目次

高齢者によくある症状①発熱時に気を付けること

2024年現在、日本の全人口の内、約30%が65歳以上の方です。

日本は1970年から高齢化社会に入り、徐々に高齢化率は上昇しています。
来年2025年には3人に1人が65歳以上の方となる見込みです。

※世界保健機関(WHO)では高齢者を65歳以上の方と定義しているため、コラム『高齢者によくある症状』では以下「高齢者」と表記します※

このシリーズは『高齢者によくある症状』とありますが、どなたでも知っておいてよかったなと思ってもらえるような内容を検討しています。

ご本人様だけでなく、ご両親様、ご祖父母様、ご親族様、ご近所様、外出先で出会う方などにも生かしていただくと嬉しいです。

今回のコラムでは『発熱時に気を付けること』についてお伝えいたします。

若い時は寝ていたら治ったということも、年を重ねるとそうはいかなくなることがあります。
様々な感染症が流行する現在、より一層体調管理に気を付けていきたいところです。

もし発熱してしまった時、ご参考頂ければ幸いでございます。

この記事の目次

1.発熱とはどんな状況?

(1)発熱の定義

体温計

新型ウイルス大流行をきっかけに公共施設等では「体温37.5度以上の方はご遠慮ください」と書かれた看板をよく見かけるようになりました。

これは感染症法において発熱の定義を37.5℃以上、高熱の定義を38℃以上としているためです。
ただ、高齢者は10~50歳の方と比べて平均体温が0.2℃以上低いという研究結果が出ています。
普段の体温が低いと体温の上昇に気付きにくくなり、感染症の発見が遅れる場合があります。

そのため、普段の体温より1℃以上高い状態が続いたら、いつもより体調に気を付けてください。

(2)体温の測定方法

検温、脇で体温を測る

体温計にはたくさんの種類があります。

腋の下で測定するものが一般的ですが、耳、額、口の中、体や顔の赤外線センサーなどのものがよく見かけられるようになりました。

体温はできるだけ体の深部に近い場所での測定が望ましいので、ご自宅用の体温計であれば腋の下で測定するものがお勧めです。

体温計の正しい測定の仕方はご存知でしょうか?
ただ腋の下に挟むだけではなく、下記を見直してみましょう。

体温測定時のポイント

  • 体温計のセンサーが皮膚に密着しているか
  • 測定するタイミングは大体同じ時間帯か
  • 測定する時、エアコンなど直接当たっていないか
  • 測定する場所は熱がこもっていないか、汗はかいていないか
  • 体温計の電池の残量は十分にあるか

上記の配慮をしたうえで、発熱時は1~3時間おきに測定すると熱の変動がわかります。

平常時は1日1回測定して、平熱を把握しておくのもお勧めです。

(3)発熱の原因

ウイルス、病原体

発熱は体内の炎症反応が症状として現れたものになります。
体内で菌やウイルスなどの異物が入ってしまった場合、免疫機能が活性化することで炎症反応が起こります。

つまり炎症反応は体にとって異常事態なのです。

しかし炎症反応によって発熱することは、体が正常な免疫反応を行っているため正常であるとも言えます。

高齢者の発熱の原因は?

  • 感染症
  • 膠原病(リウマチ、血管炎など) 
  • 褥瘡や怪我
  • 脱水
  • がん

発熱の原因は一つではなく複数該当することもあります。

例えば、感染症と脱水が同時に起こっている怪我から菌が入り感染症を起こっているなどが挙げられます。

ちなみに脱水は、体内の電解質バランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなることで発熱に至ります。
さらに体内の水分が少なくなることで血流が悪くなり、体に熱をため込みやすくなるため、高熱になりやすくなります。

