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子どもや高齢者にも多い睡眠時無呼吸症候群:年齢別の特徴と対策

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に呼吸が一時的に停止する疾患であり、大人だけでなく子どもや高齢者にも影響を及ぼします。特に成長期の子どもや健康管理が重要な高齢者にとって、睡眠時無呼吸症候群はさまざまな健康リスクを引き起こす可能性があります。

本記事では、子どもと高齢者の睡眠時無呼吸症候群の特徴と、それぞれの対策について詳しく解説します。

この記事の目次

1.睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に10秒以上の呼吸停止が繰り返し発生する疾患です。主な種類には以下の2つがあります。

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA):上気道が狭くなることで発生する。肥満や扁桃肥大が主な原因。
  • 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA):脳からの呼吸指令が適切に伝わらないことで発生する。心疾患や神経疾患が関係することが多い。

一般的には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が多いと言われています。

しかし、低体重で出生した乳幼児が睡眠時無呼吸症候群の症状がある場合、中枢性の睡眠時無呼吸症候群であることが多くあります。

乳幼児は、呼吸機能の働きが未発達なために無呼吸発作を起こし、乳幼児突然死症候群につながることもあります。

2.子どもの睡眠時無呼吸症候群の特徴と対策


睡眠時無呼吸症候群は、子どもにもみられる病気です。新生児から小学生までの子どもの1~4%がSASを患っているともいわれています。

(1) 子どもの睡眠時無呼吸症候群の原因

子どもの場合、睡眠時無呼吸症候群は以下の要因によって発生することが多いです。

  • 扁桃やアデノイドの肥大:上気道が狭くなり、呼吸が妨げられる。
  • 肥満:脂肪が気道を圧迫し、空気の通り道を狭める。
  • アレルギー性鼻炎:慢性的な鼻づまりが原因で口呼吸が増える。
  • 顎の発達不足:小さな顎や後退した顎が気道を狭める要因となる。
  • 脳幹の呼吸中枢の未発達:低体重で出生した場合など脳の呼吸中枢の機能の未発達により呼吸が妨げられる。

(2) 子どもの睡眠時無呼吸症候群の症状

症状の多くは大人と共通しますが、子ども特有の症状もあります。
心身の成長や発達時期の子どもが睡眠時無呼吸症候群になると、健康状態や気質にも大きな影響を与えます。慢性的な酸素不足による発育・発達障害、学習障害などが特徴的です。

  • 睡眠中のいびきや息苦しさ
  • 寝つきの悪さや熟眠感の欠如
  • 寝汗
  • 過度の夜尿症(おねしょ)
  • 日中の集中力低下や多動傾向(ADHDと誤診されることもある)
  • 成長の遅れ(睡眠中の成長ホルモン分泌が減少する)
  • 朝の頭痛や疲労感
  • 食欲低下や体重減少
  • 鳩胸や漏斗胸(いびきや、呼吸の強弱が柔らかい肋骨に負荷をかけ変形する可能性がある)


子どものいびきがひどく、上記のような症状が伴う場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性を考えて受診をすることをおすすめします。

(3)子どもの睡眠時無呼吸症候群の対策

  • 扁桃やアデノイド肥大のチェック:耳鼻咽喉科で診断を受け、必要に応じて手術を検討する。
  • アレルギー治療:鼻炎の治療や環境整備を行い、鼻呼吸を促す。
  • 肥満対策:バランスの取れた食事と運動習慣を意識する。
  • ストレッチ:胸郭の柔軟性を高めるようなストレッチを行う。
  • 歯科矯正:顎の発達が不十分な場合は、歯科医と相談し適切な矯正を行う。
  • 寝る姿勢の調整:仰向けではなく、横向きで寝るようにすると気道が確保されやすくなる。
  • 加湿器の使用:乾燥を防ぎ、気道の粘膜を保護することで呼吸のしやすさを向上させる。
  • 鼻呼吸の習慣づけ:昼間の意識的な鼻呼吸のトレーニングや、夜間に口テープを使用する。

    成長期の子どもは呼吸機能が未熟で、影響を受けやすいため、早期の対策が重要です。

3.高齢者の睡眠時無呼吸症候群の特徴と対策

高齢者は加齢による筋力の低下で、睡眠中に気道がふさがりやすくなり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことがあります。
睡眠時無呼吸症候群は認知症の悪化にも関連していることが分かっています。

