目次

看護師がわかりやすく解説! 糖尿病③ 糖尿病の予防・改善のための対策~食事編

糖尿病の予防や改善のために最も大切なことは「食事」です。

糖尿病食ときくと「節食」や「我慢」のイメージがあるかもしれませんが全くの誤解です。

実は、糖尿病の食事は特別なものでなく、健康でありたいすべての人にとって効果的な「健康長寿食」です。

この記事では、糖尿病の予防や改善のための食事についてお伝えしていきます。

この記事の目次

1.糖尿病予防・改善のためのコツ

糖尿病③ 糖尿病の予防・改善のための対策~食事編

①黄金比は「一汁三菜」

日本人が昔から食べてきた一汁三菜は、糖尿病食に最適です。

主食としてご飯を中心に、具沢山の汁物、主菜に魚料理や豆料理、副菜に野菜や海藻を使った常備菜や酢の物、発酵食品を食べるスタイルで、血糖値が穏やかに安定する献立になっています。

野菜やきのこ、海藻類は食物繊維が豊富で、血糖値の上昇を抑える働きがあり毎食取り入れることが大切です。

近年は食の欧米化により、主菜に肉や乳製品など高脂質の料理と副菜は付け合わせ程度の少量の野菜が並ぶことも多くなりました。エネルギー過多で高血糖になりやすい献立です。

糖尿病の予防・改善には昔ながらの一汁三菜スタイルを意識するとよいでしょう。

肉や乳製品を主菜にする場合は脂質が少ない部位を選んだり、一回量を取りすぎたりしないよう野菜を組み合わせた献立にするとよいでしょう。
血圧が気になる方は汁物を一日一杯程度にしてください。

②自分の「適量」を知る

何をどれくらい食べるのと良いのか、自分の「適量」を知ることは大切です。

適量を知る方法は2つあり、1つ目は専門家に確認する方法、2つ目は自分のからだと対話する方法があります。

専門家に確認する方法

まず1つ目の専門家に確認する方法をお伝えします。

糖尿病食のポイントは1日の必要エネルギー量です。

ご自身の身長・日常の身体活動量・肥満度・目標体重などから算出します。
それに基づき1食の炭水化物は何gか、タンパク質は何gかなどの1日の必要栄養素量の目安が示されます。

計算式は本やインターネットなどで調べることができますが、一度専門家に相談するのがおすすめです。

具体的な方法は後述します。

自分のからだと対話する方法

2つ目は自分のからだと対話する方法です。

3食が適量であれば、食べすぎてからだが重くなったり眠気が起きたりすることなく食後もスッキリと活動できます。

また、次の食事前には自然とお腹が空くものです。

朝は空腹で目が覚め、身体が軽い状態です。

このような状態を目指し、食事の量や食事時間を調整してみましょう。

③「心と食欲」の関係性を知る

無性に甘いものが食べたくなる時、夜中にカップラーメンが食べたくなる時、お酒を飲まずにはいられない時、何度もお代わりをしたくなる時。

そんな時は必ずといっていいほど、心が疲れています。

人は食欲が満たされると脳内から「セロトニン」という幸せホルモンを分泌します。
心が疲れている時、その「セロトニン」を出して自分を癒そうと、からだは過剰に食べ物を欲するのです。

からだに良くないと思いながらも過剰な食欲がある時には、日常に何かしらのストレス因子が隠れています。
一度立ち止まり、ストレスケアに意識を向けてみてはいかがでしょうか?

糖尿病の予防・改善のための対策~食事編

2.血糖対策成功事例

①単品料理が定番だったUさん

主婦Uさんの昼食の定番は手軽なうどんでした。
しかし「いつも夕方16時ごろになるとお腹が空いて、夕食前におやつをたくさん食べてしまう」と悩んでいました。

麺類や丼ものなど炭水化物の単品メニューは、糖質が多く血糖値が急上昇しやすい料理です。

上がりすぎた血糖値を下げるため、からだはインスリンをたくさん出し、今度は血糖値が急下降します。
すると低血糖状態になり、急にお腹が空いたり、手足が震え何かを食べずにはいられなくなったりすることもあります。

そこで昼食のうどんの中に「一汁三菜」スタイルを取り入れました。

主食のうどん、主菜のお肉、副菜2品分の野菜やきのこをうどん一杯に込めます。
要は普通のうどんから具沢山うどんに変えたのです。

すると、血糖値の上昇が穏やかになり、夕方おなかが空くことはなくなりました。
おかげで血糖値が下がっただけでなく、毎日のおやつを食べる必要がなくなり体重も減りました。

