前回と重複する内容のようですが、本当の最後のお話です。
肝臓内科病棟で、働いていたころに看ていた患者様は、
始まりは脂肪肝でしたが、最期は肝臓がんに、肝硬変になっていました。
ここでは、脂肪肝の悪いほうの最期「肝硬変」について、お伝えします。
- 脂肪肝と診断されたのは、40代後
- お仕事は、タクシーの運転手(夜勤もあり、生活は不規則)
- 職場の定期健康診断でコレステロール、中性脂肪が高い
- 腹囲測定で88cm体重のわりにお腹が出ていて、見た目はぽっちゃり
健診の結果「病院で再検査してください」と通知が来て、内科のある病院を受診しました。
- 再検査(問診、体温・血圧測定、採血、腹部CT、超音波検査など)をして、その結果で、まずは内服治療を開始
- 保健師から、生活習慣の改善について指導を受けます。
- 栄養士から食事のとり方、食事の内容について指導を受けます。栄養士からの指導は、奥様も一緒に話を聞いてもらいました。家庭で調理をするのは奥様なので、Aさんと一緒に話を聞いてもらうのです。
そうして、治療が始まりました。
まずは、お薬は2週間分。
2週間後に、状況を医師に報告。
- きちんと内服できているか
- 生活習慣を変えてみているか
- どの程度運動を行えているかなど
更に2週間分内服処方を受け、真面目に服用を続けていきましたが、なかなか血液データは改善しませんでした。
悪化したわけでもなく、数値はそうそう簡単には変化しなかったのです。
「病院に行っても薬が効いているのか、効いていないのか。よくわからない薬を出されて。別にどこも痛くもかゆくもない。これ、病院いく意味ある?面倒だな、行くのをやめよう」
変化しない血液データに、Aさんは病院にいくことを勝手にやめてしまったのです。
また、次の年の健診でも、同じように診断されましたが、病院には行かず、生活習慣を変えようともしませんでした。
その数年後、60代半ば過ぎのことです。健診では、相変わらず血液検査で引っ掛かり、更には肝機能の数字も悪くなってきました。血圧も高くなり「いよいよ、病院に行かないとな」と思ったそうです。
なぜなら、体がとてもだるくなり、少し動くだけで疲れやすくなり、腹囲は96cmになり、体重も増えて動くたびに息切れします。
脚の浮腫みも出てきて、なんだか皮膚が硬く黒っぽくなってきました。それに、痒みもあるのです。
覚悟を決めて肝臓内科を受診
肝機能、中性脂肪、コレステロール、血圧の数値も高いので、この時は最初に処方された薬とは比較にならないほどのたくさんのお薬を処方されました。
医師には、真面目に治療しないと命に関わるよと、脅しのような注意を受けて、今度こそ真面目に治療しよう!と心に決めたそうですが、それも長くは続きませんでした。
高脂血症の薬、血圧を下げる薬、足のむくみを取るための利尿剤を処方され、最初は飲んでいましたが、足のむくみが取れて、体が少し楽になるとまた、病院には行かなくなりました。
そういうことを繰り返して、次に病院に来たときは肌の色は黄色いとも、黒いとも言えるような色で、とても辛そうな表情をしていました。お腹はパンパンに張って、まるで出産直前の妊婦さんのようだったのです。
足は浮腫んで腫れていましたし、ゴワゴワ、ガサガサした像のような肌で乾燥しています。
足が腫れているので、普通の靴は履けず大き目のサンダルを履いていました。「履物はこれ(スリッパのようなサンダル)しか履けなくなった」とAさんは、話していました。
この時は、私は病棟勤務でしたので、外来での様子は分かりませんが、即入院と言われて病棟に来たそうです。診断名は肝硬変でした。
この記事の目次
肝硬変の治療
入院したら、内服(薬物)治療と、点滴治療、運動療法に、食事療法をします。血液データ次第では、逆に安静にしなければいけないこともありますが、負担にならない程度にリハビリは行います。
毎日、同じことを繰り返して、制限に次ぐ制限で、病院に閉じ込められた気分になりながら、ただただ生活する
それが、治療です。来る日も来る日も同じことを繰り返しているだけ。
食事も制限があるので、病院食のみです。間食はなし。
⇒当たり前です。治療の為に入院しているのですから、間食やおやつはありません。
ただ、病状としてたんぱく質が減り、低栄養になることで、肝性脳症を引き起こすことがあります。
そのため、脳症を抑える為の治療薬として毎食後にアミノレバンという粉末を水に溶かして飲みます。
毎回200mLのプロテインのような飲み物です。毎回このお薬を「甘くて美味しい」と楽しみにしている人もいましたが
Aさんは、苦手だったようで、毎回配薬するたびに嫌な顔をして、必死に飲んでいたのを覚えています。飲むと「お腹がいっぱいになるから、ご飯が食べられなくなる。」とも言っていました。
それに、腹水が溜まるので、お腹に太い針を刺して水を抜く腹水穿刺をしたり。
とにかく、治療と名の付くものは、ほぼ「対症療法」です。
症状の一つ一つに、その時、その時で対応する。
根本的な治療は出来ないのです。そうしてAさんは、病棟で亡くなりました。
脂肪肝と初めて診断されてから20年ほど経っていました。
脂肪肝は息の長い病気です。症状も痛みも何も無いので、その病気が在るのか無いのかもわからないのです。
しかし、生活習慣を改善するだけで治ることもある病気です。
甘くみていると、痛い目をみるけど、しっかりと向き合い改善していくのが必要だと感じました。
皆さんもご自身の体が不調になったり、気になったりした場合はなるべく受診することをお勧めします。
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この記事を書いた人
看護師:栗巣正子
<経歴>
看護師歴 23年
大阪府堺市で、50床~2000床の病院勤務(内科、外科、手術室、整形外科、療養病棟)。
離婚後、鹿児島県鹿屋市にて、老人保健施設、透析専門クリニックに勤務
大手生命保険会社に、営業主任として3年勤めた後、地域密着型の内科総合病院に17年(介護保険病棟、療養病棟、急性期病棟、心臓内科、腎臓内科、肝臓内科、消化器内科、呼吸器内科、腹膜透析、血液透析、外来、救急外来、訪問看護)勤める。
現在は、派遣ナース、非常勤での健診スタッフ、訪問看護指示書作成等の委託業務、ナース家政婦登録
<資格>
正看護師/普通自動車免許/大型自動車免許/けん引免許/たん吸引指導者/ペットセーバー/労災ホームヘルパー(A)