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僻地医療① 医療体制と緊急時の対応

移住先を決める際に医療事情については確認しておきたい点です。
なぜなら人生の終末には誰もが医療のお世話になるからです。

田舎暮らしに憧れる方は多い傾向にあり離島、へき地の医療体制についてまとめてみました。

この記事の目次

1.オンライン診療について

オンライン診療とは、スマートフォンやタブレット、パソコン等を用いて、病院の予約から決済までをインターネット上で行う診察・治療方法です。

最初に離島、へき地医療に欠かせないオンライン診療について理解を深めていきたいと思います。

僻地医療① 医療体制と緊急時の対応

(1)普及の背景

2019年度の日本の医師数は人口1000人当たり2.3人です。

これはOECD(経済協力開発機構)に加盟する38ヶ国の先進国の中で一番少ない結果になっていますが、2030年には人口1000人当たり3.0人に増加する見込みです。

医師数は少しずつ増加をしているものの都心部に集中してしまう為、地方の医師不足は解消できないのが課題となっています。

ましてや離島やへき地は深刻な医師不足です。

そこで解決策の手段として普及を推進しているのがオンライン診療です。

約20年以上前に遠隔診療という形であったものの活用は限定的で普及は進みませんでした。

2015年に遠隔診療は診療報酬が改訂になるタイミングでオンライン診療として名称を変えます。

しかしデメリット面、リスク面が注目され積極的な活用が出来ていない現状でした。
ここ数年は新型コロナ感染症の拡大と共に感染防止対策の一つとしてオンライン診療の普及率が増加します。

オンライン診療は診療報酬が対面診察より安いという医療機関側のデメリットがあったのですが、法が改訂し更に普及が進んでいく見込みです。

doctor

(2)メリット

  1. 来院が難しい場合でも自宅で診察が受けられる。
  2. 移住地を問わずに全国の医療機関を受診できる。
  3. 待ち時間の必要がない、薬の郵送をしてもらえる。
  4. 感染症対策になる。
  5. スマートフォンで予約から決済までが可能。

(3)デメリット

  1. 対応が難しい病気もある。
  2. 医師が聴診、触診出来ない。
  3. 尿・血液検査やレントゲン撮影などの各種検査が出来ない。
  4. 医師がわずかな変化や症状を見逃してしまうリスクがある。
  5. 患者側が症状や違和感を医師に詳細に伝える必要がある。
  6. 急病の場合は対応が難しい。

(4)オンライン診療までの準備

  1. オンライン診療をしている診療所を探す。
    厚労省のホームページを確認するか、元々受診している病院で引っ越してもオンライン診療が可能か問い合わせる。
  2. 自宅のインターネット環境を整える。
  3. オンライン診療用のアプリをダウンロードする。
  4. 電話やインターネットでオンライン診療の予約を行う。

以上がオンライン診療を受ける心構えと準備です。

離島やへき地はネット環境が不安定な場所にあるので確認が必要です。

また、今後もAIの発展と共に医療サポート体制の変化が予測されます。
ご自身でも情報収集をされることをご提案します。

2.受診手段について

(1)巡回診療車(モバイルクリニック)

オンライン診療の機能や医療機器を搭載した専用の巡回車両の事です。

簡易ベッド、心電図モニター、血糖値や血圧の測定器、脈拍数と動脈血液の酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターなどの医療機器や、AED(自動体外式除細動器)が搭載されています。

これは病院外来の標準的な装備でもあり、言葉の通り診察室が移動しているイメージです。

この診療車には運転手、看護師が乗り込みます。
地域によっては医師も同乗しているところもあるようです。

そして患者宅、または指定の場所に出向き、医療機関に残った医師とオンライン診療を行う事が出来ます。

(2)巡回診療船

日本で唯一の診療船は瀬戸内海の島嶼部を巡回し健診事業を中心に診療を行っています。

岡山、広島、香川、愛媛各県の瀬戸内海に浮かぶ60余の島々を巡回しています。

心電図等の生理検査、超音波検査装置、単純X線、透視装置等の医療機器が装備され、乳がんや胃がん、肺がん、子宮がんなどのがん検診も実施されています。

3.緊急時の受診対応について

へき地における救急医療は高度医療機関までの道のりが遠く不安定です。

その状態で長時間患者を搬送しなければならないことなどが課題にあります。

それを解消するための手段として以下の二つの方法があります。

(1)ドクターヘリ

doctor-copter

ドクターヘリは「医師をいち早く救急現場に連れていくヘリコプター」のことを言います。

自分で呼ぶことは出来ません。
まずは救急車119番を要請する事になります。

ドクターヘリの出動基準

  • 消防本部指令室が必要と判断した場合
  • 現場で救急隊が傷病者を見て必要と判断した場合

救急車とドクターヘリが合流する場所にそれぞれが搬送、出動し合流時点で医師は救急車の中で迅速に初期治療を開始し治療を行いながら状態にあった適切な医療機関に搬送する。という流れになっています。

また、ドクターヘリには医療機関から別の医療機関へ患者を運ぶ「施設間搬送」も行っています。
必要に応じて専門病院へ搬送する為です。

ドクターヘリは2022年4月現在、全国47都道府県に56機が配備されています。

(2)医療用ジェット(メディカルジェット)

ドクターヘリの場合、カバー出来る範囲は最長でも100kmほどと言われており、広大な北海道では搬送が出来ない場合もあります。

この問題を解決する為に2017年からこの医療用ジェットは北海道で運用が始まりました。

今後、北海道以外の離島やへき地でも導入される事が期待されています。

4.おわりに

日本は国民皆保険制度があり、医師数は世界最下位だとしても、どこに住んでも医療が受けられるという最大のメリットがあります。

へき地、離島と聞くと最先端な医療からかけ離れているイメージがあるかもしれませんが

オンライン診療をはじめとする離島、へき地医療は今後も整備が進むとみられ、医療格差が少しずつ縮まるのではないかと感じています。

次回は緊急対応を余儀なくされる病状などについてお伝えします。


この記事を書いた人

看護師:郷堀有里夏

郷堀有里夏

<プロフィール>

看護師経験30年。急性期病棟やICUを10年経験した後、施設看護や訪問看護、ケアマネジャーとして多くの介護を必要とする方々やそのご家族と関わる。

県外で勤務していた頃、母親が介護状態となり地元へ帰省する。

仕事と介護と自分の人生に悩んでいた頃、認知科学を学ぶ。

学びを通してわだかまりのあった親子間や家族間の葛藤を解消し、介護中に修復する事が出来た。そして、母親を施設から引き取り家族と共に在宅看取りを行うことが出来た。

自身の経験を通して、「健やかに自分らしく生きること」や「安心して介護や看取りが行える環境づくり」が重要だと感じ、心の介護専門家として講座やお話会を通じ情報を提供している。

<経歴、職歴>

(一社)日本ナースオーブ所属 Wellnessナース

看護師経験30年(訪問看護管理者、施設看護、介護支援専門員、救急センター、ICU)

保険外自費サポート ひかりハートケア登録ナース

<講座>

親にイライラしない介護コミュニケーション/ウェルネス講座

<その他の活動>

心から看る介護と認知症のお話会

後悔しない親の介護 / ブログ

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著者の Facebook
https://www.facebook.com/yurina.gohori/

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