(4)発熱時の検査

検査

医療機関を受診すると医療機器で検査をし、原因を調べることができます。

検査の基本は、体の負担が小さい検査から順に行います。

発熱した時によく用いられる検査は尿検査、唾液検査、鼻腔ぬぐい液検査血液検査、レントゲン検査などがあります。

医師は診察でいまの症状であればどの検査が妥当かと考え、検査の指示を出します。

そのため同じ発熱症状であっても、人によって検査内容が違うこともよくあります。

よくあるのが、発熱している=新型ウイルスに感染した!と考えてしまうことです。

発熱の原因によって治療法が変わるため、自己判断ではなく医療機関で検査し、適切な治療を受けましょう。

2. 発熱時に気を付けるポイント

(1)発熱以外の症状の確認

手で口元をかくす、手で口を覆う

体調が悪いなと思ったら、まず体温測定をする方は多いかと思います

体温測定した後、ご自身の体調を観察してみましょう。

観察ポイント

  • 鼻水
  • 鼻づまり
  • 喉の痛みなど風邪症状はないか
  • 痛むところはないか
  • 食事や水分は摂れそうか など

調子が悪い部位に炎症が起こっている可能性があります。

特に動けない、飲めない、息苦しい、意識が朦朧とするなどの場合は速やかに医療機関を受診しましょう。

(2)水分補給

水分補給

生きる上で水分摂取は必要不可欠なものです。

水分不足が進むと、体内の水分が足りない脱水症状を引き起こします。

軽度な脱水症状だと皮膚の乾燥や身体のだるさ程度で済み、短時間で改善できます。
しかし初期の脱水症状を見過ごしてしまい重症化してしまうと、持病の悪化、さらに昏睡やせん妄といった意識障害に至ります。

最悪の場合、死に至ることもあります。

発熱すると体内の水分を失いやすくなるため、いつも通りではなくいつも以上の水分補給が必要です。
東京都保健医療局の資料によると、脱水症を予防するためには1日1Lの水分補給が推奨されています。

まずはコップ1杯でも多く摂取するように気をつけましょう。
食事は摂れそうでなければ無理に摂る必要はありません。
ただし3日以上摂取できない期間があれば、医療機関を受診して栄養状態について相談しましょう。

(3)十分な休息

寝る、横になる

発熱すると体力を奪われてしまうため、体を十分に休めることも必要です。

不要不急な外出は控え、寒気があるときや体を温かくして休みましょう。
健康相談でよくあるのが、発熱している時は温めるの?冷やすの?という質問です。

高齢者は体温が上がりにくいため、熱が上がり切るまでお布団などで体を温めます。
熱が上がり切ったら汗がじんわり出てきますので、そのタイミングで氷枕や保冷材で首の後ろや足の付け根を冷やすと良いでしょう。

ただ、高齢者は慢性的に脱水のことが多く、汗をかきにくくなっています。
こまめに体温測定や体調確認をしながら、気持ちいい快適な環境を作りましょう。

2~3日休んでも熱が下がらない場合は、薬の調整などが必要な場合がありますので受診を検討しましょう。
7~14日以上熱が下がらなければ、精密検査が必要となることがありますので迷わず受診しましょう。

(4)人に頼る

電話をする、電話を掛ける、電話で誰かと話す

先述した通り、高齢者の発熱は重症化しやすいです。
普段身の回りのことがご自身でできる方でも、突然寝込んでしまって動けなくなることもあります。

万が一、ご自身で対応できない場合を考えて、発熱した時は周りの人に頼りましょう。
同居の方、別居のご家族様、ご近所の方、かかりつけ医、ケアマネジャーなどどなたでも結構です。
お一人暮らしでも毎日どなたかと連絡が取れていると安心です。

3. まとめ

問診

今回のコラムでは『発熱時に気を付けること』についてご紹介いたしました。

ここ数年の間、新型のウイルスや季節性のウイルスが大流行し、以前の発熱とは向き合い方が変わってきました。
高齢者は気を付ける事がとても大切ですが、過剰に気を付けすぎると心が疲弊してしまいます。

気を付けるポイントを参考に、心と身体のバランスを大切に発熱を乗り越えていただければと思います。

【参考】
内閣府 高齢化の状況
健康長寿ネット 発熱
入来正躬、小坂光男、村上 悳、村田成子「老人腋窩温の統計値」
 (国立研究開発法人 科学技術振興機構)
政府広報オンライン もしものときの救急車利用法


この記事を書いた人

冨永美紀
母親の入院で関わった看護師に心を打たれ、看護師資格を取得。
看護師の現場で、臨場の場に立ち会うことで『生死』について興味が沸く。
恩師の紹介でお寺とのご縁が結ばれ、2020年から密教塾生となり修行の世界へ。
現在は仕事と修行を両立するため岐阜県へ移住し、夫と犬2匹と自然豊かな場所で暮らす。

<経歴>
看護師歴10年
・腎臓内科、糖尿病内科、内分泌科病棟
・救急救命センター
・自由診療のクリニック
・コールセンター
・訪問看護ステーション
・家事代行業

冨永美紀

母親の入院で関わった看護師に心を打たれ、看護師資格を取得。
看護師の現場で、臨場の場に立ち会うことで『生死』について興味が沸く。
恩師の紹介でお寺とのご縁が結ばれ、2020年から密教塾生となり修行の世界へ。
現在は仕事と修行を両立するため岐阜県へ移住し、夫と犬2匹と自然豊かな場所で暮らす。

<経歴>
看護師歴10年
・腎臓内科、糖尿病内科、内分泌科病棟
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