心臓の役割を知っていますか?
心臓の基本的な構造や役割を振り返ることで、心筋梗塞や対処方法の理解がしやすくなります。
本記事では私たちの体の中心となる心臓の役割・心肺機能についてお話しています。
この記事の目次
心臓の偉大さ
心臓の構造
まず心臓の形や機能について知っていきましょう。
心臓は握り拳程度の大きさをしており、重さはおおよそ200〜300g、大きめのじゃがいもだと1.5個程度です。心筋という筋肉の塊でできており、心臓が動くためのエネルギー源である酸素を運ぶために太い血管(冠動脈)が心臓の表面に張り付いています。
この太い血管が血栓などで詰まってしまった状態のことを、心筋梗塞といいます。
心臓の役割
心臓は毎分平均約70回程度の規則的な動きをします。
1日約10万回も縮んだり広がったりしています。
1回の心臓の動きで血液を体の隅々まで送り出し、その量は1回約70ml、1分間に約5L、1日に7200Lもの血液を送り出しています。
一般的な浴槽へ溜める水が平均200Lなので、約36回分の浴槽の水に相当する血液を送り出しています。
とても力がいりそうですよね。
ですから、心臓は筋肉でできています。
常に人の体の中に流れている血液は体重の約8%、体重60Kgの人の場合、約4.6Lが流れています。
ところで、なぜ心臓はハート型で表されるのでしょう?まったく似ていませんね。
諸説ありますが、古代ローマ時代、今から約3000年前もの前からハートで表されていました。
緊張してドキドキすることから、感情は胸で作られていると考えられており、愛情表現の1つとしてハートがよく描かれていました。その名残が今も残っているのでしょう。
実際は、私たちが寝ている時も、何かに集中しているときも、怒っている時も、感情に左右されることなく、縮んだり広がったりを常に繰り返し、24時間365日血液を送り出しています。
では何のために心臓は血液を送り出しているのでしょうか?
心臓の大切な2つの役割
心臓は血液を全身に送り何をしているのでしょう?
私たちの臓器、つまり、脳・肝臓・腎臓・筋肉などは酸素をエネルギー源として動いています。そのエネルギー源である酸素を運ぶ役割が血液にはあります。
そして臓器が動くと二酸化炭素ができます。
二酸化炭素は血液の流れにのり、心臓の中を通って肺へ送り込んでいます。
心臓の働きには2つあります。
①全身に酸素を含んだ血液を送りだす
②体の中でできた二酸化炭素を肺へ送り込む
①に必要なものに心筋があります。
全身に血液を送り出すにはパワーがいるので、心筋という筋肉で覆われています。
②は「心肺機能」と呼ばれます。心臓と肺は切っても切り離せない関係です。
心臓を支える筋肉
心臓の筋肉と他の筋肉の違い
一般的に筋肉というと、トレーニングして鍛える部位というイメージでしょうか。
しかし、内臓にも筋肉がついています。
そして、今までお伝えしたように、心臓も筋肉でできており、「心筋」といいます。
他の筋肉との大きな違いは、2つあります。
①24時間、常に動いていること
②再生能力が低いこと
この2つです。
最初に記載した通り、心筋の周りには太い血管が通っており、この血管で心筋が動くのに必要な血液を送っています。
この血管が詰まるのが心筋梗塞という状態です。
こうなると、心筋はダメージを受け、損傷や壊死状態となります。
心筋は再生能力が低いので、心筋梗塞を治療した後も、筋肉は以前より弱くなっています。
健康な時のように十分に血液を送り出す力が弱くなっています。
その結果、運動する、坂道を上るなど体を動かすと息切れしやすくなります。
他にも尿を作る力が弱くなり、体に水がたまり、むくみやすくなるなど、様々な症状がでてきます。
最近の再生医療の紹介
新聞やインターネットで目にする機会も多いとは思いますが、最近は再生医療というものが進んでいます。
今まで再生能力が弱いと言われていた心筋を作る研究も、そうした再生医療のなかで行われています。
例えば大阪大学研究グループが心筋の変わりになるシートを移植する研究が行われていますが、実用化にはまだ数年かかるようです。
やはり、できるだけ心筋梗塞を予防するような生活や症状を理解し早期に対応できるほうがよさそうですね。
切っても切り離せない心臓と肺
心肺機能という言葉を聞かれたことはありますか?
よくスポーツやリハビリの説明をするときに、「心肺機能を強くする、鍛える」という表現をします。
先に記載した通り、心臓と肺は密接に関連しています。
では、心臓と肺はどのような関係性にあるのでしょうか。
心臓は血液を体中に送り出します。
送り出された血液には新鮮な酸素がふんだんに含まれており、体中の臓器(脳、肝臓、腎臓など)に酸素が届けられます。
臓器は動くと酸素を消費し、その後二酸化炭素ができます。
血液は二酸化炭素を回収し、心臓へ戻ってきます。
その戻ってきた二酸化炭素は肺へ送られ、息を吐くことで、体の外へ出されます。
そして、息を吸うことで、新鮮な酸素が肺へ取り込まれ、心臓の働きで体中に血液を送り出し、酸素が行き渡ります。
この動きをずっと繰り返しています。
運動をすると心臓がドキドキと早く動き、息が切れるのは、新鮮な酸素を早く取り込むためです。
呼吸を早くすることで、体の中でできた二酸化炭素を外へ出し、代わりに新鮮な酸素を体内へ取り込むということを素早く行っています。
このように心臓と肺は常に連動して一緒に動いていることから、「心肺機能」という言葉で表現されます。
まとめ
本記事では心臓の構造・役割、心肺機能についてまとめました。
心臓の動きや働きを知ることで、心筋梗塞の原因や、なぜ早めに対応する必要があるのかについてわかりやすくなると思います。
次回の記事では、急性心筋梗塞の原因とその対処方法についてお伝えします。
次の記事
看護師が解説!心筋梗塞②急性心筋梗塞の原因と対処方法
この記事では心筋梗塞が起こる原因、そして対処方法についてわかりやすくお話しています。 原因を理解し、同時に対処方法についても一緒に学んでいきましょう。そうする…
参考:
NHK「心筋細胞シート」の治験終了 2年以内の実用化目指す 大阪大(2023年5月19日)
この記事を書いた人
山川幸江
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」