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不眠症② 「眠いけど眠れない」からの脱出法

睡眠②不眠症

みなさんは「眠いけど眠れない」経験がありませんか?

仕事で疲れて体も心もくたくたで泥のように眠れるはず、と思って布団に入ったのに眠れない。明日も忙しいのにと思うとますます眠れなくなった、という経験のある方も少なくないと思います。睡眠にまつわる問題を、睡眠障害と言います。睡眠障害の種類は60種類を越えるとも言われています。その中でも頻度の高い不眠症についてお伝えします。

この記事の目次

1.不眠症について

不眠症は、睡眠障害より心身に不調をきたす病気です。

日中の倦怠感や意欲・集中力の低下、抑うつ、頭痛、めまい、食欲低下などの不調が出現し、日常生活に影響を及ぼします。

不眠は、多くの方が体験するものですが、大部分の方は自然に眠れるようになります。

大切な面談があるとき、試験や試合の前日など、心配事があるときだけでなく、旅行など楽しみごとがあっても眠れなくなることがあります。

旅先などで寝具が変わっても眠れない方があるかも知れません。様々な原因がありますが、心配事が解消し、環境も元に戻れば、通常数日から数週のうちに眠れるようになります。

しかし、一旦不眠症状が慢性化すると、適切な治療を受けないと回復しにくくなります。

不眠が続くと夜が訪れることに不安を感じるようになり、眠れないことへの恐怖感がより心身を緊張させるため、さらに眠れなくなるという悪循環に陥ります

夜間の不眠が続き、日中に心身の不調を自覚して生活の質が低下するようになると、不眠症と診断されます。

①不眠症の動向

入眠障害は成人すべての年齢層で出現しますが、中途覚醒や早期覚醒では中高年以上の割合が増加します。これには加齢による生理的変化も影響しています。

厚生労働省のe-ヘルスネットによると、一般人の30~40%が何らかの不眠症状を有しているそうです。そのうち3ヶ月以上不眠症が続く慢性不眠症は約10%です。

日本の成人の約5%は、不眠のため睡眠薬を服用しています。

②不眠症チェックリスト

自分が不眠症かどうか気になる方は、不眠症チェックリスト(アテネ不眠尺度)があります。

これは、世界保健機関(WHO)による「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」によって作成された世界標準の判定方法です。

不眠症の症状を正確に把握することで、治療方法が選択でき、その効果についても評価することができます。

不眠症チェックリストはこちら→  https://x.gd/AIa6l

2.不眠症の種類

不眠症の種類は、睡眠のどの部分で問題があるかによって分類されています。

  • ①入眠困難:なかなか寝付けない

寝付きが悪く、眠りに入るのに30分~1時間以上かかります。

  • ②中途覚醒:眠っても途中で目が覚める

入眠できても眠りが浅く、眠りについた後も、夜中に何度も目が覚めてしまいます。

眠った感じがせず、身体の疲れがとれません。

  • ③早期覚醒:早くに目が覚める 

起きたい時間より早く、または普通の起床時間より30分以上早く目が覚め、その後再び眠ることができなくなります。

睡眠時間が不足するため、日中の生活に影響を生じます。
人, 少年, 若い, 男 が含まれている画像

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3.不眠症の原因

不眠症を起こす要因には以下のことが考えられます。

  • ①精神的ストレス 

心配事や不安、気分の落ち込みなど

  • ②内服薬によるもの

普段飲んでいる薬の中には、抗パーキンソン病薬、降圧剤、副腎皮質ステロイドなど、不眠症になりやすいものがあります。

  • ③症状によるもの

痛み、かゆみ、咳、呼吸困難、動悸、頻尿などにより睡眠が妨げられることがあります。

  • ④疾患によるもの

循環器疾患(高血圧・心臓病など)、呼吸器疾患(肺炎・喘息・慢性閉塞性肺疾患など)、

泌尿器系疾患(前立腺肥大など)、がん、神経疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)、脳疾患(脳血管障害、脳腫瘍、胴部外傷など)、精神科疾患(うつ病や統合失調症など)が影響します。

  • ⑤その他の睡眠障害

睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群など、睡眠に伴って呼吸や足を中心とする皮膚の感覚異常などにより、不眠症状が出現することもあります。

  • ⑥生活リズムの乱れや環境

交代勤務や時差など、生活リズムの乱れや運動不足などが影響します。

また、寝室の温度や照明、騒音によっても眠りにくくなります。

  • ⑦加齢によるもの

加齢によって体内時計が変化し、眠りが全般的に浅くなる傾向があります。テーブル, 座る, 食品 が含まれている画像

4.不眠症の治療法

不眠症の治療には、睡眠薬の服用と認知行動療法があります。

市販の睡眠剤もありますが、不眠症には疾患や薬の作用による影響など様々な原因があります。症状にあった薬の選択をするためにも、医療機関を受診して医師から処方を受けることをお勧めします。

睡眠薬は作用機序(薬の効果のメカニズム)によって、大きく3つのタイプに分けられます。

①GABA受容体作用薬

従来から広く使われているタイプです。

脳の興奮を抑制するGABA(ギャバ:ガンマアミノ酪酸)という神経伝達物質の働きを強めるため、鎮静や抗不安効果により催眠作用があると考えられています。

ベンゾジアゼピンと非ベンゾジアゼピンがあります。

ふらつきなどの副作用が生じやすく、依存性や耐性もあります。

ベンゾジアゼピン商品名:ハルシオン、レンドルミン、サイレース

非ベンゾジアゼピン商品名:マイスリー、アモバン、ルネスタ

②メラトニン受容体作用薬

睡眠リズムを調整するメラトニンの受容体を刺激することで、体内時計を整えて睡眠の促進と睡眠リズムの改善を行います。

副作用が少なく依存性や耐性も極めて低いですが、速効性に欠きます。

商品名:ロゼレム、ラメルテオン

③オキシトシン受容体拮抗薬

覚醒を促進するオキシトシンの作用を抑えて、睡眠を促します。

副作用、依存性や耐性が極めて低く、より自然な睡眠を誘導できます。

商品名:デエビゴ、べルソムラ

睡眠薬は、突然中止することによって症状が悪化する場合もあるため中止のタイミングにも注意が必要です。単に眠れるようになっただけではなく、日中症状(眠気や疲れやすさ、不安やイライラの有無など)が改善されていることが重要です。

お薬の変更や減量、中止の判断も、必ず医師と相談してください。

机の上に置かれたキーボード

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認知行動療法とは、睡眠に関する個人の考え方や行動を改善し、健康的な睡眠週間を身につけていくことをいいます。

「なぜ眠れないのか」自分の睡眠状況を見直し、不眠の要因となる自分の考え方や行動パターンを振り返り改善することによって、睡眠に関する習慣をより良いものにしていきます。

これにより、睡眠薬減量や精神症状に伴う不眠症の改善が期待されています。

睡眠日記をつける、眠くなってから就寝する、就寝前のリラクゼーションなどがあります。

認知行動療法は精神科や心療内科、睡眠外来で受けることができます。

5.まとめ

不眠は多くの方が体験しますが、日常生活に影響を及ぼすようになると不眠症という病気になます。不眠症かな?と思ったら早めに受診し、医師に相談することで慢性化しないようにしましょう。自分の睡眠パターンを知り、生活リズムを整えることで不眠症にならないようにしたいものです。

「心地よく眠る」ための工夫については、また別の回でお伝えします。

参考資料

厚生労働省 eヘルスネット 不眠症 

はれそら

柳沢正史、快眠法の前に今さら聞けない睡眠の超基本、朝日新聞出版、2024 

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