健康診断で血糖値が基準値を超えている、または病院受診時に「血糖値が高い」と言われたことはありませんか?
気になっていてもどうしたら良いのか分からず、そのままになってしまっている人も多いのではないでしょうか。
この記事を読むことで、今どんな状態なのか、何が原因なのか、そして具体的に何をしたらよいか、血糖値を下げるための3つのやるべきことが分かります。
血糖値を良好に保ち、健康維持の方法を知っていきましょう。
この記事の目次
1.血糖値が高いとどうなるの?
そもそも「血糖値」とは何でしょうか?
「血糖値が高い」という状態は、「血液中のブドウ糖濃度」が正常範囲を超えている状態をいいます。
ここでは、なぜ血糖値が高くなるのか、血糖値が高いとからだにどんな影響があるのかについてお話していきます。
①なぜ血糖値が高くなるの?
血糖値が高くなる主な理由
- 食事中のブドウ糖を取りすぎている
- ブドウ糖を処理する力が弱まっている
ブドウ糖は私たちのからだにとって重要なエネルギー源のため、通常は過不足がないように体内で一定の範囲内にコントロールされています。
例えば食事をとると血液中のブドウ糖濃度は一時的に上昇します。
その後、全身のエネルギーとして消費されたり、余った分は臓器や筋肉に貯蓄されたりしながら、食事前のブドウ糖濃度にまで戻ります。
しかしブドウ糖を取りすぎている、または処理する力が弱まっていると、糖が血液中に行き場をなくし「血糖値が高くなる」のです。
②血糖値が高いとどうなるの?
血糖値が高い血液は砂糖水のようにドロドロとした状態となり、やがて全身に悪影響を及ぼします。
ドロドロ血液が長時間続くと、糖の成分が血管を劣化させ、血管の壁を硬く、ボロボロにしてしまいます(動脈硬化)。さらに、このドロドロ血液は流れが悪く淀むことで内容物がたまりはじめます。
これが血栓となり詰まりの原因になります(梗塞)。
大きな血管では心筋梗塞や脳梗塞、脳出血をひきおこします。
また、毛細血管では「糖尿病の三大合併症」を引き起こし生活の質を大きく下げてしまいます。
糖尿病の三大合併症
- 糖尿病性網膜症
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性神経障害
※高血糖の影響は全身に及びます。
2.血糖値が高くなる隠れた原因は?
血糖値が高くなる原因と聞かれたとき、あなたは何を思い浮かべたでしょうか?
実はこれはあなた個人の問題ではなく、社会的背景が大きな原因にあげられます。
ここでは「誰もが高血糖になりやすい社会」についてお話していきます。
私たちを取り巻く環境を認識することが、血糖値を下げる大きな一歩につながります。
①蔓延する多糖・多脂社会~食環境を認識する
高血糖の最大の原因は、自分のからだにとって必要以上の糖と脂をとっていることです。
- 高糖質食は血糖値を過剰に上げる。
- 高脂肪食は血糖値を下げる働きを阻害します。
現代社会では加工食品やファストフード、外食業界の発展により、高糖質で高脂質な食品が24時間簡単に手に入ります。しかし多くの人がこの危険性に気がついていないのです。
このように知らず知らずのうちに摂っているものが、血糖値を上げている可能性があるのです。
②ストレス社会~心の影響を認識する
ストレスは血糖値を上げる大きな要因のひとつです。
現代社会は仕事や生活環境によりストレスを感じる人が増えています。
ストレスケアをすることは、心だけでなくからだの病気予防と改善のために大切です。
③長寿社会~細胞老化を認識する
実は年齢とともに血糖値が高くなることはよくあります。
その理由は、加齢によりからだの細胞は老化し、糖を処理する能力が弱まるからです。
特に不摂生をしていなくても血糖値が高くなることはごく自然なことです。
