 理髪店、美容院の付きそい
  • 大掃除
  • 庭の手入れ
  • ペットの世話
  • 冠婚葬祭の付き添い
  • 利用者家族の食事の調理

⑶ 社会福祉協議会、シルバー人材センターなどによるサービス

  • 家事・生活支援:調理、洗濯、掃除、買い物、話し相手、草刈り、大掃除(障子の張替え)など
  • 介護援助:外出の付き添い、通院介助、車椅子介助、見守りなど

⑷ 医療・介護専門職が起業しおこなっているサービス

①看護師によるサービス
  • 医療の専門性を生かし、病院受診同行と医師と家族との連絡代行をおこなう
  • 要介護者の家事支援や介護をおこなう
  • 健康・介護相談サービス:ご家族の健康相談や介護相談に応じる
  • 看取りサービス:家族に寄り添い看取りをサポートする
②リハビリ職によるサービス
  • 自宅に行きリハビリをおこなう
  • 介護予防のため集団でおこなう体操を指導する
  • レクレーションを提供する
③介護職によるサービス
  • 家事、生活支援:調理、洗濯、掃除、買い物、話し相手、草むしり、大掃除(障子の張替え)など
  • 通院の付き添い
  • 外出支援:身支度からサポートする介護タクシー

4. 介護保険外サービスを利用するメリットとデメリット

⑴ メリット

  • 要介護認定を受けていなくても利用できる
  • 介護保険では対応できないサービスを受けることができる
  • サービス利用時間を希望できる(24時間付き添いも可能)

⑵ デメリット

  • 料金が全額負担のため高額になる可能性がある
  • サービスの質にばらつきがある
  • 新規サービスは口コミ評価が少なく、信頼度が低い

5. まとめ

介護保険サービス、介護保険外サービス

様々な介護保険外サービスをご紹介しました。高齢者や介護をするご家族へのサービスは幅広いニーズに応えられるようになってきています。

介護保険外サービスを利用される場合は、まずはケアマネジャーに相談しましょう。
定期的に介護保険外サービスを利用される場合は、介護保険内の事業所と介護保険外の事業所との連携が必要になってくる場合があるからです。連携をとることで安心して介護を継続することに繋がります

また、自治体や社会福祉協議会のサービスは安価に設定されているサービスもあります。
まずは、在宅介護支援センター、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しましょう。

家事・生活支援などは多くの事業所がサービスをおこなっています。
どういう人からサービスを受けたいか、料金、利用時間、サービス内容など条件があうか確認されると良いと思います。この点もケアマネジャーに相談して情報を得るようにしましょう。

時間の制約で夜間の介護が難しい場合や家族で思い出を作りたいなど、いろんな場面で介護保険外のサービスを利用することができます。

介護を受ける人、介護をするご家族のニーズをできるだけ満たすことで、しんどいなと思う介護がラクになります。

家族の理解や経済的に可能であれば、介護保険外サービスを利用されることをお勧めします。
今回で介護負担軽減に関する連載は最後となります。これまでの記事や今回の記事がお役に立てれば幸いです。

参考・引用文献
1)厚生労働省 令和3年度 介護保険事業状況報告(年報)のポイント
2)総務省 令和4年就業構造基本調査の結果(要約)
3)厚労省 地域包括ケアシステム
4)地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集保険外サービス活用ガイドブック (厚生労働省  農林水産省  経済産業省平成28年3月)



この記事を書いた人

看護師:郷堀有里夏

郷堀有里夏

<プロフィール>

看護師経験30年。急性期病棟やICUを10年経験した後、施設看護や訪問看護、ケアマネジャーとして多くの介護を必要とする方々やそのご家族と関わる。

県外で勤務していた頃、母親が介護状態となり地元へ帰省する。

仕事と介護と自分の人生に悩んでいた頃、認知科学を学ぶ。

学びを通してわだかまりのあった親子間や家族間の葛藤を解消し、介護中に修復する事が出来た。そして、母親を施設から引き取り家族と共に在宅看取りを行うことが出来た。

自身の経験を通して、「健やかに自分らしく生きること」や「安心して介護や看取りが行える環境づくり」が重要だと感じ、心の介護専門家として講座やお話会を通じ情報を提供している。

<経歴、職歴>

(一社)日本ナースオーブ所属 Wellnessナース

看護師経験30年(訪問看護管理者、施設看護、介護支援専門員、救急センター、ICU)

保険外自費サポート ひかりハートケア登録ナース

<講座>

親にイライラしない介護コミュニケーション/ウェルネス講座

<その他の活動>

心から看る介護と認知症のお話会

後悔しない親の介護 / ブログ

人生が豊かになる介護メルマガ


著者の Facebook
https://www.facebook.com/yurina.gohori/

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