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看護師が解説!認知/認知機能⑤認知症で利用できるサポート制度

本記事では認知症のサポートシステムをご紹介します。

認知症の介護は平均10年と言われています。

大切なことは孤立しないことです。

心身ともに疲弊するまえに、サポート制度を活用しましょう。
認知症の進行に合わせて必要なサービスをお伝えします。

認知/認知機能⑤認知症で利用できるサポート制度
この記事の目次

認知症かもしれないという時に相談にいく場所

最初に気づくのはご家族様であることが多いです。
いつもと違う、なんとなく忘れっぽくなっている、何回も同じことをきいてくる、そんな様子がみられたら、まず以下のところに相談にいってみてください。

・認知症ケアパス
・かかりつけ医
・地域包括支援センター
・認知症疾患医療センター

認知/認知機能⑤認知症で利用できるサポート制度

認知症ケアパス

認知ケアパスとは、認知症の人やその家族が「いつ」「どこで」「どのような」医療や介護サービスが受けられるのかまとめたものです。
相談場所ではありませんが、認知症の様態に応じたサービス提供の流れを地域ごとにまとまっており、各市町村で作成していますので、自治体のHPを見てみるか、役所の窓口などで手に入れて目を通しておくといいでしょう。

かかりつけ医

ご病気などででかかりつけの病院やクリニックがあれば、受診時に相談してみるのがいいでしょう。

認知症検査は、CTやMRIなどの画像検査や長谷川式簡易知能評価スケールなどがあります。

認知症の検査にはなるべく家族の立ち会いのもとがよいと思います。
ご本人様もショックを受けられると思いますので、一緒に診断を聞いてあげることが大切です。
ご本人様はご自身が認知症であることを認めたくない、他の人に知られたくない、そう思われ病院受診を拒否する場合もみられます。

また、かかりつけ医の受診間隔が3ヶ月に1回などかなり先であれば、次に挙げるところへ相談をしてみましょう。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは高齢者の生活をサポートしてくれる施設です。
よろず相談のようなところで、全国に約5,000箇所設置されています。

各地域の地域包括支援センターの所在地はインターネットで検索したり、自治体に確認すると教えてもらうこともできます。

地域包括支援センターでは、医療機関に繋いでくれたり、介護保険導入の手続きを教えてくれます。また、代理のご家族様が相談に行かれても対応してくれます。

名称は地域包括支援センターの他に、高齢者相談センターやシニアサポートセンターと呼ばれているところもあります。

認知症疾患医療センター

認知症の医療相談から診察まで幅広く応じる専門の医療機関です。

物忘れ相談、認知症診断、治療、介護保険申請相談まで、認知症に関する支援を包括的に行ってくれます。
都道府県や政令指定都市が指定する病院に設置され、全国に477箇所あります。

認知症疾患医療センターとして指定される病院は人員や入院設備など基準を満たした医療機関のみになります。
また、かかりつけ医や介護施設、行政などと連携して包括的に認知症の治療やケアを行います。

認知症専門医は相談窓口があります。地域包括支援センターに問い合わせると場所などを教えてくれます。

認知/認知機能⑤認知症で利用できるサポート制度

早期の受診が望ましいです

まずは早期の診断、適切な医療を受け、進行を緩やかにすることが必要です。

しかし、認知症と認めたくない、診断されることが怖いと思われる方もおられるでしょう。

無理やり連れて行こうとすると抵抗を感じる方がほとんどであり、ご家族様との信頼関係の悪化にもつながります。
認知症は長く付き合っていくご病気であり、またご家族様の協力が必須です。
まずはゆっくりと話しあいましょう。

ご家族様によっては、健康診断に一緒にいこうと誘う、最初から専門医へはいかず関係性が既にできている、かかりつけ医院へ相談し受診された方もおられます。

公的サポート制度

介護保険利用

介護保険のサービスを利用するには、手続きが必要になります。
手続きをしてその方の認定区分が決定するまでに約1ヶ月かかりますので、早めに手続きしておくとよいでしょう。
区分は以下のようになっています。

・要支援1
・要支援2
・要介護1
・要介護2
・要介護3
・要介護4
・要介護5

この区分ごとに、介護保険で適用される範囲や金額が異なります。

手続きの流れは、

  • ご本人様が居住されている市町村の自治体に申請する(代理の家族様でも可能)
     
  • 地域包括支援センターへケアマネージャーについてもらうよう相談する
     
  • 自治体申請後約1週間で認定調査が行われる
     
  • 約2週間~1ヶ月程度で認定区分がきまる(要支援1〜2、要介護1〜5)
     

認定区分が決まったら、次は、ご本人、ご家族の介護状況などを考慮しケアマネージャーと必要なサポートや福祉用具を選定していきます。

使えるサービスは

居宅サービス
 訪問看護や訪問介護、訪問入浴など
 
施設サービス
 特別養護老人ホーム、介護老人保険施設、グループホームなど

要支援の方は居宅サービスが受けられません。介護予防サービスとなります。
介護予防サービスとは、高齢者ができる限り要介護状態に陥ることなく、また、状態の悪化を防ぐために生活機能の維持向上や改善を目的としたサービスです。

どのサービスを取り入れていくか、どの福祉用具(ベッド、車椅子、ポータブルトイレなど)が必要かは、ご本人様の状況(物忘れがどの程度か、内服管理できているのか、食事摂取状況や排泄状況など、また歩行や着替えなど日常生活動作などを考慮)を確認したうえで、ケアマネージャーと相談し、決めていきます。

