在宅介護はご本人様・ご家族様・訪問する医療者、介護者が快適に安心して動けるレイアウトが必要です。
最後に在宅介護に適したレイアウトの一例を図にしておりますので、ご参照下さい。
この記事の目次
1.介護の部屋を決める要は介護ベッド
部屋のレイアウトを決める要は介護ベッドです。
寝起きをされる介護ベッドを中心として様々な医療機器・福祉用具の配置が決まります。
介護ベッドの標準サイズは 91cm×191cm です。
身長によって適したベッドサイズがありますので、下記の図をご参照ください。
必要なスペースは、畳1畳よりやや大きいスペースが目安となります。
また、介護ベッドは組み立て式ですので、福祉用具業者が1時間程度で組み立てられます。
介護ベッドは部屋の真ん中が良いでしょう。
ベッド周囲に必要な医療機器・福祉用具を設置することになります。
またご本人様への血圧や体温を測定するための身体的ケア、吸引や点滴など医療的ケア、お身体の向きを変える、クッションを背中にいれるなどの安楽ケアなど様々なケアがあります。
そのケアを行うスペースの確保が必要です。
ケアを行うにはベッドと周囲のスペースが 30cm〜45cm あれば良いでしょう。
ご家族様や介護者が右利きの場合、ベッドから向かって左側にスペースがあるとケアしやすいでしょう。
(最後に介護に適したレイアウト一例を図にしていますので、合わせてご覧ください)
住み慣れたご自宅に帰られたとはいっても、今までと状況が異なる為、不安があると思います。
ご本人様とご家族様が目線を合わせながら、お話されたり手を握ったり足をマッサージするなど、ゆっくりとした時間を過ごすと安心に繋がるでしょう。
ベッドのお近くにご家族様が座られる椅子を置いてもよいかと思います。
2.在宅介護で使用する医療機器
在宅で高度な医療処置が必要な方を想定して書いております。
想定される医療機器としては、人工呼吸器もしくは在宅酸素、吸引、点滴等です。
一般的な医療機器のサイズは下記の図となります。
またそれぞれの医療機器設置に関する注意事項を記載しますので、在宅介護されるお部屋のレイアウトを考えるうえで参考にしていただければと思います。
人工呼吸器について
人工呼吸器は大きく分けると、マスク型と気管に穴が開いている状態で使用する機器に分かれます。
マスク型の人工呼吸器本体は頭元の棚に載せて使う場合がほとんどです。
気管切開部に接続する人工呼吸器は棚やスタンドに設置する事になるでしょう。
災害などで電気が止まると呼吸に影響が出る為、他の生活電子機器とは別の独立したコンセントから電源確保することが望ましいです。
在宅酸素
在宅酸素は常に酸素を流し続ける機械です。人工呼吸器よりかなり大きな医療機器となります。
人工呼吸器の蛇腹は延長できませんが、在宅酸素の酸素チューブは延長できますので、部屋に入らなければ部屋の外に設置することも可能です。
吸引機
吸引機はご本人様の頭側に設置する必要があります。
吸引機本体設置場所は、介護者(吸引する人)が右利きの場合、右手で吸引チューブを操作するため、介護者の左側に設置すると吸引しやすいでしょう。
今まで慣れていない機器を目の前にされますと、心配になられるかもしれませんね。
通常こういった医療機器をご自宅で使用される際は、訪問医や訪問看護が関わられています。
必ずサポートしてくれますので、ご不安な事、心配な事を相談されるといいでしょう。
3.在宅介護で使用する介護福祉用具
歩行困難な方を想定すると、レイアウトを考える上で大きい福祉用具は、介護ベッド、マットレス、ベッド柵となります。
介護ベッドは約畳1畳分程のスペースが必要です。
そしてセットでマットレスが必要です。
床ずれ防止の為、エアマットと呼ばれるマットの中に空気を出し入れし、体重にかかる圧を分散するマットが必要になることもあります。
マットに空気を入れることでマットがご本人様の体の向きを自動で変えてくれる機能が付随している物もあります。
エアマットには空気の入れ替えを調整する機械がついており、本体機械はベッドの足元にひっかけるように設置します。
その他、細かな福祉用具に何が必要なのか、心配されている方も多いのではないでしょうか。
ご自宅に帰られるまでには、ケアマネージャーという自宅での生活全般のサポートをしてくださる方が決まります。
ケアマネージャーは福祉用具に関しても知識を持っているので、まずは相談してみてください。
4.訪問入浴を利用する時の必要な準備
歩行や座っていることが困難な方でも、訪問入浴というサービスを利用することで、ご自宅で入浴が可能になります。
(訪問入浴を使用されるには、必ず要介護認定を受けておくこと・医師の許可が必要となります)
訪問入浴は看護師1名、介護職員2名(内1名は男性)の計3名が訪問します。
訪問入浴に必要な専門的な物品(折りたたみ式浴槽、防水ネット、ホース、水を汲み取るポンプなど)は訪問入浴を提供する側が準備します。
折りたたみの浴槽はかなり大きく幅 70cm 高さ 50cm 長さ 200cm 程です。
訪問入浴サービスを使われるには畳2畳ほどのスペースが必要です。
もし介護されるお部屋にスペースがない場合は、防水シートで入浴スタッフが移動することも可能です。
移動は必ず複数名で安全に移乗します。
湯船につかるという習慣は日本独特の文化であり、気持ちよく、疲れがとれるほっとする時間ですね。
血液循環も良くなることから、不安や様々なストレスも解消されるでしょう。
そのような穏やかな時間を1週間に1回でも過ごして頂けたらと思います。
5.医療/介護物品を設置しておく棚
自宅で介護を行う際、医療機器・福祉用具に付随する物品が必要となります。
吸引機
吸引チューブ、吸引チューブの内腔をきれいにする為の水、アルコール綿花、ティッシュ
呼吸器
加湿のための水、気管切開部にあてるガーゼ、注射器(管が抜けないように医療者が使います)