(1)高齢者の睡眠時無呼吸症候群の原因

加齢による生理的な変化や生活習慣が、無呼吸症候群の発症リスクを高めます。

  • 筋力の低下:加齢に伴い喉の筋肉が衰え、気道が閉じやすくなる。
  • 肥満:特に首回りの脂肪が気道を圧迫し、呼吸が妨げられる。
  • 神経系の変化:呼吸を制御する神経の働きが低下し、中枢性無呼吸のリスクが高まる。
  • 薬の影響:睡眠薬や鎮静剤が気道の筋肉を弛緩させ、無呼吸を悪化させることがある。

(2) 高齢者の睡眠時無呼吸症候群の症状

高齢者の睡眠時無呼吸症候群の症状は以下のような症状があります。

  • いびきや呼吸停止
  • 夜間頻尿
  • 日中の強い眠気や疲労感
  • 記憶力や認知機能の低下
  • 高血圧や心疾患の悪化

    睡眠時無呼吸症候群は認知症と以下のような関連があることが分かっています。
    睡眠中の脳の低酸素状態と睡眠の分断化によって、記憶を司る海馬と前頭葉の神経細胞にダメージが起こります。また、認知症の原因物質とされるタンパク質であるアミロイドβ(ベータ)は日中に貯留して、睡眠中に脳の外に排出されます。睡眠が分断され短時間になることでアミロイドβが排出されずたまり続けることも認知症の悪化と関連すると考えられています。

(3) 高齢者の睡眠時無呼吸症候群の対策

  • 生活習慣の改善:適度な運動とバランスの取れた食事を心がける。
  • 睡眠環境の調整:枕の高さを調整し、横向きで寝ることで気道の確保を助ける。
  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)の活用:重症の場合、医師と相談してCPAP装置の使用を検討する。
  • 服薬の見直し:睡眠薬などの影響を受けている場合は、医師と相談して代替策を考える。
  • 顔・口周りの筋力トレーニングの実施:口周りの筋肉を鍛えることで、気道の閉塞を防ぐ。
  • 禁酒・禁煙:アルコールやタバコは気道の筋肉を弛緩させ、無呼吸を悪化させるため控える。
  • 適切な体位管理:背中にクッションを入れるなどして、無意識のうちに横向きで眠れる環境を整える。

4. まとめ

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、子どもから高齢者まで幅広い年齢層に見られる疾患であり、放置すると発育・発達障害や認知機能の低下など深刻な健康リスクを伴います。子どもの場合、扁桃やアデノイドの肥大、肥満、鼻詰まりなどが主な原因となり、集中力の低下や成長の遅れを引き起こす可能性があります。一方、高齢者は筋力低下や神経系の変化により無呼吸が生じやすく、認知症との関連も指摘されています。予防には、体重管理、適切な睡眠姿勢、顔や口周りの筋力トレーニングなどの生活習慣の改善が重要です。睡眠時無呼吸症候群は早期発見と適切な治療で改善も可能なため、年齢ごとの特徴を理解し、必要に応じて専門医に相談することが健康維持の鍵となります。

<参考文献>

  1. 末松義弘(2023)『いびき、無呼吸症候群に殺されない27の方法』中央精版印刷株式会社
  2. 白濱龍太郎(2019)『こんなに怖い 図解 睡眠時無呼吸症候群』株式会社日東書院本社
  3. 宮崎泰成、秀松雅之(2018)『いびき!?眠気!?睡眠時無呼吸症を疑ったら 周辺疾患も含めた、検査、診断から治療法までの診療の実践』株式会社羊土社

この記事を書いた人

清水千夏
<プロフィール>

看護師経験15年(大学病院9年、訪問看護4年)
大学病院で、急性期(消化器外科、心臓血管外科、HCU)から退院支援部門まで幅広く経験を積む。その後、訪問看護ステーションに転職。

現在は立ち上げから関わっている訪問看護ステーションで勤務。0歳から100歳まで様々な年齢の方を対象に、住み慣れた自宅で暮らし続けるための支援を提供している。

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