しかし、自分のからだの変化を無視し、若い頃と同じ生活を続けていてはからだへの負荷が限界を超え、糖尿病を発症していくことは事実です。
実際この超高齢化社会において糖尿病患者の増加は著しく、平成30年版厚生労働省白書によると、60歳以上の3人に1人は糖尿病またはその予備軍です。さらに日本透析医学会の統計調査によると、2021年透析導入患者で最も多い原疾患は糖尿病性腎症(40.2%)で、透析導入時に最も多い年齢層は70~75歳となっています。
人生100年時代を健やかに過ごすためには、加齢によるからだの変化を察知しながら、自分の処理能力に合った生活にシフトチェンジすることが大切です。
以上のように、血糖が高いという状態は誰にでも起こる可能性があり、社会全体の課題といえます。
一生涯の健康を維持するためには「血糖値のケア」は必須です。
気付いた今がチャンス。早めのケアと予防をしていきましょう。
3.血糖値が高いと言われたらやることリスト3つ
ステップ1:生活習慣を見直す
まずは血糖値を上げる原因となった生活習慣を見直しましょう。
ここでは皆さんが陥りやすい生活パターンをあげ、改善点をお伝えしていきます。
①糖質や脂質に偏った食事
- 麺類や丼もの、カレーなどの単品メニューが多い。
- コンビニ弁当や外食をよく利用する。
- おにぎりだけ、パンだけで1食を済ませることがある。
【改善案】
糖質や脂質に偏った食事は、血糖値の急上昇を招きます。
毎食、野菜料理を1品以上取り入れることで血糖値を上げにくくする効果があります。
②食事量が多すぎる
- 満腹になるまで食べている。
- お腹が空いていないのに、食事の時間がきたから食べている。
【改善案】
お腹がいっぱい=血糖値が高い状態が続いています。
自分にとってちょうど良い量を食べた時は、次の食事時間にはお腹がすいているものです。
食べすぎていると感じる人は、現状の7割量にしてからだや数値の変化を観察してみましょう。
③寝る前に食べている
- 20時以降に夕食をとる習慣がある。
- 1日の中で、夕食が一番しっかり食べている。
【改善案】
体内時計の作用により、からだは夕方以降には臓器を休める態勢に入ります。遅い時間にとる食事は、糖が処理しきれずに体内に蓄積し血糖値を上昇させます。
夕食は基本20時前にすませるように心がけてみましょう。
20時以降になる場合は普段の半量にし、残りの半量は翌朝にまわします。
食べる時間帯を見直すだけで血糖値を下げることができます。
<参考>
HbA1cが8.0mg/dl未満 | ステップ1を3か月取り組み、ステップ2へ。 |
HbA1cが8.0mg/dl以上/尿糖(±)以上 自覚症状のある方 | ◎HbA1cが8.0mg/dl以上の人/尿糖(±)以上の人/自覚症状がある人:ステップ1と併行してステップ2へ。すぐに薬物治療を開始したほうが良い場合がありますので、医師と相談してすすめてください。 |
ステップ2:病院を受診する
基準値を超えたすべての人に受診をお勧めします。
その理由は、一度の検査だけでは隠れ糖尿病をみつけられないからです。
高血糖レベルがどれくらいか、糖尿病にはなっていないか、合併症の進行はないかを総合的に診てもらう必要があります。
1~2回の診察で判定可能です。
ステップ3:ストレスケアをする
ストレスケアが血糖値を下げます。
その理由は、ストレスを緩和させることで血糖値を上げるストレスホルモンの分泌を抑制したり、自律神経のバランスを整え血糖値のコントロールを正常化したりする効果があります。
ストレスケアで大切なことは「自分にとって心地の良い時間」をつくることです。
落ち着く、気持ちいい、嬉しい、楽しいなどのリラックスした状態が血糖値を下げてくれます。
いつでも簡単にすぐできる方法をご紹介します。
究極のストレスケア、それは「腹式呼吸」です。
