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遺贈寄付を確実に実現する方法

前回は「遺言は執行されてこそ意味がある」と述べました。

人生の最後に残った財産から、その一部を公益的な団体へ寄付する「遺贈寄付」には、さまざまな方法があり、その代表的な方法が「遺言による寄付」です。ところが実際には、せっかくの想いが実現されないケースも多くあります。遺言を書くとき、そして書いた後の注意点について解説します。

この記事の目次

遺言書が必ず使われるようにする手続き

遺言は法的効力を発生させることが可能な文書ですが、遺言が執行されて初めて遺言者の想いが形となって実現されます。

それでは、遺言が確実に執行されるために、どのような準備をすれば良いのか、代表的な3つのポイントについて考えていきます。

1、遺言執行者の指定

遺言執行者とは、遺言書に記載された内容どおりに手続きする人です。
銀行口座の解約や不動産の名義変更、財産目録の作成や財産の引き渡し、執行結果の報告などを行う役割が与えられています。
遺言執行者は遺言書で指定することができます。
遺言執行者が指定されていると、法律により、相続人は勝手に相続財産を動かすことができません。
遺言書に非営利団体へ遺贈寄付することが記載されていれば、遺言執行者はこれを履行する義務があります。

このように、遺言執行者には強力な権限と責任が与えられているのです。遺言の執行には法律の知識も必要ですので、遺言に詳しい専門家に相談して、その専門家を指定すると良いでしょう。

2、遺言者の死亡を把握する方法

遺言書があっても、遺言者が死亡した事実を遺言執行者が把握できなければ、その遺言書は永久に使われません。
遺言者にご家族や身近な親族がいれば、亡くなったことを知ることができるでしょう。
しかし、そうでない場合は信頼できる人に、遺言執行者へ死亡連絡する役割(死亡通知人)を依頼しておくことが必要になります。
ご家族がいる場合でも、遺言書の存在や遺言執行者の連絡先を伝えておく必要があります。

また、親しい友人がいればその方にお願いしても良いのですが、同年代の方ですとその役割を果たせるかわかりません。
見守り契約(安否確認)を取り扱う専門家や専門業者もいますので、こちらに依頼する方法もあります。

遺贈寄付を確実に実現する方法

3、遺言書の保管方法

遺言執行者が遺言を執行しようとしても、「遺言書の保管場所がわからない」「遺言書を紛失した」となっては、執行できません。

公正証書遺言であれば、公証役場に保管されていますので安心です。
しかし、自筆証書遺言の場合、遺言書を自宅の本棚や引き出しなどに保管していると、肝心な時に見つからないリスクがあります。
その対策として、法務局による自筆証書遺言の保管制度があります。
保管手数料3,900円で半永久的に保管され、紛失のリスクがないのでお薦めです。
さらに、この保管制度には「通知」の機能があり、2つ目の「死亡を把握する方法」もカバーしています

実効性のある遺言とは

遺贈寄付を確実に実現する方法

遺言書の書き方にも注意が必要です。

法律の要件を満たした遺言でも、必ずしも遺言どおりに執行できるとは限りません。
法的に正しい遺言と実効性のある遺言は違うのです。

例えば、次のようなことが起こる可能性があります。

遺言書に「A銀行の預金を甲団体へ遺贈する」と記載されていたとします。

遺言作成後に、遺言者がA銀行の預金をB銀行に移した場合、甲団体へ遺贈する財産は無くなってしまいます。
A銀行の預金をA銀行が取り扱う投資信託に移した場合も、「預金」はありませんので同様の事態となります。

遺言作成後も自由に金融資産を運用しつつ遺贈寄付も実現するためには、例えば「私の金融資産の10分の1を甲団体へ遺贈する」と書く方法もあります。

このような、ちょっとした工夫が後々大きな結果となる場合がありますので、実務に詳しい専門家にご相談すると良いでしょう。

また、円滑な執行という観点では、遺言書の付言事項(法定の遺言事項以外に自由に記載できる欄)に、遺贈寄付を決めた理由やご家族への想いを記載しておくことも大切です。

信頼できる寄付先選び

遺言書の準備や内容が完璧でも、遺言を執行する時点で、財産を受け取る団体が活動休止や解散の状況では、遺言者の想いを実現することはできません。
大切な財産を受け継ぐ寄付先選びは慎重にしたいものです。信頼できる団体を見分ける方法はあるのでしょうか。

公益法人やNPO法人にも、株式会社と同じように財務諸表(活動計算書・貸借対照表・財務諸表の注記)があり、多くの団体のホームページで公開されていますので、参考にすると良いでしょう。
ただ、非営利団体の活動は財務諸表だけで評価されるものではありませんし、寄付する動機も活動内容や理念に共感する場合が多いと思います。

遺贈寄付は将来の寄付ですので、長期的に団体が存続することが求められ、そのためにはガバナンスや情報開示が重要になります。

例えば、非営利組織評価センターによる「グッドガバナンス認証団体」や信託銀行が提携している団体一覧などは、寄付先選びの参考になりそうです。


この記事を書いた人

齋藤 弘道(さいとう ひろみち) 遺贈寄附推進機構 代表取締役 全国レガシーギフト協会 理事

齋藤 弘道(さいとう ひろみち)

<プロフィール>
遺贈寄附推進機構 代表取締役
全国レガシーギフト協会 理事

信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。
遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の全国レガシーギフト協会)。
2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。
日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。


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