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看護師が解説!フレイル予防④フレイル予防対のための具体策「栄養編」

フレイル予防④フレイル予防のための具体策「栄養編」

みなさんは毎日どんな食事をしていますか。

これまで加齢に伴う心身が弱った(衰えた)状態であるフレイルに関する予防と早期発見・早期対策の重要性について重ねてお伝えしてきました。

周知のことかとおもいますが、私たちの身体は自分の食べたものからできています。
そのため生活習慣病をはじめとする、多くの病気の一因に食事の影響があります。

今回はフレイル予防の栄養編として、食事の視点からフレイルについて考えたいと思います。

この記事の目次

1. 食べることとフレイルとの関係

私たちは食べなければ生きることができません。

加齢に伴い食べる量が減ってくるのは自然なことですが、必要量に対して食べる量が少なくなるとフレイルになっていきます。

フレイルによって体力が落ち、足腰も弱れば、外出する機会が減ります。

外出しないとエネルギーを使うことが少なくなるためお腹は減らず、食欲の低下や食べる量が減ってフレイルサイクルにおちいるのです。

しかし食べる量が減る原因は、活動量だけではありません。
食べる機能自体が低下して、食べられないこともあるのです。

最近、飲み物や食べ物でむせることが増えた、食べこぼすことが増えた、と感じたことはありませんか。
それは【オーラルフレイル】かも知れません。

2. オーラルフレイルとは

オーラルフレイルとは、口腔機能の低下をいい、些細な衰えや食ベ物の偏りも含みます。

症状の特徴(一例)

  • むせる
  • 食べこぼす
  • 食欲がない
  • 食が細い
  • 自分の歯がない
  • 顎の力が弱い
  • 柔らかいものばかり食べる
  • 唾液が少ない
  • 口が乾燥する
  • 舌が回らない
  • 滑舌が悪い

「まさか私も?」と、ドキリとされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

【オーラルフレイルチェックリスト】がありますので、ご紹介します。

8つの質問事項に、はい・いいえで答えます。
質問によって、返答した方に数字が書かれているものと、そうでないものがあります。
答えた方に数字があった場合、その合計が点数になります。

点数が3点ならオーラルフレイルの危険性があり、4点以上ならオーラルフレイルの危険性が高いとなります。

オーラルフレイルのセルフチェック表

オーラルフレイル予防のためには、定期的な歯のメンテナンスが重要です。
義歯を使用されている方は、食べるときに義歯を使用し続けることが大切です。

義歯が合わないときは早めに調整しておきましょう。

口腔機能を高める体操には、頬を膨らませる・へこませる運動、舌を上下左右に動かす運動、大きく口を開けて「パタカラ」というパタカラ体操などがあります。

加齢によって唾液が出にくくなるので、耳の下から顎のラインに沿ってマッサージすることで、唾液腺を刺激して唾液が出るよう促すことも効果的です。

口の体操パタカラ

3. フレイルと栄養

人が生きていくのに必要な栄養素は、主に糖質・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラルで、これらを五大栄養素といいます。

主な働き

  • エネルギー源(車で例えるならガソリン)となるものは、糖質、脂質、たんぱく質
  • 身体をつくる(車で例えるなら車体)のは、たんぱく質とミネラル
  • 身体の調子を整える(車で例えるならエンジンオイル)のが、ミネラルとビタミン

これら栄養素には、一日に必要な摂取量が決まっています。

バランスの悪い食事は、ピカピカの車を汚れたエンジンオイルで走らせるようなものです。
不摂生な食事を続けていると、生活習慣病やがんなど病気の原因になることは、広く知られているところです。

では栄養とフレイルの関係性をみてみましょう。

①BMI(body mass index)と総死亡率の関係

BMIとは、肥満度を示す国際的な基準です。
BMI=体重(kg)÷身長(m)2で、理想値は22です。 
70歳以上で、観察疫学研究において報告された、総死亡率が最も低かったBMIの範囲は、22.5~27.4でした。

②1日の摂取エネルギー量とフレイルの関係

75歳以上で自立した生活を送っている人が1日に必要なエネルギーは、推定で男性2100kcal女性1650kcalです(日本人の食事摂取基準2020年版)

1日の摂取カロリーが、体重あたり21kcal(体重50kgの人で1050kcal)以下の人は、それより多く摂取している人と比べて1.24倍フレイルのリスクが高くなります。

③日本人高齢者のたんぱく質とフレイルの関係

75歳以上で活動量が普通の方のたんぱく質の目標摂取量は、男性79~105g/日・女性62~83g/日(厚生省の資料から)です。ただし腎機能が低下した方は取りすぎに注意が必要です。
10年間の縦断調査(同一対象者を継続的に調査する研究手法)で、体重1kgあたりのたんぱく質摂取量が0.8g(体重50kgで40g)未満の人は1.2g(体重50kgで60g)以上の人より、フレイルになるリスクが高くなることがわかりました。