自律神経を整え、心身をリラックスさせる効果があります。
① | からだの力を抜き、おへその下(丹田)に手をあてて、長くゆっくりと口から息を吐きます。口をつぼめて息を吐き、お腹の中の空気をすべて出し切るイメージをしてください。 |
② | お腹が空っぽになりへこんだら、次は鼻からゆっくり4秒かけて空気を吸います。空気が鼻、のど、胸を通りぬけ、お腹に入り、お腹がゆっくりと膨らんでいくのを感じていきます。 |
③ | お腹いっぱいに空気を吸い込んだら、4秒ほど息を止めます。 |
④ | その後、8秒かけて口から空気を吐きだしていきます。この時、お腹、胸がしぼんで空気が流れ出ていくのを感じましょう。 |
①~④を数回繰り返し行います。
わずか1~3分ほどでストレスを緩和し血糖値を下げる効果があります。
以上、ここでは血糖値が高いといわれたらやることリスト3つをお伝えしました。
最後に病院選びで迷ったときのポイントをお伝えします。
4.病院のかかり方
血糖値が高いときと言われたとき、まずはかかりつけ医に相談します。
持病で通院中の方はその主治医に相談し、適切な内科を紹介してもらってもよいでしょう。
かかりつけ医がいないときは、近くの内科があるクリニックまたは病院にかかります。
このほか、自覚症状がある、合併症が心配、糖尿病治療の経験豊富な医師を探したいという場合は、日本糖尿病学会の認定を受けている糖尿病専門医を訪ねるのも安心です。
一部では紹介状が必要になることもありますので、受診前に問い合わせてみるとよいでしょう。
5.まとめ
高血糖は加齢や生活習慣で誰もが起こりうる状態です。
また現代社会では外食産業やストレスフルな環境が身近にあるため、血糖値が高くなりやすい社会といえます。
長寿社会において、健やかな一生涯を過ごすためにはすべての人に「血糖値のケア」が重要です。
今後の記事ではさらに具体的な血糖値を下げるための治療や生活習慣についてお伝えしていきます。
これまで血糖値改善をサポートしてきた方々の成功例や転機なども載せていますので参考にしてみてください。
記事を読み進めることで、「自分の心とからだにちょうど良い血糖値ケア」を見つけるお手伝いができたら幸いです。
次の記事
看護師がわかりやすく解説! 糖尿病② 糖尿病ってなに?原因・症状・治療・糖尿病は治るのかを分かりやす…
糖尿病だったらどうしよう 血糖値が毎年上がっていくけど大丈夫かな? 家族が糖尿病なので自分も心配 怖い病気って聞いたけどどうしたらいいの? こんな心配や悩みをお…
この記事を書いた人
安富由紀子
<プロフィール>
看護師・保健師として、何千人という生活習慣病やその予備軍と診断された方の保健指導や健康教育に携わる。その中で心身共に健康であるためには、「自分が大切にしていることを知ること」「なりたい自分に向かうこと」が重要であることに気が付く。
現在では「健幸ビジョンコンサルタント」として既存の医療では解決できなかった“心から健康で幸せになる方法”を社会に啓蒙するため、個人や企業での健康相談、研修、コンサルティングを行っている。
<クレド>
①指導をしない
②徹底した対話と、感情や意思を引き出す関わり
③クライアント自身の思考や情報取得を尊重して主体性を育む関わり
<経歴>
看護師・保健師 専門は生活習慣病予防
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
(一社)日本看護コーチ協会 認定看護コーチ
<講座・執筆>
・治療選択ワークショップ主催・講師(株式会社ぷれしゃす様 )
「もしもあなたが乳がんになったら」
・エンディングノート作成講座・講師(株式会社ウィシュレーン様)
「延命治療、あなたの意志の伝え方~家族に重圧を残さないために」
・ウェルネス講座 講師(一般社団法人日本ナースオーブ様)