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看護師監修 介護側の食事指導③治療食を続けるコツ

栄養バランスのとれた食事は、病気の治療や回復に重要な役割を果たします。
病院や施設では、病気の悪化を防止し健康を維持・増進させるメニューを提供しています。
退院後、治療の継続が必要なため、治療食を食べる方もいます。

「在宅での治療食って難しい・・・」と感じていませんか。

今回の記事では治療食を続けるコツについてお伝えしていきます。

この記事の目次

治療食を食べる必要性

まず、治療食とはどのようなものなのでしょうか。

治療食を食べる目的は、病気の進行を遅らせるとともに、栄養状態を改善し健康な状態に近づけることです。

栄養は、もともと私たちの生命を維持する役割を持っています。
健康なときも、病気のときも、大切な栄養ですが、摂りすぎると病気を悪化させてしまう危険性があります。
そのため、病気の状態に合わせたエネルギーの調整や、栄養成分の調整が必要になってきます。

更に、病気の長い経過により別な病気を引き起こす「合併症」があります。
病気が進行しないように、合併症を起こさないように、適切な量の食事をとるために治療食を続ける必要があります。

介護側の食事指導③治療食を続けるコツ

治療食の種類

治療食は、適度なカロリーを調整しながら、バランスよく栄養を取り入れていくことが重要です。
治療食が必要な病気には、糖尿病や高血圧症、動脈硬化症、胃腸病、腎臓病、貧血、肥満などがあげられます。

特に、食事に気を付けなければならない代表的な治療食についてご紹介します。

糖尿病食

糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが少ないため、慢性的に高血糖になる病気です。
高血糖の状態がつづくと、血管が硬くなる・つまりやすくなる動脈硬化を引き起こします。
その結果、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気につながるため血糖のコントロールが必要です。
そのため、カロリーを制限して血糖の急激な上昇を防ぐ必要があります。

脂質異常食

高脂血症の治療食として提供されます。

高脂血症は、血液中に脂質(コレステロール・中性脂肪)が高くなり血管の内側にたまって心筋梗塞や脳梗塞になる可能性を高める危険のある病気です。
摂取するカロリーを控えて、大豆などの良質なたんぱく質を摂り、脂身が多いお肉(霜降り部分)や卵やレバーといった動物性脂肪分を多く含む食品を控えます。
また、高血圧になりやすいため、塩分や糖分の摂りすぎにも注意が必要です。

減塩食

高血圧は、血圧が高く、脳卒中や心臓病など多くの病気を引き起こしやすくなる病気です。

高血圧では、主に塩分を制限します。
制限する塩分について、厚生労働省では男性は1日7.5g未満・女性は1日6.5g未満を推奨されています。
塩分が少ないと味気ないと感じるひとも多いため、出汁や味噌を調味料として使い、ごま油など香りで風味を加えます。

心臓食

心臓の病気は、心臓の動きが弱まりむくみや肺に水がたまる病気です。

心臓に負担を軽くするために病状に応じて塩分を制限します。
心不全の悪化を予防するため、水分の制限する場合もあります。

腎臓食

腎臓の機能が、低下して不要な老廃物を排出することができなくなる病気です。

塩分制限、低たんぱく、高エネルギー食を基本とします。
腎臓病の程度によっては、水分とカリウムも制限します。

治療食を続けるコツは、食事を楽しみにしてもらうことです。
治療食は、病気の進行を予防し、健康な状態へ近づけるために必要な習慣です。

退院前に、栄養士から食事指導を受けてメニューを説明される場合がありますが、実際どんなものを作ったらいいか悩むと思います。

治療食だからと言って、個別に調理する必要はなく、ご家族の分と一緒に作って制限される食材を取り除いたり代わりの食材を加えたり、味付けを変えたりすることでつくりやすくなります。
また、ほかのご家族と同じものを食べるということはご本人にとって満足感につながります。
更に、病気への特別感がなく気を使わないため純粋に食事を楽しめる時間になります。

介護側の食事指導③治療食を続けるコツ

治療食を続けるコツ

楽しみを取り入れる

食べる楽しみを持てるように、旬の食べ物を取り入れて楽しく続けることができます。
季節の行事の時には、家族で集まるきっかけにもなり食事を食べる楽しみが増えます。

デザートの適切な利用

病気や症状を改善するために必要な治療食ですが、治療食を食べていても「デザートを食べたい」と希望される方もいます。
デザートも治療食の一部として選択できますが、糖分や脂肪分が少なく、栄養価が高いものを選ぶことが重要です。

①食べる量が一定の方の場合

フルーツを使ったデザートを取り入れると、ビタミンやミネラルを含んでいるため栄養補給として十分な役割を果たします。

②食べる量が少ない方の場合

プリンやヨーグルトなどの乳製品や甘味類は少量でも高カロリー・高たんぱくのため、食欲が落ちている場合や加齢による消化・吸収能力が低下した方に効率よく栄養を補助してくれます。

③デザートの糖分に注意する

デザートは糖分が多く含まれる場合があり、糖尿病など血糖値の上昇を抑えるために糖分を制限する必要がある場合には注意が必要です。

介護側の食事指導③治療食を続けるコツ

デザートを取り入れる場合は主治医へ相談し量や回数を決めていきましょう。

デザートは食事中に取り入れることができなかった栄養素を補うだけでなく食事の楽しみとしての役割があります。

治療食は病気が進行しないために必要な食事ですが制限されることでストレスになることがあるため、好きなデザートを取り入れることで気分転換やリラックスの役割を担っています。

効果的な治療を期待するためには、適切なバランスを保つようにして、デザートを可能な限り取り入れることをおすすめします。

まとめ

病気の進行の予防のために治療食を食べることは必要ですが、必要以上に制限することはストレスにつながり逆効果です。
食事を作るのも治療食を続けるのも、毎日のことですから適度におたのしみを作りつつ、ご自身にも負担がかからないように調理を工夫していってください。


この記事を書いた人

看護師:渡邉加代子

渡邉 加代子

【プロフィール】

看護師歴24年目。
これまで急性期(整形外科・外科・脳外科・内科・循環器)病棟での勤務を経験。
2016年に現在の職場に転職し、回復期リハビリテーション病棟は配属となる。
2019年から栄養サポートチームに所属し、各専門職と協力して週1回、入院患者様の栄養ケアを行っている。
今後は、退院先での適切な栄養ケアが継続できるようにパンフレットの作成や地域高齢者を抱えるご家族への栄養相談や講座の開催を考えている。

【所属】

一般社団法人 日本ナースオーブ所属 ウェルネスナース

【執筆】

食と健康について考えるブログ/note

【講座】

Wellnessチャートで賢くやせる/ウェルネス講座

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