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僻地医療② 緊急対応を余儀なくされる病状
離島、へき地は外科的手術などの専門的な治療をする事が出来ない為、緊急の場合は第一回目の記事、緊急時対応の手段で説明した救急車やドクターヘリで搬送されます。 今…
病院のお世話になった時、治療費や入院費のことが気にかかる方が多いと思います。離島へき地となると交通費を考慮する必要があります。搬送にかかる費用なども気になるところです。今回は費用についてまとめてみました。
この記事の目次
1、医療費控除の目的
医療費控除についてご存知でしょうか。
医療技術の進歩により、治療費や手術費用が高額になっている傾向にあります。重篤な病気の場合は長期間の治療が必要でありこの点も高額になっている理由の一つです。
医療費控除の目的は
・治療される方やその御家族の経済的な負担を軽減する事
・安心して必要な医療を受けることが出来るようにする事
とされています。
医療費控除とは個人が支払った医療費を一部控除する制度です。
自分や扶養している家族の医療費のうち一定の範囲内で支払った金額を控除する事ができます。
1年間にかかった医療費が10万円を超えた場合(総所得200万円以下の人は所得額の5%)に対象となり、超過額が所得控除されます。
2、医療費の負担軽減を図る方法
(1)医療費控除の申請が可能なもの
①交通費
・通常必要な病院までの交通費(バス、電車、船、飛行機)
遠方の病院でないと治療が出来ないという事が条件です。
・医師の送迎費(訪問診療などの交通費)
・タクシー代(緊急性がある場合に限る)
対象となるのは原則として本人の交通費ですが、以下の付き添いの場合は控除対象となります。
・小さいお子さんに付き添う場合
・高齢者の方に付き添いが必要な場合
バスや電車の場合は領収書が取れない場合が多いと予測される為、年月日、区間、金額を一覧にして書いておけば、それが領収書の代わりになりますので作成されることをお勧めします。
②診療・治療費
・医師、歯科医による診療費、治療費
・あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費用
③入院費
・手術費
・検査費
・食事代
・看護料(保健師、看護師、准看護師による療養上の世話を受けるための費用)
・部屋代
④医療器具購入費
通常は対象外ですが医師の指示で購入した眼鏡、補聴器は控除の対象です。他にも車椅子、松葉杖、歩行器も対象になります。
⑤子供の歯列矯正費用
⑥介護保険の対象となる介護費用
訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリテーション、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの介護サービス費、食費、住居費
6か月以上の寝たきりで医師の治療を受けており、おむつを使う必要があると医師が判断した場合。
申請の際は医師によりオムツ使用証明書を発行される必要があります。
⑦医薬品の購入
・医師の処方箋をもとに購入した医薬品
・セルフメディテーション税制
セルフメディケーションは自主服薬の事を言います。
薬局などで処方せんがなくても購入できる一般用医薬品(OTC医薬品)を利用しながら病気を予防し、体調を管理する事を意味します。
風邪のような症状が出た時に市販の風邪薬を飲んで症状の悪化を抑えることもセルフメディケーションです。
OTC医薬品の購入費用が高額になった場合、条件を満たしていれば医療費控除の特例として受けられる制度ですが、医療費控除とセルフメディケーション税制を両方同時に利用することは出来ません。
全てのOTC医薬品がセルフメディケーションの対象となるのではなく、厚生労働省が指定している特定の成分薬効が含まれる薬のみが対象医薬品に該当します。
厚生労働省のセルフメディケーション税制について参照してください。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について
年間で1万2千円以上購入した場合に利用が可能です。
(2)助成制度を利用する
離島、島嶼部などでは交通費の負担軽減の為に妊婦健診等の支援、透析患者通院支援、生殖補助医療を受ける夫婦、がん患者、指定難病患者、小児慢性特定疾病児童など予算の範囲内で船賃・宿泊費の一部を助成している地域があります。
助成の内容は地域によって異なる場合がありますので確認をされてご利用ください。
宿泊費は医療費控除の対象にはならない為、助成制度を活用されることをお勧めします。
(3)無料低額医療制度とは
生活保護制度では医療費は無料ですが、その基準に満たない生活に困窮している人、病気や障害の為に仕事が出来ない、失業で収入が減った事で医療費が支払えない人を対象にした事業を言います。
対象となる人の医療費を医療機関が負担することで、無料または低額で診療を受けられるというものです。
全ての医療機関でこの制度を取り入れていないので確認が必要です。
病院には相談室が設置されており、医療ソーシャルワーカーなどが相談にのってくれますので、費用軽減や支払い方法、支払いが困難な場合は相談してみましょう。
3、搬送費について
第一回目の記事で緊急時の搬送について説明いたしました。ドクターヘリの費用についてまとめています。
ドクターヘリは自治体からの補助などで運営されており基本的には無料です。搬送費用は国や自治体から支払われます。
搬送費は無料ですが以下の場合、料金がかかります。
ドクターヘリはすべての都道県が所有している訳ではなく周辺の自治体と連携して運営している場合があります。
ドクターヘリを所有していない県は、周辺の県に依頼をすることは可能ですが、共同運航の締結をしていないと搬送費が請求されます。
その他の料金はドクターヘリにはもちろん医師が同乗しています。搬送中に医療行為を行った場合は費用が発生します。これは診療費となりますので医療費控除の対象となります。
4、まとめ
歯科受診などは一度治療が始まると何度も通院する事が予測されます。
場所によっては飛行機で通院する場合もあるそうです。
住む場所で医療にかかるお金は違ってきますが、医療費控除など様々な制度があるという点を覚えておいて、必要な医療を受けるようにしたいものです。
また、医療を受ける事が大変な地域は近くに病院がない事への不安があるかもしれませんが、医療を受けにくいほど健康への意識が高まったという事例もあります。
2007年、北海道の夕張市は財政破綻し公立病院がなくなりました。
その後、住民の方々は病院へ容易に受診出来なくなり自分の健康は自身で管理するという考え方になったとその当時の医師が振り返りをされています。
自分で自分の心と身体を理解出来るようにセルフケアへの意識も高めていきたいですね。
次回は病院に頼らない離島、へき地の生活の心得についてお伝えします。
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この記事を書いた人
郷堀有里夏
<プロフィール>
看護師経験30年。急性期病棟やICUを10年経験した後、施設看護や訪問看護、ケアマネジャーとして多くの介護を必要とする方々やそのご家族と関わる。
県外で勤務していた頃、母親が介護状態となり地元へ帰省する。
仕事と介護と自分の人生に悩んでいた頃、認知科学を学ぶ。
学びを通してわだかまりのあった親子間や家族間の葛藤を解消し、介護中に修復する事が出来た。そして、母親を施設から引き取り家族と共に在宅看取りを行うことが出来た。
自身の経験を通して、「健やかに自分らしく生きること」や「安心して介護や看取りが行える環境づくり」が重要だと感じ、心の介護専門家として講座やお話会を通じ情報を提供している。
<経歴、職歴>
(一社)日本ナースオーブ所属 Wellnessナース
看護師経験30年(訪問看護管理者、施設看護、介護支援専門員、救急センター、ICU)
保険外自費サポート ひかりハートケア登録ナース
<講座>
親にイライラしない介護コミュニケーション/ウェルネス講座
<その他の活動>
心から看る介護と認知症のお話会
後悔しない親の介護 / ブログ
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