成年後見制度

成年後見制度は認知症などで判断能力が低下した方の財産を守る制度です。

家族や第三者の弁護士や司法書士などが代理人(後見人)となり、財産管理や身上監護(契約締結など生活、治療、療養、介護などに関する法律行為)を行います。

後見人をたてたい時には、既にご本人様が認知症になっているなど判断能力が危うい場合は、家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所が後見人を選出します。
そのため、家族が後見人になりたくて申し立てた場合でも、第三者が選出されるケースもあります。
第三者が選出された場合には後見人に月々の報酬を支払うなどお金がかかることを念頭にいれておくとよいでしょう。

ご本人様が認知症になると、銀行など金融機関の手続きや、不動産など資産管理ができないなどの問題が発生します。
ご本人に判断能力があるうちに金融機関に代理人登録をしておく、家族信託を組んでおくなどしないと、定期の解約など各種手続きには成年後見人を立てるよう金融機関に言われて困ったというケースも多いです。

成年後見制度は手続きを一旦するとやめることができないので、慎重に行う必要があります。
なるべくご本人様の判断能力があるうちに、先々どうするか、誰が管理するか、そのために必要な手続きはなにかを考えておくことが肝要です。

医療費負担を減らす4つの制度

自立支援医療制度

精神科の医療機関に入院せず外来、投薬、訪問診療などを受けると自己負担額が軽減されます。
ただし、どの認知症の方も適応されるわけではなく、厚生労働省が定めるところでは「精神遅滞及び認知症については、易怒性、気分変動などの情動の障害や暴力、衝動行為、食行動異常等の行動の障害等を伴い、継続的な通院による精神療法や薬物療法を必要とする場合に、精神通院医療の対象となる。」と定めています。

基本的には1割負担ですが、収入による自己負担額の上限は設けられています。
そして、「指定自立支援医療機関」でしか利用できません。
薬局や訪問看護事業所も、指定登録された機関のみの利用となります。

高額療養費制度

公的な健康保険制度に加入していれば誰でも使えます。
入院はもちろん、外来通院、院外処方を含め、自己負担額が一定額を超えると給付を受けられます。
一定金額はご本人の収入や年齢で異なってきます。
手続きは国民健康保険であれば支払いをした3〜4ヶ月に申請書が郵送されます。
つまり一時的に負担を行い、後で返ってくる制度です。支払いをした領収書は保管しておきましょう。

限度額適用認定証

医療費が高額になりそうなとき、あらかじめ限度額適用認定証を手続きしていれば、医療機関でのお支払い料金は保険適用内の医療費の支払いですみ、自己負担限度額までにおさえることができます。

手続き方法は国民健康保健であれは、最初に自治体の保健年金窓口で、限度額認定証の交付を受けておきます。

高額介護サービス費用

1ヶ月単位で負担した介護サービス費用の自己負担額が一定額を超えた場合、後日返金されます。

市町村の介護保険窓口で申請できます。限度額は前年度の所得などから決まります。
また、公的介護保険利用から2年以内に申請をする必要があります。

民間サポート体制

認知症カフェ

認知症ご本人様やご家族様の情報共有する場です。
皆が同じような状況なので、情報も共有しやすいでしょう。参加費も100円ほどです。

社会福祉や医療法人、NPOが主催されており、地域によっては自治体のHPに告知がでていることもあります。

認知症カフェには看護師や介護福祉士が参加していることもあり、アドバイスを聞けることもあります。
また、クイズや脳トレ、手芸、パソコンなどの活動も行われています。

まずはこういった気軽に参加できるところに参加されてもいいかもしれません。
孤立せず、他者との交流を続けておくことが重要です。

公益社団法人 認知症の人と家族の会

認知症の人と家族の会では、本人や家族が集まり、自由に話をしながら情報交換、介護相談などを行っています。
支部は全国展開されており、勉強会も定期的にされています。
また電話相談もされています。

見守りサービス

民間の警備会社が高齢者の見守りサービスを提供している会社があります。
会社によってサービスは様々ですが、ストラップ型のGPS探知機や緊急ボタンを押せばすぐにかけつけてくれるサービスなどがあります。

費用は月々1,000円程度となっています。(オプションで価格は変動します)

保険外訪問看護

保険内の訪問看護は訪問時間(30分、1時間など)や1週間の訪問回数に上限があります。

保険外の訪問看護は専門の資格・知識をもった看護師が訪問するサービスがあります。

私も登録しており、訪問にいかせていただいています。
受診同行サービスもあり、毎回家族は受診同行するとなると、仕事や育児などもあり、困難な場合があります。かといってご本人様1人では医師との話の内容が伝わらない、内服が変更になっても理由がわからないなどの時に、付き添い看護師が代理で医師の話を聞き、正確な情報をご家族様に報告いたします。

認知/認知機能⑤認知症で利用できるサポート制度

まとめ

公的、民間のサポート体制をお伝えしました。まず孤立しないことが重要です。
認知症は恥ずかしいことではありませんので、サポート体制を整え、介護されているご自身の人生も大切にしてもらいたいと思います。


この記事を書いた人

山川さちえ 看護師経験 15 年(訪問看護2年、管理者1年) がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座(2023 年) 誰でもわかる/退院前から介護利用までの 50 のチェックリスト作成

山川さちえ
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」

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