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看護師が解説!呼吸や深呼吸の大切さについて②

呼吸や深呼吸の大切さについて②

体の機能で唯一、自分でコントロールできるのは何でしょうか。

それは呼吸です。

普段の呼吸は脳からの伝達によって無意識におこなわれていますが、状況に応じて意識的に速度、リズム、深さを変えることができます
人は忙しい時や緊張した時などは、無意識に呼吸が浅く速くなりますが、呼吸が乱れると感情、行動にも大きく影響されます。

呼吸を制する者は人生を制する」といわれるくらい大切な呼吸です。

その仕組みを知り、何をするにも最適な状態に整えていきたいですね。

この記事の目次

1.呼吸の仕組み

体は必要なエネルギーをつくるために酸素を取り入れます。
酸素と物質が結ばれてエネルギーになると、老廃物として二酸化炭素が発生します。
不必要になった二酸化炭素を吐き出して新鮮な酸素を吸い込む、というガス交換が呼吸です。

普段の呼吸は脳幹にある呼吸中枢によって無意識におこなわれていますが、呼吸は人の思考や感覚、運動を司る大脳皮質ともつながっているため、心の動きによって変化します

例えば、考え事をしている時、悩んでいる時には体は丸まり、不安や緊張によって体は足りない酸素を送るために浅くて速い呼吸になります。

背伸びをする

酸素を吸ってばかりいると、二酸化炭素が少ない状態になり血液がアルカリ性に傾いてしまいます。
その結果、細胞が正常に働くことができなくなって、頭がボーっとしたり、手先がしびれてきたりと、仕事の効率も悪くなってしまいます。

呼吸は自律神経を整える働きがあるため、吐いている時は副交感神経が優位になり、吸っている時は交感神経が優位に働きます。そのバランスによって心と体を整えることができるのです。

そう考えると、私たちの状態は呼吸次第だといえますね。

そしてもう一つ大切なのが「呼吸は鼻でする」ということです。
今はマスクをしていることも多く、無意識に口で呼吸をしているかもしれません。
しかし、口呼吸を続けているとそのうち身体に支障をきたしてしまうのです。

それでは、鼻呼吸がどれほど重要なのかを説明します。

2.鼻呼吸の重要性について

鼻には3つの役割があります。その役割によって健康な身体を保つことが出来ます。

①清浄機能

鼻は酸素を吸い込んだ時に外気から入る細菌やほこりなどの異物を鼻毛が絡め取り、体内に入るのを防いでくれます。アレルギー物質が入ってくると、くしゃみや鼻水を出して異物を排除しようと働くため、免疫力の低下を防いでくれます。

鼻をかむ女性

②空調機能

鼻から息を吸うと、空気は鼻腔の上を通り、脳の熱を冷まします。
そして、吐くときに鼻腔の下を通った空気は温められて肺に送られ全身に循環されます。

頭は冷やして足先は温めたほうが良いという「頭寒足熱」の教えは、このような鼻呼吸のメカニズムによって成り立つのではないかと思います。

③加湿機能

粘膜を潤す鼻水は、鼻腔を通る空気を加湿するために利用されます。
この湿気のおかげで体内に取り込まれる空気の湿度が保たれ、粘膜が潤うことできます。

昔は鼻水の垂れた子供が多かったですが、冬でも薄着で走り回り健康的でした。
体の機能を上手に利用して体温や湿度を調節できていたのですね。

④口呼吸の弊害

口にはそのような作用がないため口呼吸を続けていると、空気中のほこりや細菌を吸い込み、口の中や喉が乾燥して粘膜が弱くなります。弱くなった粘膜は傷つきやすいため、ウイルスや細菌に感染しやすくなります

そのほか、常に口を開けているため、口まわりや顎、頬の筋肉が緩み、しわやたるみの原因にもなります。
そうなると、見た目にも影響されてしまいます。

口呼吸

そのうち、顎の関節が弱り、じゅうぶんに噛むことができなくなります。
そうなると、消化不良を起こして栄養も吸収できなくなってしまいます。

鼻呼吸は口呼吸に比べて、前頭葉の酸素濃度が10%上昇するといいます。
前頭葉は思考を司る部位ですから、感情や行動にも影響されてしまいますね。

以前、介護施設で働く介護士さんが、いつもボーっと眠たそうにしているのを見て話を聞くと、鼻が詰まって普段から口呼吸をしているということでした。
寝つきが悪く、眠りも浅いということなので、早速鼻呼吸を勧めてみました。