その他おむつ、尿取りパッド、お尻拭き用のウェットティッシュ、各種軟膏など、ある程度ストックをお部屋に置いておくと、介護される方の動線が短く、動きやすくなります。
また、ご本人様の近くにはティッシュ、口腔ケア用のガーゼタオルや歯ブラシ、水分を入れたコップなどを置
いておかれると、すぐにケアできる為、良いでしょう。
おむつに関してですが、今まで使われていないオムツやパッドなどを部屋に置かれる際、例えばご親戚やご友
人が来られた時、ご本人様にとっては「恥ずかしい」というお気持ちを抱えられるでしょう。
こういった時、ケースに入れておくと、ご訪問者様が来られた時、すぐに隠せる為、ご本人様の尊厳が守られます。
そのような意味もあり、棚に入れて置かれることをおすすめします。
6.意外にもコンセントが複数個必要です
医療機器(吸引機・人工呼吸器・在宅酸素など)稼働には電源が必要であり、ベッドの高さや頭元をあげる為にも、コンセントが必要です。
またエアマット導入時にも電源で動かします。癌患者様で痛みのコントロールに点滴を使われる方もおられます。
その場合、肩からかけられる小さな機械を使用し、その充電にも使います。
人工呼吸器は電源が確保できないと、呼吸に影響するため、他の生活家電とは分けてコンセントを利用することが望ましいです。
できれば頭元と足元にコンセントがあるのが理想です。
延長コードの利用も考えられますが、足元にコードがあると、介護される方の転倒のリスクになるため、ベッド下にコードを通すなど工夫が必要です。
最近はスマートフォンご利用の方も多くおられ、常に充電される環境があると良いでしょう。
スマートフォンは緊急連絡の為もありますが、ご家族様の写真を入れ常に見ることができる、ご家族様がお仕事など外出中にご本人様とお話するために大切なものでもあります。
きっと安心に繋がりますね。
7.玄関の整理
在宅介護が始まると様々な医療・福祉関連の方が出入りすることになります。
また大きな物品をご自宅に入れるケースもあります。
主には介護ベッドですが、業者による組み立てが必要となります。
訪問入浴は、毎回折りたたみの浴槽を出し入れが必要です。
玄関は整理整頓をしておくとよいでしょう。
もし玄関自体にスペースが少ないようでしたら、ご自宅の構造によっては大きな福祉用具は窓から入れるご家庭もあります。
私も訪問入浴を行なっていた時、1階に介護のお部屋があり、窓からの出入りをさせてもらっていたご家庭がありました。
介護の部屋を考えられる時、訪問スタッフや物品をどこからご自宅に入れられるのか、考慮や相談が必要になる場合もあります。
玄関は家の出入り口であり、整理整頓しておくことでご自宅内の空気の流れもよくなります。
風通しのよい環境はご本人様もなんとなく、穏やかな雰囲気を感じておられる事が多いです。
しかし、自宅介護は介護をされる方のご負担になることもあります。
整理整頓がご負担な場合もあるでしょう。
整理整頓などは介護保険のサービスというより、自費サービスでのご利用がよいかと思われます。
次のお話で少し自費サービスに触れていきたいと思います。
8.自費の訪問サービス
今まで書いたサービスは介護・医療保険という公的保険によるサービスとなります。それには介護認定が必要となります。
しかし介護認定が決定するには最大30日程かかり、在宅へ帰宅するまで間に合わないケースもあります。
どうしても必要な介護ベッドなどは介護認定で暫定(このぐらいの認定が決定するだろうという予想)で導入することもできます。
それまでの間、看護師の資格を持った自費の訪問サービスを導入することもできます。
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介護区分に左右されず、ご家庭の状況・料金などに応じて、訪問回数や時間を決められます。例えば、レイアウトを一緒に準備する(専門的知識があるからこそ、医療機器をどのように設置すれば安全かなどがわかります)・ご家族様が遠くに居住されている場合、退院の付き添いから在宅での生活を整えることも可能です。
また同居をされている場合、ご自宅での介護生活が落ち着くまで、自費の訪問看護サービス導入するご家庭もあります。
お体の状態が安定するまで、住み込みが可能なサービスもありますので、空いているお部屋があれば寝泊まりできるようご準備いただくと、いいと思います。
ご自宅での最初の介護は慣れないことばかりかと思います。
ご本人様もご家族様も疲れが出ることや、ご不安があるでしょう。何がわからないのかがわからない、そんな状況もあるかと思います。
そういった時に、サポートできるサービスになっています。
9.最後に(レイアウト図式あり)
介護に適したレイアウトの一例を図にしました。
ご本人様が安全に過ごしやすい環境が必要ですが、同時にご家族様がいかに楽に安全に介護できるかも重要となってきます。ご参考にしていただけたらと思います。
またレンタルした福祉用具など使い勝手が悪いなどあれば相談・交換可能なものもあります。
その時はケアマネージャーや訪問医師・看護師にご相談下さい。
ご本人様・ご家族様に適したレイアウトは、安心して過ごせる事が一番重要です。
また、レイアウトに完全はなく、自宅での生活をされながら、適した環境が少しずつできあがっていくものかと思います。
ゆっくりとお部屋を整えていかれるといいでしょう。
ヘルパーさんだけでは手が足りない!という時には保険外サービスを使うのも家族の負担軽減につながります
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この記事を書いた人
山川幸江
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」