薬には「飲み合わせ」というものがあります。
薬と薬の飲み合わせもあれば、薬と食品の飲み合わせもあります。その相互作用によっては、かえって悪影響をともなう、ということにもなりかねません。
そこで今回は、薬の飲み合わせについてお伝えします。
薬の飲み合わせによっては命に関わることにもなりかねませんから、知っていると安心ですね。
この記事の目次
1.薬と薬の相互作用で起こること
2種類以上の薬を服用した時に、個々の薬では見られない作用があらわれたり、効果が強くなったり弱くなったりするなどの変化が起こることを、薬の相互作用といいます。
相互作用には様々なものがあります。
①主作用と副作用
症状を軽くするための本来の薬の働きのことを主作用といいますが、薬には主作用と異なる望ましくない作用をする副作用があります。
●かぜ薬や鼻炎薬に配合されている抗ヒスタミン剤は鼻粘膜の炎症を抑えてくしゃみや鼻水を止めるという主作用がありますが、同時に眠気や集中力の低下など、脳の活動を抑えるという反作用があります。
●鎮痛剤として使用されるロキソプロフェンナトリウムやセレコキシブなどの非ステロイド系抗炎症剤は、胃の粘膜を減らして血流を悪くするという副作用があります。そのため、胃の粘膜を保護する薬も同時に処方されることがあります。
また、感染症では抗生剤を処方されますが、黴菌を殺すのと同時に胃の不快感や嘔吐が起こることもあります。そのような時には、主作用の薬と、副作用を打ち消す薬の2種類が処方されます。
②重複作用
同じ作用を持つ2種類の薬を服用すると、副作用が強まることがあります。
●鎮痛薬の主な成分は非ステロイド系抗炎症剤(アスピリン)と、非ステロイド系抗炎症剤ではないアセトアミノフェンです。痛みが治まらないという理由で市販薬の鎮痛剤を服用すると、鎮痛剤の副作用である胃腸障害や吐き気や、嘔吐が過剰に起こることがあります。
③拮抗作用
2種類の薬を飲んだ時に片方の薬がもう片方の薬の作用を弱めてしまう作用のことを拮抗作用といいます。
●例えば、鎮痛剤の非ステロイド系抗炎症剤(アスピリンやイブプロフェン)は利尿剤(フロセミド)と併用すると非ステロイド系抗炎症剤が利尿剤の効果を弱めてしまいます。非ステロイド系抗炎症剤は、体内に塩分や水分を溜める作用があるのに対し、利尿剤は体内の余分な塩分や水分を取り除くという作用があるためです。
※拮抗作用には薬と薬以外にも薬と食品もありますので次の項目①で説明します。
このような薬による相互作用は、薬を飲んでから排泄するまでの吸収・分布・代謝のどこかで起こります。
2.薬と食品との組み合わせで起こること
食べた食品が薬の作用または副作用に影響して効果が強く出ることや、弱くなることがあります。
この時、体に思わぬ悪影響を与えることもあるため、薬と食品の相互作用を知っておくことはとても重要です。
薬と食品との組み合わせで注意を要するものを紹介します。
①血液凝固剤(ワーファリン)とビタミンK
血液を固まりにくくする効果のあるワーファリンですが、ビタミンKによって作用が拮抗(互いの作用を弱めてしまう)されてしまいます。ビタミンKが含まれている食品は納豆やブロッコリーやモロヘイヤなどの緑黄色野菜や青汁です。これらの食品を食べた後にワーファリンを服用すると、薬の効果が弱くなってしまいます。同時に服用すると以下の深刻な症状が出ることがあります。
●ワーファリンは血液を固まりにくくさせて血栓を予防する効果があります。また、ビタミンKは血液の凝固因子を活性化して出血を止める作用があります。特に納豆に含まれるビタミンKの割合は非常に多いため、血液が固まりやすくなり心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことにもつながります。
②カルシウム拮抗剤、免疫抑制剤とグレープフルーツ
カルシウム拮抗剤といわれる高血圧の時に処方される薬がありますが、グレープフルーツ(ジュースを含む)と一緒に摂ると効果が強く出てしまいます。また、免疫抑制剤といわれる免疫反応を抑える薬でも同じような相互作用があります。
これは、グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という成分が、肝臓で薬を代謝する過程で分泌される酵素の働きを抑えてしまうために起こります。
酵素の働きが抑制されると以下の症状が現れます。
●頭痛・ほてり・めまい
フラノクマリン類によって肝臓での代謝が阻害されると、血圧が下がりすぎてしまいます。
急に血圧が下がるために頭が痛くなる、顔がほてる、めまいなどの症状が現れます。
この他、同じ柑橘系などにも同じような作用を起こす組み合わせがあるため注意が必要です。
③睡眠導入剤とアルコール
睡眠導入剤とアルコールは、どちらも脳の神経機能を抑える作用があるため同時に体に入れた場合は作用が過剰になります。
相互作用については以下の通りです。
●呼吸抑制
呼吸を司る中枢神経が抑制されるため呼吸が浅くなります。呼吸が止まることもあるためとても危険な相互作用といえます。
●意識障害
意識状態が低下し、もうろうとします。呼びかけても反応が鈍く、状況を判断することができない状態です。
●混乱状態
脳内の神経伝達物質のバランスが乱れ、混乱状態になり、幻覚が出現する場合もあります。また、夢遊病のような症状を伴うことがあります。
●運動障害
平衡感覚を保つことができなくなるため歩行ができなくなります。ふらついて転倒し怪我をしやすい状態です。
※サプリメントは栄養を補うことを目的とする製品ですが、
処方された薬や市販薬と相互作用することがあります。薬を処方された際にはサプリメントを飲んでいることを必ず医師や薬剤師に伝えるようにしましょう。
3.薬の飲み方についての注意事項
上記に示したように、薬は症状を改善する効果の他に、相互作用があります。
医師から薬が処方された場合は、服用しなくてはならない状況であるため効果的に服用しないと状態の悪化につながる恐れがあります。
薬の説明については調剤薬局で丁寧にされますが、自らの症状や病気についてはしっかりと把握する必要があります。
そのために次の5つを必ず念頭に置いて服用するようにしましょう。
●薬の名前と効果について
●なぜ飲まなければならないのか
●いつ飲むのか
●飲み忘れた時はどうするのか
●飲み合わせなどの注意事項
この5つを確認し、守ることで正しい服薬治療が始められます!
4.まとめ
病気やけが、痛い時になくてはならない便利なお薬ですが、代謝や排泄がスムーズにいかないと、思わぬ副作用で症状が悪化する可能性があります。また、効果が過剰になることで思わぬ事故となり命を落としかねないのが相互作用の危険なところです。
薬の作用と体の持っている機能を上手く組み合わせて、正しく薬を服用することを心がけていきたいですね。
この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」
動画配信YouTube「看護師mikakoの更年期チャンネル」