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外貨建の生命保険とは

今年1月から新NISA制度(少額投資非課税制度)が始まり、新たに証券投資を始める人が増えています。
新規口座開設者の投資先は、米株式や世界株式の指数(インデックス)型運用が圧倒的比率を占めているようです。
人口減少と産業の低成長などにより、日本の相対的地位が低下していることから、国内の資金が外国に流出しているのでしょう。

この記事の目次

1.外貨建保険が増加する背景

日本では低金利の時代が30年以上続いています。
保険の外交員から「預金よりも高金利が期待できます」と外貨建保険を勧められた方も多いと思います。

現在、外貨建保険は日本円よりも相対的に高金利、死亡保障を大きく取れるなどのメリットがあります。
その一方で元本割れリスクがありますので、保険の加入には注意が必要です。

外貨建保険は、世界株式などの投資信託に比べると、運用利回りだけでなく「保険」という保障があることが特徴です。
保険を利用する「目的」を明確にすることが、商品選びの目安になるでしょう。

外貨建保険に加入する目的は、主に以下の3つが考えられます。

  • 死亡保険金を家族に残すため。
  • 資金を増やして自分で使うため。
  • 生命保険の非課税枠を確保しておくため。

③の「生命保険の非課税枠」は、「500万円×法定相続人の数」までの保険について、相続税が非課税になるものです。
これは一般の生命保険でも利用可能ですので、特に外貨建保険である必要はありません。
従いまして、外貨建保険を利用する目的は、主に①と②になりそうです。

2.外貨建保険の仕組みと特徴

外貨建保険は払い込んだ保険料を米ドルや豪ドル等の外貨で運用する保険です。
保険金の受け取りは外貨でも可能ですが、日本円で受け取るケースが多いでしょう。
そのため為替レート変動の影響を受け、元本割れのリスクがあります。

その一方で、「貯蓄性が高い」、「保険料が割安なため死亡保障が大きく取れる」というメリットがあります。

<事例>

  • 米ドル建一時払終身保険
  • 被保険者 65歳男性
  • 一時払保険料1,000万円(67,567.67米ドル×148円)
  • 保険金額15万米ドル

この商品は保険契約時に1,000万円の保険料を一括で支払うと、被保険者に万一の事があった場合15万米ドル支払われます。

仮に、為替レートが契約時と変わらず1米ドル=148円であれば、15万米ドルの死亡保険金は約2,220万円ですので、支払った1,000万円の約2.2倍の受け取りが可能ということになります。
一般的には、この倍率は被保険者の年齢が若ければさらに大きくなります。
円建の商品では、死亡保障の倍率は大きくありませんので、この点が外貨建保険の魅力だと言えるでしょう。

しかし、前述のとおり為替変動リスクがあります
外貨建保険は、被保険者の死亡日を基準に保険会社所定の為替レートで支払われます。

例えば1米ドル80円の場合には死亡保険金は約1,200万円になりますが、1米ドル200円の場合には死亡保険金は約3,000万円になります。

3.元本割れのリスク

それでは、元本割れのパターンは、死亡時の為替変動リスクだけでしょうか。

先の事例では、保険金の15万米ドルを日本円で受け取った場合、1,000万円÷15万(米ドル)≒66.6円、つまり1米ドル約66.6円よりも円高の時に死亡すると元本割れ、ということになります。

さらに、ここで注意すべき点は為替手数料です。
保険会社によって異なりますが、支払時と受取時にそれぞれ1銭~50銭の為替手数料が必要ですので、仮に為替が全く変動しなかったとしてもこの分保険金は目減りします。

もう1つ、保険を中途解約した時にもリスクがあります。
一括で払い込んだ後はいつでも解約が可能ですが、こちらも解約時に円高だった場合は元本割れの可能性があります。加えて保険商品によっては、契約時に初期費用や毎月費用が差し引かれるものがありますので、払い込んだ全額が運用されない場合もあります。
また、解約控除(契約から一定期間内に解約する場合のペナルティ)や市場価格調整(市場金利によって解約返戻金が増減する)がかかることもあります

4.運用重視の外貨建て保険も

事例の商品は払った保険料よりも米ドルベースで保険金額が大きく設定されていますが、商品によっては運用に重視たいものもあり、事例のタイプよりも少なくなるように設計されています。

外貨建商品は種類も多く内容も複雑ですので、保険の内容を完全に理解することは難しいものです。
そこで重要なのは、自分自身の保険加入の目的が

  • 「死亡保険金を家族に残すため」なのか
  • 「資金を増やして自分で使うため」なのか

    を考え、それに保険のプロに相談して、提案を受けることです。

資金を増やすことが主な目的であれば、保険ではなく、投資信託なども選択肢になるでしょう。
まずは目的を整理し、そのうえで為替リスクも許容できるのか。また自身の財産状況から考えて保険の加入は妥当なのかを踏まえて、信頼できる方から保険の説明を聞くと良いでしょう。




この記事を書いた人

齋藤 弘道(さいとう ひろみち) 遺贈寄附推進機構 代表取締役 全国レガシーギフト協会 理事

齋藤 弘道(さいとう ひろみち)

<プロフィール>
遺贈寄附推進機構 代表取締役
全国レガシーギフト協会 理事

信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。
遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の全国レガシーギフト協会)。
2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。
日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

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