看護師歴約30年になるベテランナースです。
ここ一年ほど健診会社の非常勤スタッフとして働いています。
その前は、内科系の病院にいて病棟や外来・訪問看護ステーションなどで勤務していました。
私たち看護師も健康診断があり、毎年、年に二回必ず受けていました。
日勤業務だけの場合は、一年に一回が通常ですが、夜勤業務をする人は二回受けます。
二回目は一回目の健診よりもやや簡易の内容になります。
これは、タクシー運転手とか、スーパーマーケットなどで深夜業務をする人も同じです。
労働安全衛生法に定められていて、事業所から受けるように言われます。
健診業務を行う側になり、「健診について知っている」と思っていたことが色々と不勉強だったなあと感じたので、改めて皆さんと一緒に見ていきたいと思います。
この記事の目次
1.健康診断とは
学生のうちは学校で、社会人になってからは職場で、仕事をしていない場合は各市町村などの自治体から、お知らせが来て健康診断を受けていると思います。
健康であるかどうか、身体に異常はないかを見つけるために行うものです。
その内容には身長、体重、視力、聴力、腹囲、血圧を測定したり採血、心電図、レントゲン、胃透視などを検査したりするのが主なものです。
それぞれの事業所によって、腹部エコーや、乳がん検査、眼底検査などもあります。
健診当日に各自で採取して、持参する検尿・検便検査もあります。
あまり、いい気分の検査ではない記憶があるのではないでしょうか。「なんで、便なんて持っていかないといけないのかな?」なんて。
2.便潜血検査について
検便です。
その名の通り、便の中に血が混じっていないか(潜んでいないか)どうかを調べる検査です。
健診を受けたことのある方々は、たいてい下の写真のような検査キットを事前に受け取っておき、「便を採取して当日に持参する」のが一般的だと思います。
事業所の健診の場合受付時に、二回分(二日分)の採取してきた便を手渡します。
なぜ、二日分なのか、ご存知でしょうか。
それは、一回よりも二回の方が検査の精度を上げられるからです。
そのため確実に二日分を提出してください。
3.何を調べるの?
便潜血検査では、何を調べるのか?
健診の便潜血検査では、主に消化器疾患の有無について調べます。
この場合の消化器疾患は、大腸がんを指します。
通常、食べ物が便として排泄される過程で便に血が混じることはありませんので、検査で陽性となった場合は、その可能性があるということです。
二回検査をする場合の、一回だけ陽性でも、大腸がんなどの消化器疾患の可能性があると言えます。
病気の可能性があるということは、病気では無い可能性もあるということです。
検査の確率はどれくらいか気になりますね。
精度としては、実はそれほど高くありません。
- 大腸ポリープが見つかる確率が50%前後
- 大腸がんの見つかる確率は2~3%程度です。
「な~んだ、大したことないんだなあ」と思われた方
基本的に排泄物に血液が混じることはないので、楽観的には考えられないです。
そのため、異常のあった場合は必ず、再検査が必要です。
4.異常のあった場合は
異常がある⇒出血があるということです。
排便時に出血量が多ければ、便器の中を見るだけで「出血している」と容易に判断ができるのですが、出血が微量だと見ただけでは分かりません。そのため採取した便に試薬を混ぜて、その変化で血液の混入判定を行う必要があるのです。
潜血検査は主に大腸で出血しているのかどうかを判定します。
自覚症状がないことで
- 何も症状ないから、たまたまだろう
- 硬い便だったから、ただ肛門が切れてしまっただけなんじゃないか
などと、自分に都合よく考える人がある一定数おられます。
辛いとか痛いとかの症状があれば、不安にもなりますが症状は無いので、真摯に受け止めない人がおられるのです。
私の友人 54歳 男性 Aさんからこんな電話がきました。
一か月くらい前からトイレに行ったときに出血していたけど、なんだろう?病院に行った方がいいのかな?痛くもなんともないから、そのままにしてた(笑)
Aさんは、排泄時の出血以外に腹痛も、下痢も、吐気も、何も症状は無いと言っていました。
食欲もあり、普通に仕事も出来ているので放置して一か月経過してしまったと言うのでした。
相談を受けた私は、Aさんに消化器内科を受診するように説明しました。
検査の結果、特に異状は見つかりませんでした。それから6年経過した現在もAさんは元気に生活しています。
このAさんが我慢強いというのもありますが、それほど症状が無いので、健診メニューに便潜血検査があるのですね。
5.まとめ
消化器内科で働いていた私は、今から10年ほど前、便器の中が真っ赤になるほど出血をしました。
とっさに思い浮かんだ病名は「大腸がん」と「大腸ポリープ」でした。
『こんな、急に病気になるかな?とにかく、病院受診して、検査をしてもらわないことには、分からない。』と、不安に駆られたのを覚えています。
普段から、自分が勤務している病棟で、同じように
「お尻から出血しました。その精査のために入院してきました。」と話す患者様たちのことを思い出し、最悪の状況も一気に想像してしまいました。
不安で、食欲がわかず、検査の為に(どんな検査をどういう過程で行うのかを知っていたので)食事をとらずに受診しました。
結果は、「肛門の内側に小さいイボ痔があり、便が排泄されるときに擦れて出血した。」ということでしたが、検査が終わって説明を聞くまで、本当の本当に最悪な結果を想像してました。今となっては「たったの5日間で5キロも瘦せられた」よい思い出ですが、子供たちを残して死ぬのかも?とまで、考えた怖い出血です。
私の例でも、便潜血検査で引っかかる病気には全く症状が無い、という事が分かります。
そのため、せっかく健診で調べてもらえて病気の早期発見につながるのはありがたいことだなと、今の医学に健康診断に感謝しています。
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この記事を書いた人
看護師:栗巣正子
<経歴>
看護師歴 23年
大阪府堺市で、50床~2000床の病院勤務(内科、外科、手術室、整形外科、療養病棟)。
離婚後、鹿児島県鹿屋市にて、老人保健施設、透析専門クリニックに勤務
大手生命保険会社に、営業主任として3年勤めた後、地域密着型の内科総合病院に17年(介護保険病棟、療養病棟、急性期病棟、心臓内科、腎臓内科、肝臓内科、消化器内科、呼吸器内科、腹膜透析、血液透析、外来、救急外来、訪問看護)勤める。
現在は、派遣ナース、非常勤での健診スタッフ、訪問看護指示書作成等の委託業務、ナース家政婦登録
<資格>
正看護師/普通自動車免許/大型自動車免許/けん引免許/たん吸引指導者/ペットセーバー/労災ホームヘルパー(A)