栄養バランスの良い食事は糖尿病予防と改善に効果的です。

②ご飯「大盛り」のIさんと「少食」のTさん

ご飯やおかずの量は人によって、また家庭環境によって驚くほど異なります。

血糖値が高いと診断された今、自分の「当たり前」が本当に自分のからだにとって「適量」か、考えてみる必要があるかもしれません。

毎食ラーメン鉢大盛りのご飯を食べていた男性Iさん。

1食の適量とされたご飯量はその半分でしたが、おかずを増やしたことで空腹感なく、血糖値を下げることができました。

「ご飯はほんの少ししか食べないの」と言う女性Tさん。

ご飯は毎食500円玉程度の一口しか食べていませんでした。
そのためからだは糖質が足りず、せんべいやスイーツ、多量の果物でそれを補っていました。ご飯をしっかりとるようになってからは間食量が減り血糖値を下げることができました。

 

③過食の原因に気付いたSさん

定年退職後半年経つSさんは、山登りや写真、自転車などの趣味をたくさんもっていました。

奥様は仕事で日中不在のため、趣味仲間と週3回ほど外出して過ごしましたが、それ以外の自宅ではひたすらスナック菓子やプリンなどの甘いものを口にしていました。
はじめは「暇で口さみしいのかな」とおっしゃっていましたが、話すうちに別の想いがあることに気が付きました。

「趣味はたくさんあるけれど、どれも簡単で大したことないと思ってしまう。仕事の時のような苦労や達成感がなく、毎日がざるで水をすくっているかのような感覚です。」

その気持ちをかき消すための過食でした。

「こんなことで満たされるわけじゃないし、健康まで害してしまうなんて馬鹿らしいね。」

と過食をやめ、新しい仕事とボランティア活動を始められました。

健診の検査値はすべて正常範囲に下がりました。

糖尿病の予防・改善のための対策~食事編

4.栄養相談のすすめ

これまで、糖尿病の予防・改善のための食事には、「栄養バランス」と「適量」が大切であるとお伝えしていきました。

どのような献立や量がよいのかを知るためには、医療専門職に相談することをお勧めします。

病院に通っている場合は主治医に相談し、健康教室や栄養士さんの栄養相談をうけてみるとよいでしょう。

病院に通っていなくても、お住いの市役所で保健師さんや栄養士さんの健康相談や料理教室などが受けられます。
また、スーパーや地域のコミュニティーセンターなどで定期的に健康相談が巡回している場合がありますので活用してみてください。

糖尿病の予防・改善のための対策~食事編
糖尿病の予防・改善のための対策~食事編

5.まとめ

糖尿病の食事は特別なものではなく、すべての人にとって効果的な「健康長寿食」です。

この機会に「自分にとってちょうど良い暮らし」にシフトチェンジし健康生活を築いていきましょう。


この記事を書いた人

安富由紀子 <プロフィール> 看護師・保健師として、何千人という生活習慣病やその予備軍と診断された方の保健指導や健康教育に携わる。その中で心身共に健康であるためには、「自分が大切にしていることを知ること」「なりたい自分に向かうこと」が重要であることに気が付く。 現在では「健幸ビジョンコンサルタント」として既存の医療では解決できなかった“心から健康で幸せになる方法”を社会に啓蒙するため、個人や企業での健康相談、研修、コンサルティングを行っている。 <クレド> ①指導をしない ②徹底した対話と、感情や意思を引き出す関わり ③クライアント自身の思考や情報取得を尊重して主体性を育む関わり <経歴> 看護師・保健師 専門は生活習慣病予防 (一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース (一社)日本看護コーチ協会 認定看護コーチ <講座・執筆> ・治療選択ワークショップ主催・講師(株式会社ぷれしゃす様 ) 「もしもあなたが乳がんになったら」 ・エンディングノート作成講座・講師(株式会社ウィシュレーン様) 「延命治療、あなたの意志の伝え方~家族に重圧を残さないために」 ・ウェルネス講座 講師(一般社団法人日本ナースオーブ様)

安富由紀子

<プロフィール>
看護師・保健師として、何千人という生活習慣病やその予備軍と診断された方の保健指導や健康教育に携わる。その中で心身共に健康であるためには、「自分が大切にしていることを知ること」「なりたい自分に向かうこと」が重要であることに気が付く。

現在では「健幸ビジョンコンサルタント」として既存の医療では解決できなかった“心から健康で幸せになる方法”を社会に啓蒙するため、個人や企業での健康相談、研修、コンサルティングを行っている。

<クレド>
①指導をしない
②徹底した対話と、感情や意思を引き出す関わり
③クライアント自身の思考や情報取得を尊重して主体性を育む関わり

<経歴>
看護師・保健師 専門は生活習慣病予防
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
(一社)日本看護コーチ協会 認定看護コーチ

<講座・執筆>
・治療選択ワークショップ主催・講師(株式会社ぷれしゃす様 )
「もしもあなたが乳がんになったら」
・エンディングノート作成講座・講師(株式会社ウィシュレーン様)
「延命治療、あなたの意志の伝え方~家族に重圧を残さないために」
・ウェルネス講座 講師(一般社団法人日本ナースオーブ様)

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