働き盛りの時期には、生活習慣病予防(メタボリックシンドローム予防)のため、カロリー制限が重要視されています。

高齢者になると【積極的に栄養を摂る】ことが大切になります。

特にフレイル予防では、たんぱく質ビタミンDカルシウムを中心に、多様な食品を摂取することが推奨されています。

たんぱく質を多く含む食品肉・魚・大豆・牛乳など
ビタミンDを多く含む食品魚やきのこ類
(紫外線を浴びることで皮膚からも産生されます)
カルシウムを多く含む食品干しエビ・牛乳・小魚・小松菜など

4. 「さあにぎやかにいただく」でバランス良く食べる

「さあにぎやか(に)いただく」という合い言葉があります。

これはロコモチャレンジ!推進協議会が考案した合い言葉で、10の食品群の頭文字からつくられています。

海藻
牛乳・乳製品大豆製品
野菜果物

自分がどのような食生活を送っているかを知るために、1週間ほど食べた食品のチェックをしてみましょう。
ご自身の食事の傾向がわかると思います。

10品目のうち、少しでも食べていれば1点として、1日の食べた種類を点数化します。

この点数は、得点が高い人ほど骨格筋量が多く、身体機能も高いことがわかっています。
バランスが悪く点数が低かった方は、まず7点を目指してみましょう。

7品目中に肉・魚・卵、大豆製品・乳製品が含まれることで、十分なたんぱく質が摂取でき、フレイル予防には効果的です。

ちなみに、この10品目の食品群は副菜として食べるもので構成されています。
主食となる米やパン、麺類は食べることが前提とされ、含まれていません。

健康長寿の『食べる』のポイントいろいろ食べポ

バランス良く食べることができるようになれば、次は1日に必要な量を意識します。

はかりなど使わなくても、自分の手を使って、1日に必要なおおよその量がわかります。
肉・魚・芋・果物は片手に収まる程度です。
野菜なら片手3つ分ですが、生野菜では片手が両手になります。
牛乳ならコップ1杯、卵は1個、納豆なら1パックといった具合です。

1日の摂取量の目安、何を食べるか、どれだけ食べるか

最近は管理栄養士が監修したバランスの良い商品を、お店で見かけるようになりました。

調理が負担なときは、お惣菜やお弁当、冷凍食品やレトルト食品、また栄養補助食品などを上手く活用しましょう。魚の缶詰はたんぱく質とカルシウムが豊富です。

ゲーム感覚でバランスの良い食生活に取り組んでみて下さい。
一度に食べる量が少なくなってきたと感じる方は、間食で不足を補いましょう。

食べることが苦痛にならないように、決して100点を目指さないこと。
そして今日できたことを認めて褒めることが大切です。

いろんな種類の食品を、美味しく、そして誰かと楽しく食べて、フレイル予防に取り組んでみて下さい。

お料理の好きな方はご参考に。

KOBE食の応援レシピ(フレイル予防編)

5. まとめ

元気な身体を維持するためには、適度な運動を継続することに加え、たんぱく質やビタミンD、カルシウムを中心にバランスの良い食事を取ることが大切なことがわかりました。

フレイル予防には、運動と栄養に加えてもう1つ大切な要素があります。

それは社会参加です。

食事は単に栄養を取り入れるだけの行為ではなく、誰とどんな風にいただくかも大切です。
私たちは誰かと出会うために、元気を維持したいと思うのではないでしょうか。

次回は「フレイル予防のための具体策 社会参加編」で、他者との関わりの重要性について、あらためて確認してみましょう。

参考文献
佐々木 敏:「日本人の食事摂取基準(2015年版)」どこをどのように読むか Diabetes Journal Vol.42,No2,2014
葛谷 雅文:フレイルに対する栄養介入 日本転倒予防学会誌 Vol.3 No.3:17-20 2017

参考資料
ご存じですかオーラルフレイル【東京都健康長寿医療センター研究所】

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この記事を書いた人

看護師:青木容子 看護師経験30年 (病院勤務通算8年、身体障害者施設3年、訪問看護15年、そのほか新生児訪問指導など) 現在は特別養護老人ホームなどで勤務する傍らCANNUS新長田を運営中。 紙屋克子氏らから、NICD:意識障害・寝たきり(廃用症候群)患者への生活行動回復看護を、黒岩恭子氏からは黒岩メソッドを学び、実践するとともにそれらの普及を目指している。

看護師:青木 容子
〈プロフィール〉

看護師経験30年

(病院勤務通算8年、身体障害者施設3年、訪問看護15年、そのほか新生児訪問指導など)

現在は特別養護老人ホームなどで勤務する傍らCANNUS新長田を運営中。

紙屋克子氏らから、NICD:意識障害・寝たきり(廃用症候群)患者への生活行動回復看護を、黒岩恭子氏からは黒岩メソッドを学び、実践するとともにそれらの普及を目指している。

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