
「もし一人で入院することになったらどうなるのだろう」
そんな不安を感じたことはありませんか。
普段は元気に生活していても、けがや病気は突然やってきます。特に一人暮らしの場合、入院や手術が必要になったときに、「誰に頼ればいいのか」「何を準備すればいいのか」と戸惑うこともあるかもしれません。
近年では、高齢の方に限らず、身寄りがない方や、家族はいるけれど、遠方に住んでいて疎遠にしているという方も増えています。
医療の現場でも、「一人で医療を受ける」という状況は特別なものではなくなってきています。
実際に、国も身寄りがない人であっても安心して医療を受けられるようにするための指針を示しており、医療機関はこうした考え方に基づいて対応を行っています。
では、身寄りがない方が医療を受けるとき、どのようなことが起こる可能性があるのでしょうか。
今回は、看護師の視点から、入院時に直面する可能性があること、知っておきたいポイントについてお伝えします。
この記事の目次
1.一人で入院するときに直面する問題

一人で入院する場合、まず直面するのが「手続き」の問題です。
入院時には、書類の記入や持ち物の準備、治療に関する説明の確認など、さまざまな対応が必要になります。家族がいれば一緒に確認したり、サポートしてもらえたりする場面ですが、一人の場合はこれらをすべて自分で行う必要があります。
例えば、入院当日に必要な持ち物が揃っていなかったり、書類の記入に戸惑ったりすることもあります。体調が優れない中で準備や手続きを進めることは、想像以上に負担が大きいものです。
また、入院中に体調が変化したときや、治療方針について説明を受ける場面でも、基本的には自分で判断していくことになります。
さらに、意外と見落とされがちなのが「生活に関すること」です。
例えば、自宅にペットがいる場合、急な入院によって世話をする人がいなくなってしまうことや、入院後の自宅の片づけや管理をしてくれる人がいないことが問題になる場合があります。医療の現場では、こうした生活面の問題も含めて対応が必要になることがあり、「医療」と「生活」は切り離せないものだと感じます。
2.医療の現場で実際に起きていること
身寄りがない方の入院では、「医療」だけでなく「生活全体」をどう支えるかが大きな課題になります。
例えば、
・緊急連絡先がいない
・退院後の生活の見通しが立てにくい
・手続きや支払いのサポートが受けにくい
といった状況になることがあります。
また、入院時には保証人を求められることがあり、対応に悩まれる方も少なくありません。さらに、手術や治療の方針をどのように決めていくのか、医療費の支払いをどう準備するのか、将来の医療や最期の過ごし方をどう考えるのかといった問題も、一人で向き合う必要が出てきます。
こうした課題は、一つひとつが大きな不安につながります。
また、入院中に体調が急に変化した場合や、治療の方針について早めに判断が求められる場面では、一人で対応することに不安を感じる方もいます。
実際の現場では、「誰に相談すればいいのか分からない」「自分の判断で大丈夫なのか迷う」といった声を聞くことも少なくありません。
3.一人でも医療は受けられる
身寄りがない方が入院する際の、問題を挙げてきましたが、ここで大切なことをお伝えします。
身寄りがないからといって、医療が受けられないわけではありません。
医療機関は、必要な医療を提供する役割を担っており、基本的には患者さんの状況に応じた対応が行われます。
また、医療の現場では、医師や看護師だけでなく、医療ソーシャルワーカーなどの専門職が関わり、医療費や生活の不安、退院後の生活について一緒に考えていきます。
また、入院時の準備が難しい方に向けて、衣類や日用品などを有料で貸与するサービスもあります。
私自身も現場で、「一人で準備ができるか不安」という声を聞くことがありますが、こうしたサービスを利用することで、入院前の負担が軽減され、「安心して入院できた」と話される方もいます。
実際に自治体でも、身寄りがない人が安心して入院できるように、入院時の生活支援や手続きのサポートなどを行う取り組みが進められています。
つまり、一人であっても医療を受けることはできますが、周囲の支援をどのように活用するかが大切になります。
すべてを自分一人で抱え込むのではなく、利用できる支援を知っておくことが安心につながります。
4.今から考えておきたいこと
一人で医療を受ける可能性がある場合、あらかじめ少し考えておくだけでも、いざというときの安心につながります。
例えば、
・緊急時に連絡できる人を決めておく
・ペットや自宅のことを頼める先を考えておく
・医療や生活について相談できる窓口を知っておく
といった準備は、大きな助けになります。
こうした準備は、すぐにすべてを整える必要はありませんが、「誰に相談できるか」「何を頼めるか」を考えておくだけでも、いざというときの安心感が大きく変わります。
すべてを完璧に整える必要はありませんが、「もしものとき」を少しイメージしておくことが大切です。
5.まとめ
一人で入院することになった場合、不安を感じるのは自然なことです。
実際に、手続きや生活面などで困る場面があるのも事実です。しかし、医療の現場では、そうした状況に対応するための支援や制度があり、一人でも医療を受けることは可能です。
また、入院時の保証人や治療の同意、医療費の支払い、最期の医療の選択などについても、事前に知っておくことで、いざというときの不安を軽減することができます。
これらの内容については、次回以降の記事で詳しくお伝えしていきます。
一人でも、医療に困らないために、今からできる小さな準備を、少しずつ一緒に考えていきましょう。
〈参考資料〉
・厚生労働省
「身寄りがない人への医療に関するガイドライン」
「身寄りがない人への医療に関するガイドライン」
・東京都
「身寄りがない人の入院に関する事例集」
・神奈川県 ほか
「身寄りがない人の支援に関するガイドライン等」
・港区
「身寄りがない人への医療・生活支援に関する取り組み」
・日本医療社会福祉協会
関連資料
この記事を書いた人
清水千夏
<プロフィール>
看護師経験15年(大学病院9年、訪問看護4年)
大学病院で、急性期(消化器外科、心臓血管外科、HCU)から退院支援部門まで幅広く経験を積む。その後、訪問看護ステーションに転職。
現在は立ち上げから関わっている訪問看護ステーションで勤務。0歳から100歳まで様々な年齢の方を対象に、住み慣れた自宅で暮らし続けるための支援を提供している。