前回は遺贈寄付の4つの意義についてご紹介しました。
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遺贈寄付はここ10年間で約2倍に増加しています。
出典:NPO法人シーズによる国税庁開示請求
遺贈寄付に興味を持ったときに何から始めれば良いのでしょうか。
遺贈寄付の方法
ここでは「遺言による寄付」の流れに沿って、手順や注意点について考えていきます。
この記事の目次
遺贈寄付をするための手続き流れ
遺贈寄付を知る
遺贈寄付をする理由
- 自分の想いを未来へ伝えたい
- 自分が生きた証を後世に残したい
- 自分が築いた財産を自分が望む使い道に利用してほしい
など、人によって様々さまざまです。遺贈寄付がどのような想いで行われ、どのような方法があるのか、まずは知ることから始めましょう。
全国レガシーギフト協会の遺贈寄付のポータルサイト「いぞう寄付の窓口」や遺贈寄付の受け入れ実績のある団体のホームページなどをご覧になるのも良い方法です。
自分の人生を振り返る
「遺贈寄付は人生最期の社会貢献」と言われています。
大切な財産を寄付するのですから、寄付先の選定は慎重にしたいものです。
自分の人生を振り返り、何に共感し、どのような活動を応援したいのかを考えましょう。
寄付先は、人生の同心円上にある活動を対象にして検討すると選びやすいようです。
遺贈寄付の情報を集める
遺贈寄付の事例を集めましょう。
共感できる事例があれば、それが自分にとって最適な遺贈寄付の形に近い可能性があります。
例えば、「遺贈寄付~最期のお金の活かし方」(星野哲 著)には様々さまざまな事例が紹介されています。
気になる団体にパンフレットを請求したり、相続セミナーに参加するのも良いでしょう。
専門家に相談する
専門家には、寄付先選定をサポートする「遺贈寄付プランナー」の役割と、遺言作成をサポートし、遺言執行(遺言に基づく相続手続き)する役割があります。
遺言執行者に知人を指定することもできますが、確実に遺贈寄付を実行するためにもプロに任せるのが良いでしょう。
寄付先を選ぶ
ボランティアやイベントに参加して、意中の団体との相性を肌で感じる方法もあります。
体力的に難しい場合は、実際に少額の寄付をして、期待どおり通りの反応なのかを確認することもできます。
数字やデータも重要ですが、感覚も大事な要素なので、楽しみながら選定されてはいかがでしょうか。
財産配分を決める
自分の保有財産を洗い出して評価額を算定し、相続人や寄付先への財産配分を検討します。
遺留分侵害の有無についてもここで確認します。ご家族のことを第一に考え、残った財産があれば遺贈寄付するくらいに考えた方が、円滑な遺贈寄付が期待できます。
一般的に、ご家族に財産配分の内容まで知らせることはありませんが、
「遺贈寄付する意思がある」
ことをご家族に伝えておく方が、後日驚かれなくて良いでしょう。
なお、不動産など金銭以外を遺贈寄付する場合は、寄付を受けてもらえるかその団体に確認しましょう。
遺言書を作成して保管する
上記④で相談した専門家のサポートにより、遺言書を作成すると円滑です。
自筆証書遺言を作成する場合でも、専門家のチェックは必ず受けましょう。
法務局による自筆証書遺言の保管制度を利用すると、紛失のリスクが避けられます。
寄付先とともに人生を歩む
寄付を決めた団体に積極的に関わることにより、さらに豊かな人生が始まります。
また、このような姿をご家族に見せることも、後日ご家族の納得感を得る有効な手段です。
なお、団体の活動に不満がある場合や気持ちの変化などにより、遺言を書き替えることも可能です。
亡くなった後に遺言が執行される
遺言者が亡くなると、遺言執行者が相続人や受遺者に対して遺言の開示を行い、遺贈の承認または放棄を確認した上うえで、遺言執行の手続きを行います。
遺言者が亡くなったことが遺言執行者に確実に伝わるように、信頼できる方に死亡通知の役割をお願いしておきましょう。
遺産の一部が寄付される
遺言執行者から受遺団体に対して財産が引き渡され、寄付が実行されます。遺言書の付言事項に、遺贈寄付をした「理由」「想い」などを記載しておくと、お金に意思を乗せて渡すことができます。
遺言は執行されてこそ意味がある
遺言は作成して終わりではなく、遺言執行がなされて初めて意思が叶かなえられます。
執行されない遺言書は、ただの紙切れです。そうならないためには、漏れなく、解釈の余地のない遺言書を作成する、信頼できる遺言執行者を指定することなどが必要です。
上記のような手順で確実に遺言が執行されるサービスを利用し、ご自身の想いを実現させましょう。
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この記事を書いた人
齋藤 弘道(さいとう ひろみち)
<プロフィール>
遺贈寄附推進機構 代表取締役
全国レガシーギフト協会 理事
信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。
遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の全国レガシーギフト協会)。
2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。
日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。