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私の看護師経験やさまざまな資料とあわせても、サポート体制や介護自体の考え方が認知症発症のご本人様寄りの部分が多分にあると感じます。
認知症介護にあたるご家族様の在り方について定義したいと思います。
この記事の目次
認知症患者ご本人に比率を多く置いた考え
認知症状の早期発見が遅れたのは、親子のコミュニケーション不足か?
家族だからこそ、認知症の初期症状「何回も同じことを聞いてくる」「今までできていたことができなくなってくる」など、小さな変化気づきやすい、と説明をうけたり、書かれたりしています。
しかし、その小さな変化に気づけなかった時、認知症が進行してからの病院受診や自治体への相談になった場合、ご家族様はもしかしたら「親の変化に気づけなかった、子供なのに」という自己嫌悪や戸惑いを多少でも感じるのではないでしょうか。
同居をしていても、仕事や子育てなど様々な役割があり、小さな変化に気づけないこともあるでしょう。
この背景には、親御さんの役割損失を隠そうとする心理的働きがあります。
認知症の初期症状である、忘れやすくなっている、今までできていた簡単なことができなくなっていることに、少なからず気づいている方もおられますが、それを隠そうとされます。
それは今まで親である自分の役割を、果たせなくなるという喪失感があるからです。
人はなにかしらの役割がなくなると生きる意味を見失います。それがどんなに小さなことでもです。
私は時々、業務にて病院の受診に同行することがあります。
難聴の方の受診に同行した時のことです。
その方はかなりの難聴で、通常の会話でも少し声を張り上げないと聞こえてないという方でした。
外来担当の医師もそのことは把握されており、大きな声で説明をされていました。
ご本人は「はい、はい」と全て聞こえているかのように返事をされています。
受診が終わり、「先生の説明で何か不明点ありましたか?」と補足の意味を込めて私が確認すると、「全然聞こえんかった、わからんかった」とおっしゃられました。
私から見て、その方は全て聞こえているような返答をされていたので、とても驚きました。
「自分はしっかりしている」という自負があるからこそ”聞こえているふり”をされているのだと思います。
(※後ほど医師の説明を代理で説明しました)
お子様相手なら、なおさら知られたくないという思いが強いでしょう。
ですので、親の小さな変化に気づけなかった、イコール、親子のコミュニケーション不足ということには直結はしないでしょう。
家族だからこそ本人のことをよく知っているでしょ?という周囲の思い込み
以前の記事で「親が認知症になったときの接し方」でお弁当箱に固執されるお母様の例を書きました。
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この方の場合は、娘さんの予想が的を得ていたので、お母様の『1つのものに固執する』という症状を緩和することができました。
しかし、全て同じようにすることは不可能でしょう。
いくら子供でも親の人生の全てを知ることはできないのです。
他人よりは少々昔のことを知っているぐらいではないでしょうか。
人は様々な場面でそれぞれの役割を持っています。
職場での役割、地域での役割、友人の中での役割、親としての役割、夫婦としての役割などです。
同じ1人の人間でも、それぞれの役割を持って生きていおり、それは家族が知るのとは別の顔であることが多々あります。たとえ身内でも、全てを把握するのは至難の業です。
私も母が亡くなってから、遺品整理をしていると、お友達同士の手紙、昔書いていた日記、アルバムをみつけ、初めて知ったことも多々ありました。
しかし、それすらも母の人生のほんの一部分でしょう。
では、世の中の風潮はどうでしょうか。
子供だから、家族だから、知っていて当然だろうという考えがあるのではないでしょうか。
そして、病院や施設スタッフがその考えのもと何かしら情報収集するために家族に質問をすると、訊かれる側には「親のこと何もしらない」と後悔が残るでしょう。
それは、その後の介護者の人生に後悔を残すことになり、ともすれば何年も自績の念を持たれることもあります。
ぎりぎりまで介護を頑張ってしまう
介護のサポートは公的なもの民営のもの様々ありますが、どの部分でも基本的に家族が関わって成り立っているシステムとなっています。
介護認定の申請や入退院など各種手続き、入院中必要となる物品準備なども含め、ご本人様が出来ないことを家族が代行する必要がある場面は多岐に渡ります。
日本は昔から家族の世話は家族でするという風習があるからかもしれませんが、『家族がやるのが当たり前』という考えが根底にあるように思えてなりません。
しかし、昔の何世代もの家族が同居するという家族構成と違い、単独世帯が増加していますし、共働きでかつては介護の多くを担っていた『お嫁さん』『娘さん』も男性同様外に働きにでており、自身の仕事や夫、子どものことで手一杯という方が多いのではないでしょうか。
昔の介護の考えに基づいたさまざまな物事すべてに家族があたろうとすれば、無理が出てくるのは当然のことかもしれません。
家族がサポートの手続きを行いにくい、介護保険手続き申請が遅れるなどの問題が出てくるのも、そういった変化が要因のひとつと言えるでしょう。
認知症患者さんと家族の在り方
まず最初に言えるのは、現代の認知症の社会的サポートは介護側、身内に寄り添ったサポートが必要ではないかとうことです。
認知症の方の「その人らしさを大切にした関わりが大事」とよく言われます。
もちろんそうなのですが、介護側の「その人らしさ、その人の人生も大切」です。
そして介護で良い関わりができたからこそ、介護側の残った人生を後悔なく前に進めるのではないでしょうか。
どうしても介護される方に重点を置いたサポートシステムが多いのが現状ですが、もっと社会全体で関わるという考えが必要ではないかと思います。
では、どういったサポートが必要なのでしょうか。
例えば株式会社エラン様の入院セットというサービス。
これは入院中に寝間着やタオルなどをレンタルすることができるサービスです。
従来は家族がお見舞いのたびに汚れ物を預かって綺麗なものを渡してくる、または病院のランドリーを利用して洗濯・乾燥を行う必要がありましたが、このサービスを利用することで『洗濯物のために病院に行く』という家族の手間や心理的不安を軽減し、かつご本人様の清潔も保てるサービスです。
警備会社などが行なっている見守りサービスもその一環と感じます。
同居していない親、もしくは仕事をしていると、24時間親の側で安全を見ていることができません。
認知症になったからといって、すぐに同居を開始する、仕事を休職することは困難な場合もあるでしょう。
また『同居』したからといって、24時間常に気を張って見守ることは介護者にとってかなりの負担です。
家族には及ばないかもしれませんが、見守りサービスなら24時間見守ってもらえます
また保険外訪問看護サービスも家族の負担を軽減するのに役立ちます。
介護保険内の訪問看護だと、時間や訪問回数に制限があります。
しかし、家族としては訪問していない空白の時間が心配なこともあります。
安心安全を守るのに適しているサービスと言えるでしょう。
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まとめ
前項であげたようなサポートシステムも少しずつでてきています。
しかし世間の風潮はまだ、「家族だから頑張らないと」「家族なのに知らないの?」という考え方が残っています。
認知症患者の家族の在り方として、全て責任を負うのではなく、社会・地域のサポートを活用し、ご自身の人生を大切にしながら生活・介護できればと思います。1つの家族の在り方として定義したいと思います。
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この記事を書いた人
山川幸江
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」