精神疾患を持つ方とご家族が安心して生活するための心構えがあります。
難しいと思い込まず、まずは「知る」ことから始めましょう。
それが安心へとつながっていきます。
今回は社会背景を含め、精神疾患の症状や特徴、治療についてお伝えします。
この記事の目次
1.精神疾患を持つご家族の心構え
精神疾患を持つご家族のアンケートや研究結果から、「病気・病状」、「コミュニケーション方法ついての困りごとについて多く挙がっている」という結果が出ています。
訪問看護師としてご利用者様のご家族と話していると、病気の特性によりコミュニケーションのポイントを押さえる必要があると感じています。
しかし、どのように関わったらいいのか困っていらっしゃる場合が多いです。
疾患の特徴や治療を知っていると、どのようなコミュニケーションをとればいいのか、見守ることを優先すべきなのか、受診のタイミングはいつかなどを判断することが可能になってきます。
そうするとご家族の安心へとつながっていきます。
以下になぜ安心できるのかについて説明しています。
【なぜ精神疾患の特徴と治療について知ると安心できるのか】
精神疾患とは、脳の機能的な障害や器質的な問題によって生じる精神的な疾患の総称です。
例えば、統合失調症は脳の様々な働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などが起こる病気です。統合失調症になりやすいいくつかの要因をもっている人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚で感じる緊張がきっかけとなり、発症するのではないかと考えられていますが、原因は不明です。
しかしここで大切なのは、統合失調症にはどんな症状があり、生活するのに何に困っているのか、どんな治療をしているのかを知ることです。
例えば幻聴は常にあっても、普段通り出かけられ、ご飯が食べられ、夜に眠れているのであれば、あまり困っていない可能性が大きいです。
しかし幻聴に左右され家から出られない、ご飯が食べられない、夜になっても眠れないという状態になったとしたら、精神疾患をもつ方もご家族も不安になると思います。
早めに受診をして主治医に相談する必要もあります。
つまり疾患による症状や行動・発言といった特徴、治療を知っておくと、「いつもと違う」に早く気づき、大きな不調になる前に受診し治療することができます。
結果としてご家族の安心した生活につながります。
治療については詳しく知る必要性はありませんが、症状に対してどのようなお薬を飲んでいるのかを把握すると、受診の時に主治医に伝えやすくなります。
2.精神疾患の特徴と治療について
代表的な精神疾患の症状と特徴、治療
精神疾患の分類
- 抑うつ性障害
- 双極性障害
- 不安障害
- 統合失調症
- 神経認知症
- 神経発達障害
ここでは、うつ病、パニック障害、統合失調症について取り上げます。
①うつ病
症状と特徴 | ・一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった自覚症状が続いている。 (原因と思われる問題を解決しても気分が回復せず、日常の生活に大きな支障を生じることがある。)
・表情が暗い、自分を責めてばかりいる、涙もろくなったなど、周囲からみてわかる変化。
※うつ病の精神症状に気づく前に、食欲がない、性欲がない、眠れない・過度に寝てしまうという身体の不調が現れることもある。 |
治療 | ・薬物療法は主に抗うつ薬を使用。
・心身の休養をしっかりとれるように環境を整えることが大切。 ・専門家との対話を通して進める治療(精神療法)や散歩などの軽い有酸素運動(運動療法)がうつ症状を軽減させることが知られている。 |
②パニック障害
症状と特徴 | ・突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作(パニック発作)を起こし、そのために生活に支障が出ている状態。
・パニック発作を繰り返すうちに「また発作がおくるのではないか」という予期不安。 ・発作が起きそうな場所や状況を避けるようになる広場恐怖がみられるようになる。
※心筋梗塞などの症状に似ているため、はじめは循環器や呼吸器科や消化器科を受診します。 どんなに検査をしても内科的な異常がみつからない場合、パニック障害の可能性があります。
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治療 | ・薬物療法には抗うつ剤や安定剤を使用。 (「発作をおこさない」ことが第一目標となります。)
・薬物療法と併用し行動療法(避けていた場所や状況に少しずつチャレンジ) ・認知療法(出来事に対する受け取り方や考え方を修正) ※医師や公認心理士等と相談しながら進めます。 |
③統合失調症
症状と特徴 | ・幻覚や妄想(幻覚の中でも、周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴が多くみられる。) ・意欲の低下や感情表現が少なくなることがある。
【周囲の人にもわかる統合失調症のサイン】 ・いつも不安そうで緊張している。 ・悪口を言われた。 ・いじめを受けたと訴えるが現実には何も起きていない。 等
※認知機能の障害で、日常生活における理解力が低下や、記憶力が低下して社会生活能力が低下することもある。 |
治療 | 薬物療法と心理的な治療がある。 ◆薬物療法は主に抗精神病薬を使用。
◆心理的な治療(精神療法やリハビリテーションを含む。) ・病気の自己管理の方法を身につける。 ・社会生活機能のレベル低下を防いだりする訓練を行う。
就労支援などの社会的サポートも重要。
【治療の目標】 ・幻覚や妄想などの症状を軽くする。 ・記憶や注意などの障害によって社会生活が低下するのを防ぐ。 ・回復後は再発しないように維持する。
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3.社会と精神疾患患者の近年の動向
近年では社会での受け入れが進んでいます。
それは精神疾患患者の動向に変化があるためです。
①年々患者数が増えている。
厚生労働省の「こころの病気の患者数の状況」をみると、統合失調症、気分障害、神経症性障害などの精神疾患がいずれも年々患者数が増えていることがわかります。
特にうつ病などの気分障害の患者数が増えているのは、長引く不況による労働条件の悪化や、生活不安などのストレスが原因と考えられています。
②入院期間は短くなり病院以外で過ごすことが主流に
入院患者数は過去15年間で減少傾向の一方で外来患者数は2倍以上に増加しています。
これは病床数が約2万床減少した事や平均在院日数が52.5日間短縮したことが背景にあります。
③ 病院から地域生活へ
精神保健医療福祉の改革ビジョンにおいて「地域生活中心」という理念を基軸にし、精神障害者が、地域の一員として、安心して自分らしい暮らしができるよう、医療、障害福祉・介護、社会参加、住まい、地域の助け合い、教育が包括された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を目指すことを新たな理念として明確にした、とあります。
国では精神疾患をもつ方を地域で安心して過ごせるよう、医療や福祉だけではなく、社会参加や地域の助け合いという様々な角度から支援できる体制を整えています。
4.おわりに
この記事では、まずご家族が精神疾患の症状と特徴、治療について知ることで安心した生活の一助になるご案内をしました。
社会も受け入れる体制を整えて地域で生活がしやすい環境が整ってきています。
生活する中で感じる疑問を解消し、より安心した生活ができる情報をお伝えします。
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この記事を書いた人
清水明日香
プロフィール
看護師経験23年。総合病院(消化器外科・内科、整形外科)、リハビリテーション病院(地域包括支援病棟)、老人施設で勤務。
現在は精神科訪問看護師として月に約100件の訪問をしている。
精神科訪問看護では、薬物療法などの治療が継続して受けられるようにする支援、ご利用者様やご家族の悩みや困りごとを一緒に明確にし、解決する方法を考え、行動できるように支援している。
ウェルネスナースとして女性が健康でいるための情報を発信している。
執筆・講座
「いつも疲れを感じている40代女性がセルフケアを身につけ元気を取り戻すためのお話会」/ウェルネス講座
「自分で心とからだを元気にするためのブログ」/note