
平均的な日本人が一日に家で過ごす時間は13~14時間と言われています。
一日の半分以上過ごす家の環境は、あなたの健康に大きく関係していることは明らかです。
どのような住まいが、健康にいい影響を与えるのでしょうか。
全5回に分けて、健康と住まいの関係性についてまとめていきたいと思います。
第1回目の本コラムでは、室温からみる健康づくりについてお伝えします。
もっと快適な住まいづくりの参考になれば幸いです。
この記事の目次
1. WHOが推奨する健康的な室温
健康的な住まいを作るために重要となる要素の一つは「室温」です。
WHOが発表した「住まいと健康に関するガイドライン」では、室温を18℃以上に保つことを推奨しています。
その根拠として、2点のエビデンスが挙げられています。
①呼吸器系疾患

・COPD(肺疾患)を対象とした調査より、室温が21℃以上である群のほうが健康状態が良好であることを確認、また室温が18.2℃の場合、呼吸器機能障害が軽減されたことを報告
・小児喘息を対象とした調査より寝室室温が上昇すると肺機能が上昇することを確認
②心血管系疾患
・60歳以上を対象とした調査より、住宅の寒さは居住者の高血圧と関連があることを確認
・スコットランドでの研究では、18℃未満の住宅の居住者は高血圧になるリスクが高まる可能性を確認
・イギリスの研究では、室温が1℃上昇すると血圧が0.5mmHg低下することを報告
これらの研究結果から、
・住宅の室温は、健康への悪影響から居住者を保護するため十分に高く保つ必要がある
・冬季における最低室温として18 ℃を推奨されている
上記2点をWHOは強く勧告しています。
しかし、日本は他国と比較し、断熱住宅も暖房利用も普及が遅れており、最低室温18℃を満たさない家が多いのです。
その割合は驚くべきことに90%以上!
あなたの住まいは大丈夫でしょうか?
2. 日本の住まいが寒い理由
なぜ日本の住まいは寒いのでしょうか。
理由はたくさん考えられますが、代表的な3点をご説明します。
①夏を快適に過ごすことを優先した構造
日本の家は高温多湿な夏を過ごしやすくするため、通気性の良い構造になっています。
しかしこの構造は、冬の寒さを防ぐ構造にはなっていません。
冬は寒いのが当たり前と考えており、今もその考えが根強く残っているように思います。
日本家屋の多くがすきま風に悩まされているのは、この構造が原因なのです。
②断熱性・気密性の基準が他国に比べて低い
戦後、高度経済成長期に入り、たくさんの家が建てられました。
当時の国が定める建物性能の基準は、必要最低限だったそうです。
見た目重視の建物が主流となり、快適さや安全性は軽視されていました。
断熱性・気密性の基準がようやく定められたのは1980年頃で、現在は少しずつ改訂されています。
しかし、十分な性能を持つ住まいの普及はなかなか進んでいないのが現状です。
③部分的に暖める暖房器具が主流
他国は家全体を暖めるセントラルヒーティングが主流ですが、日本はコタツやストーブなど部分的な暖房器具が多く使われています。
日本の家は先述した通り、通気性が良く、断熱性・気密性も十分ではない家がほとんどです。
そのような家では高性能な暖房器具でも十分な効果を発揮できず、部分的な暖房のほうが効率がよいとされています。
そのため、居室は暖かいものの、浴室・トイレ・廊下・寝室などは暖房がなく、同じ室内でも寒暖差が生じ、より寒く感じるようになります。
3. 健康的な室温で過ごすメリット
時代の流れとともに、冬の室温低下が健康状態に及ぼす影響が非常に大きいことが明らかになってきました。
日本で行われている室温と健康に関する調査・研究を参考にしながら、健康的な室温で過ごすメリットをお伝えしたいと思います。
①病気の悪化を予防できる
最低室温を18℃以上に保つことで、病気の悪化を防ぐことが出来ます。
具体的な病気は以下の通りです。
・呼吸器系疾患(COPDや喘息の悪化など)
・心血管系疾患(高血圧、心電図異常など)
・風邪
・関節症
・腰痛症
・糖尿病
・総コレステロール値の上昇
・過活動膀胱
・夜間頻尿
・睡眠障害 など
②活動量が増加する
室温が上がると、コタツやストーブといった部分的な暖房器具を手放すことができます。
コタツを使用している人は、使用していない人に比べて座っている時間が長くなる傾向にあります。
実は座っている時間が長いほど寿命が短くなるという調査報告もあります。
部分的な暖房器具を手放すことで、最大で約50分の活動時間が増加するとも言われています。
③入浴中の事故が減る
室温の変化によるストレスで起こりやすいのが血圧の変動です。
先述した通り、血圧の変動が大きいと心血管系の疾患を招きやすく、病状を悪化させる要因にもなります。
特に冬場の入浴は、脱衣所や浴室との温度差が大きくなる傾向にあります。
ヒートショックによる事故は浴室で起こりやすく、死亡事故も少なくありません。
ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所に移動した際に起こる急激な温度変化によって心血管に大きな負担が明かる現象を指します。
一般的に10℃以上の温度差がある環境で起こりやすいと言われています。
家の最低室温18℃を保つことで、ヒートショック現象のリスクは限りなく低くなります。
4. まとめ
このコラムでは
✓ WHOが推奨する健康的な室温は18℃
✓ 日本の住まいが寒い3つの理由
✓ 健康的な室温で過ごすメリット
についてお伝えしました。
住まいを健康的な室温を保つためには、いろいろな方法があります。
例えばリフォーム、暖房機器の変更などが挙げられます。
その中でも、最もオススメしたいのが窓周辺から整えることです。
厚手のカーテンに変更したり、窓に断熱ボードを使用したりと手軽で安価な方法もあります。
なぜ窓周辺を勧めるかというと、家の熱が出ていく原因の大部分が窓だからです。
住まいの寒いなと感じる部屋の窓からでもよいので、工夫していただけると嬉しいです。
注意していただきたいのは、WHOが推奨している18℃はあくまでも「最低室温」です。
日本の気候であれば、4~5月頃と10~11月頃といった時期になるでしょうか。
服装で例えるなら、薄手の長袖Tシャツ1枚で過ごせる方もいれば、人によってはトレーナー生地の服やカーディガンなどの羽織ものが必要になるでしょう。
年齢や性別、その方の状況によって、健康的な室温は異なる場合があります。
ご自身が快適だなと感じた時、室温を確認して住まいの環境を整えるのに参考にしてみてはいかがでしょうか。
次回のコラムは、「住まいの湿度」についてお伝えします。
そちらも併せてお楽しみくださいね。
<参考>
・WHO 住まいと健康に関するガイドライン
・国土交通省 省エネ住宅でかなう健康&快適生活
・東京都福祉保健局 健康・快適居住環境の指針
・厚生労働省 室温と高血圧、睡眠の関係
この記事を書いた人
冨永美紀
母親の入院で関わった看護師に心を打たれ、看護師資格を取得。
看護師の現場で、臨場の場に立ち会うことで『生死』について興味が沸く。
恩師の紹介でお寺とのご縁が結ばれ、2020年から密教塾生となり修行の世界へ。
現在は仕事と修行を両立するため岐阜県へ移住し、夫と犬2匹と自然豊かな場所で暮らす。
<経歴>
看護師歴10年
・腎臓内科、糖尿病内科、内分泌科病棟
・救急救命センター
・自由診療のクリニック
・コールセンター
・訪問看護ステーション
・家事代行業