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看護師が解説!脳卒中③脳卒中の入院、退院について

脳卒中についての記事が3つ目となりました。今回は「脳卒中の治療〜入院から退院について」をお届けいたします。

大切な方が脳卒中になったと知り、みなさんがまず思うことは

  • 命の危険はあるのか?
  • 元通りに治るのか?
  • 治るまで、どのくらいかかるのだろうか?
    などではないでしょうか。

脳卒中は、日本人の死因第4位、要介護となる原因第1位です。
脳は一度損傷を受けると、回復する力が弱く、治療が遅れると後遺症を残すことが多いのです。
そのため、できるだけ早く治療をして、詰まった血管内の血液を再び流す、破れた血管からの出血を食い止める治療が不可欠です。

脳卒中は、血栓が脳の動脈を塞いでしまったり(脳梗塞)、脳の血管が破れて出血をする(脳出血)、血管にできた瘤(こぶ)が破れる(くも膜下出血)ことにより、血液の流れがストップしてしまう病気です。
一度死んでしまった細胞は、2度と元には戻らないと言われています。一刻を争う、緊急事態です

脳卒中といえど、外来通院の薬物療法でいい場合もあれば、救急ですぐに入院、手術や点滴などを開始する場合があります。命の危険への影響を「重症度」といいますが、その重症度によって治療の方向性や入院期間がおおきく変わります。

微小な梗塞、出血で症状が軽度なら1週間〜数週間。中等度なら数週間〜数ヶ月、重度なら数ヶ月〜数年です。梗塞や出血によって治療方法も変わります。

急性期病院は、病気や怪我をした方の救急搬送の受け入れ、病状が変化しやすく、命の危険がある方が優先的に入院できる機関となっています。

脳梗塞の仕組み
この記事の目次

1.脳卒中の治療

1)脳梗塞

梗塞された部位や程度、症状によって、治療方法が変わってきます。まずは、血流を再開させることが第一に重要なことで、次に後遺症をできるだけ残さないよう早い段階でリハビリを始めます。

①脳梗塞発症〜4時間30分以内

・血栓熔解療法(t-PA療法)

血栓を溶かすお薬を、点滴で体内に流します。詰まってしまった血管の中にある血栓を溶かし、血流を再開する治療のことで、劇的に症状が改善することがあります。
病院に到着後、この点滴を使うために必要な検査・診断、準備まで1時間は必要です。
病院到着は、発症して遅くとも3時間前後となります。
脳梗塞の症状が出たら、急いで救急車を呼ぶ必要があるのもこのためです。

②脳梗塞発症〜24時間以内

・血管内治療

t-PA療法が無効な場合や、脳の太い血管が詰まった場合には、血管にカテーテル(チューブのようなもの)を通して血液の塊を削ったり吸引することで取り除きます。

③脳梗塞発症〜48時間以内

アテローム血栓症、ラクナ梗塞では、血液をサラサラにするお薬(抗凝固薬)を投与します。
脳梗塞が発症し、数日以上経過した場合で症状が軽度の場合、外来通院で経過観察をします。
また、再発予防として、更に外科的な手術があります。(バイパス術やステント留置など)

2)脳出血

脳血管から出血し始め、止血されるまでが長時間になれば、硬い骨で囲まれた脳は、血の塊によってスペースを失い、脳自体がどんどん圧迫され、「むくみ」が生じます。
まず、出血を止めるために血圧を下げる降圧剤、出血をとめるための止血剤、むくみをとるために抗浮腫剤を投与します。
薬物療法だけでは効果が不十分な場合、浮腫を解除するために手術で血液の塊を取り出します。

3)くも膜下出血

2度目の出血により死亡、重い後遺症が残る可能性が高いのです。2度目の出血が起こる前に、一刻も早く手術が必要になります。

  • 開頭クリッピング術:動脈瘤にチタン製のクリップをかけ、出血を止めます。
  • コイル塞栓術:足の付け根からカテーテル(管)を入れて、脳動脈瘤の中をコイルで埋める治療です。コイルで動脈瘤を満たし、血液が中に流れ込むのを防いで破裂を防止します。
クリッピング
コイル塞栓術

2.脳卒中の入院

復職までの日数

厚生労働省:脳卒中に関する留意事項

1)脳卒中の主な経過

脳卒中の経過は主に、次の3つの段階に分けられます(図「復職までの日数」厚生労働省参照)。

  • 発症直後の治療の段階(急性期:発症からおよそ1~2か月以内)
    脳卒中に対する外科的・内科的治療を開始してまもなく、医師の指示のもとリハビリテーションが開始されます。急性期は「生命の維持」を目的とした治療ですが、自身では動かすことのできない関節が硬くならないようにリハビリテーションを早期に開始いたします。後遺症がなく、継続したリハビリが必要ではない場合は2週間程度で自宅退院となります
  • 機能回復のためにリハビリテーションを受ける段階(回復期:発症からおよそ3~6か 月以内) 
  • 日常生活に戻る段階(生活期または維持期:発症からおよそ6か月以降)
    経過によって、入院・通院する医療機関が変わる場合があります。例えば、軽度であれば発症直後の治療を終えれば退院可能ですが、専門的なリハビリテーションが必要な場合には、 リハビリテーション専門の病院に転院することが多いのです。 そのため、労働者によっては、治療の状況や必要な就業上の措置等について情報提供を依頼する主治医や医療機関が変わる可能性があります。

2)退院までの準備

退院前に、医師、看護師、作業療法士、ソーシャルワーカーなどと相談する場を設けます。
回復期病院でのリハビリ機関は、脳卒中になった日から150日、高次機能障害を伴う重度脳血管障害の場合は180日が上限となっています。
厚生労働省の「令和2年 患者調査(確定数)の概況」によると、2020年の脳血管疾患(脳卒中患者)の平均在院日数(平均入院数)は77.4日となっています。
この入院期間中に、ご本人、ご家族は自宅に帰るための準備、自宅に帰らない場合は施設を探します。

また、入院中に介護認定を申請する場合はソーシャルワーカーに必ず相談しましょう。
福祉用具の手配、手足の麻痺などの後遺症が残ってしまった場合、退院前に自宅環境を整えることが大変重要です。浴室、トイレや階段に手すりをつけたり、電動ベッドの導入なども検討するといいでしょう。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。脳卒中は、重症度と治療を開始した早さによって予後が大きく変わります。今回は、脳卒中の治療〜入院、退院までをお届けさせていただきました。

次回は、「健康診断を受けたら、ここをチェック!」をお届けいたします。

事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン 参考資料 脳卒中における留意事項(厚生労働省)



この記事を書いた人

看護師:工藤 巳知子

北海道出身、看護師歴21年。
新卒で一般病棟勤務中、急変対応の経験不足を痛感したため手術室・救急外来へ部署移動。

上京後は大学病院の高度救命救急センター、民間病院の集中治療室(ICU /CCU)で12年。

その後、命を救う現場から病院と在宅を結ぶ訪問看護ステーションへ転向。営業やマネジメント、国際医療搬送を経験。

21年間、脳神経外科領域に関わり、現在は開業メンバーとして脳神経外科のクリニックに勤務中。

脳と意識、こころの探求を学びながら、フリーランスナースとして活動中。

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