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相続における生命保険のメリット

生命保険は契約形態によって課される税金が異なることを前回お伝えしました。

今回は、相続において生命保険を利用することで得られるメリットについて考えていきます。

相続における生命保険のメリット
この記事の目次

財産の受取人の指定ができる

被相続人の財産は、遺言があればその指定どおりに配分されますが、遺言がなければ相続財産は相続人全員の共有財産となります。
そして、法定相続人全員による話し合い(遺産分割協議)によって、共有状態を解消して、個々の財産の帰属を定めます。

しかし、生命保険金は「受取人の固有の財産」であり、相続財産ではありません。

つまり、遺産分割協議の対象とはならないのです。被相続人が財産の配分を定めるには、通常は遺言を使いますが、生命保険で受取人を指定することにより、遺言を書くことなく財産の受取人の指定ができます。

死亡後すぐに受け取れる

相続財産は遺産分割協議の後に、名義変更や換金などの相続手続きを経て、各相続人の財産となりますが、通常この手続きには数ヶ月以上を要します。

これに対して、生命保険は被保険者の死亡を証明する書類(死亡診断書や除籍謄本など)を保険会社に提出するだけで、早ければ3日程度で死亡保険金を受け取ることができます。

相続が発生すると、被相続人の預貯金等は凍結されて引き出せなくなり、残された家族は当面の生活にも困ることがあります。

さらに、病院の未払い費用や葬儀費用などの出費が重なります。死亡保険金は死亡後すぐに受け取れますので、このような事態を避けることができます。

相続における生命保険のメリット

相続税の非課税限度額がある

ご存知の方も多いと思いますが、相続税の計算には「基礎控除」というものがあります。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

が相続財産の合計額から控除されます。

これとは別に、生命保険には非課税限度額があります。

500万円×法定相続人の数

です。

さきほど「生命保険金は受取人の固有の財産」だと述べましたが、相続税の計算上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。
その上で非課税限度額の制度が設けられています。

各相続人が受け取った死亡保険金の合計が、生命保険の非課税限度額より少ない場合は、全額が非課税の扱いとなります。

逆に、死亡保険金の合計が非課税限度額より多い場合は、非課税限度額を各相続人が受け取った保険金の額で按分します。

例えば、以下の場合。

被保険者逝去に伴い、3人の法定相続人がそれぞれ死亡保険金を受領しました。

Aさん:保険①にて1000万円
Bさん:保険②にて1000万円
Cさん:保険③にて500万円

相続人が3人ですから、死亡保険金の非課税限度額は

500万円×3=1500万円

となります。

この1500万円を相続人3人で、保険額にあわせて按分すると下記の表の非課税限度額のような按分となります。

相続人A相続人B相続人C評価額
生命保険①1000万円1000万円
生命保険②1000万円1000万円
生命保険③500万円500万円
生命保険金の合計1000万円1000万円500万円2500万円
非課税限度額600万円600万円300万円1500万円

なお、法定相続人以外の人が受け取った生命保険金には非課税限度額の適用はありませんので、注意が必要です。

相続における生命保険のメリット

代償分割に利用できる

相続財産には、比較的容易に分割できる現金や有価証券ばかりではなく、建物や土地など分割が難しい財産も含まれることがあります。

この時、不動産の価値が大きく、相続財産の大半を占める場合は、均等に分けることが困難になります。

不動産を共有名義にする方法もありますが、将来の管理や売却の際に、共有者の意見が合わないと大変です。

不動産を売却してお金で分ける方法では、不動産が第三者の手に渡ることになります。

そのようなときに、代償分割という方法があります。

代償分割とは、複数の相続人のうち特定の相続人が遺産を受け取る代わりに、他の相続人に対して一定の代償財産を渡す方法です。

例えば相続人がAさんとBさんとで、1000万円の土地を相続したとします。

Aさんがすべての土地を相続する代わりに、AさんはBさんに権利分の500万円を現金などで渡すという意味です。

急に500万円の現金を用意するというのはなかなか難しいケースも多いですが、生命保険があればそれを容易にします。

このように、代償財産に生命保険金を利用することで、遺産分割を容易にすることができます。

相続税の納税資金に利用できる

相続税は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に納めなければなりません。

相続財産に占める不動産の割合が高い場合、10ヶ月以内という納税期限までに不動産を売却して納税するのは大変です。

このようなときに、予め生命保険に加入しておくことで、生命保険金を相続税の納税資金として利用することが可能になります。

遺留分の対象外

遺言がある場合でも、侵害できない相続財産の取り分があり、これを遺留分と言います。

遺留分は、配偶者・子や孫・親や祖父母など、兄弟姉妹を除く法定相続人に認められた権利です。

遺言で特定の相続人に遺留分を超えて配分した場合でも、遺留分権利者(遺留分を侵害された相続人)は遺留分侵害額請求により、一定の財産を取り戻すことができます。

例1:

2人の子どもがいる夫婦で夫が逝去。夫は片方の子どもに全額の財産を渡すという遺言書を遺していた。

→相続人は妻と2人の子ども
 (妻ともう1人の子どもは遺留分を請求できる)

例2:

子どものいない夫婦で夫が逝去。遺言書はなく、夫には弟がいた。

→相続人は妻と夫の弟。
 (夫の弟に遺留分はないが、遺産分割協議でもめるリスクがある)

例3:

子どものいない夫婦で夫が逝去。遺言書があり、妻に全額相続させるとあった。夫には弟がいた。

→相続人は妻
 (夫の弟は遺留分がないので請求はできない)

しかし、生命保険金は受取人固有の財産であり、相続財産ではありませんから、原則として遺留分計算の対象外です。

どうしても特定の相続人に財産を残したい場合に、遺言だけでなく保険を活用することで、その思いを実現することができます。ただし、あまり極端な場合は、遺留分の対象となることがあります。

相続放棄しても受け取れます

被相続人の財産には、プラスの財産もマイナスの財産もありますが、マイナスの財産(債務)が多いケースもあります。

相続を単純承認した(特に何も手続きしない)場合、相続人は債務を引き継いで、借金を返すことになりますが、あまりにも債務が多額の場合は返済が困難になることも考えられます。

このような時に、家庭裁判所に相続放棄を申し立てすることにより、相続人の地位から離脱して、債務を承継しなくて済むことができます。

相続放棄すると、マイナスの財産だけでなくプラスの財産も受け取る権利を失います。

しかし、生命保険金は、相続放棄した場合でも受け取ることができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

生命保険は遺していく人の生活を支えていくだけでなく、相続においてもメリットとなりえます。
必要な保険はその方自身の状況や家族構成によってもさまざまです。


この記事を書いた人

齋藤 弘道(さいとう ひろみち) 遺贈寄附推進機構 代表取締役 全国レガシーギフト協会 理事

齋藤 弘道(さいとう ひろみち)

<プロフィール>
遺贈寄附推進機構 代表取締役
全国レガシーギフト協会 理事

信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。
遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の全国レガシーギフト協会)。
2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。
日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

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