まず、鼻詰まりを解決するために、鼻を蒸しタオルで温めることをしてもらいました。
蒸しタオル罨法は蒸気で血行がよくなり、粘膜のむくみも解消します
これを数日試したところ、睡眠の質も上がり、仕事の効率もあがったと話してくれました。

このように鼻呼吸と口呼吸では結果に大きな差がでてしまいます。
仕事の効率をあげるためにもぜひ、本来の呼吸機能、鼻呼吸を意識してほしいと思います。

3.呼吸の種類について

呼吸には胸式呼吸と腹式呼吸があります。
一般に知られている効果は、胸式呼吸はリフレッシュ腹式呼吸はリラックスです。

リフレッシ&とリラックス

それぞれのメカニズムを説明します。

①胸式呼吸

胸式呼吸は、自律神経の交感神経を優位にする呼吸法です。
肋骨の間にある筋肉を使い、胸を大きく広げたり狭めたりして膨らませるので肩に力が入るのを感じると思います。
胸式呼吸は素早く酸素を取り込めるというメリットがありますが、一度に多くの筋肉が使われるため疲れやすいという難点もあります。

すぐに気分をスッキリさせたい時や、集中力が必要な時などに使うと良いでしょう。

②腹式呼吸

腹式呼吸は深くゆっくりとした呼吸です。
横隔膜を大きく上下に動かして腹がふくらませ、体内に多く酸素を取り入れていきます。
体の隅々の細胞に酸素を送ることで、新陳代謝が活発になり、免疫力が高まります。

横隔膜は自律神経が集中しており、息を吐く時には副交感神経が優位に働きます。
ゆっくりとした深い呼吸は、自律神経を副交感神経に導き身体をリラックスさせることが出来るのです。

ストレス社会の現代は、交感神経が優位になりやすいため、意識的に腹式呼吸を使って吐き切ることが大切です。

私が看護や介護の現場で思い浮かぶのは、詰め所に戻ってくる職員がいつもため息をつきながら入って来る光景です。
きっと無意識のうちにため込んだ息を「吐く」ことでリラックスしているのだと思います。

腹式呼吸のやり方(日本医師会)
腹式呼吸を繰り返す(厚生労働省)

腹式呼吸のイメージ

このように、呼吸とうまく付き合うことで、心と体を望む状態に導くことが出来ます。

次に、呼吸を使った簡単な健康法をご紹介したいと思います。

4.「笑い」という簡単な呼吸法

笑う時は、意識して呼吸をコントロールしているわけではありませんが、自動的に呼吸作用が働きます。
大きい声で笑うと呼気も吸気も大きくなるため無意識に腹式呼吸になります

この「腹から笑う」という笑いは、へその下の丹田というところに力が入っているのを感じられると思います。

また、笑うと横隔膜が振動をしますが、その振動は筋肉組織、内臓組織や循環器など、身体全体に広がるため体がポカポカと温まってきます。

そして、神経系に伝わった振動は内分泌を刺激し、幸せホルモンといわれるセロトニンやエンドルフィン、やる気を高めるドーパミンなど、効果的なホルモンがバランス良く分泌されます。

私は以前、ストレスからアトピー性皮膚炎を発症したことがありますが、今考えると仕事に追われて思いっきり笑うことを忘れていたような気がします。

今は意図的に笑う「笑いの行法」を生活に取り入れて、ストレスや冷え性が解消されるようになりました。
湿疹も治まっているため、免疫力が高まっているのだと実感しています。

やり方は簡単
「あ」「い」「う」「え」「お」「ん」の順番に「あっはっはっは」「いっひっひっひ」「うっふっふっふ」「えっへっへっへ」「おっほっほっほ」「んっふっふっふ」と繰り返し3回ずつ腹の底から思いっきり笑うだけです。

最後は深呼吸を繰り返しながら、息を整えます。
なかなか大きな声を出す場所がないので、私は車の運転をする直前におこなっています。
誰かと一緒におこなうと、笑いの相乗効果が増して気分がスッキリとしますね。

笑う女性

5.まとめ

私たちは無意識に呼吸をしていますが、意識的に深い呼吸を行うことで状態を変えることができます。呼吸の仕組みとその効果に気づいたら、あとは実践するだけです。せっかく備わっている「呼吸」という機能を活かして、物事を上手く進めていきましょう。



この記事を書いた人

福井三賀子 <プロフィール> 小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。 同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。 結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。 在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。 現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。 <経歴> 看護師経験20年。 外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来) 介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム) 介護支援専門員6年 <資格> 看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター <活動> 講座「更年期は黄金期」 ブログ「幸せな更年期への道のり」 メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」 スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」

福井三賀子

<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。

結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。

在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。

<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年

<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター

<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
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