2023年12月30日に歌手の八代亜紀さんが『抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎』の合併症による急性進行性間質性肺炎で逝去されたことは世間をとても驚かせました。これにより多発性筋炎・皮膚筋炎がメディアで取り上げられるようになり社会的にも関心が高まっています。
これらの病気は膠原病の一つですが、そのメカニズムはまだ完全には解明されておらず、医学的にも完治は難しいといわれています。
特に皮膚筋炎はガンや間質性肺炎を合併するリスクが高く、急速に進行すると命を落とすことにもなりかねないため早期発見、治療の重要性が広く認知されつつあります。
今回は30代から60代と幅広い年代に多い多発性筋炎・皮膚筋炎についてお伝えします。早期発見がなぜ重要なのか一緒にみていきましょう。
この記事の目次
1.多発性筋炎・皮膚筋炎の違いは?
二つの病気には大きな違いがあります。
①原因の違い
多発性筋炎は細胞が直接筋肉を攻撃しますが皮膚筋炎は皮膚や筋肉の血管を攻撃します。
②皮膚症状の有無
多発性筋炎は皮膚症状がみられず、皮膚筋炎は特徴的な赤い発疹が出現します。
多発性筋炎・皮膚筋炎はともに二の腕、首など、骨格筋に炎症が起きて筋力が低下し、力が入りにくい、疲れやすいといった症状から始まりますが、皮膚筋炎の方がガンや間質性肺炎などの合併症を引き起こすリスクが高いといえます。
2.多発性筋炎・皮膚筋炎はどのように進行するのか?
①筋肉に炎症が起きる(多発性筋炎・皮膚筋炎)
初期症状として立ち上がりにくさ、起き上がりにくさで始まり、階段の昇降時に疲れや脱力感を感じるようになります。これは、肩や股関節、太ももなど体の中心に近い筋肉に炎症が起きるためです。
②特徴的な皮膚症状が出現する(皮膚筋炎のみ)
- ヘリオトロープ疹:上まぶたに現れる浮腫みと赤色の発疹
- ゴットロン丘疹:手の指関節の背面に表面がガサガサして盛り上がった赤色の湿疹
- Vネック型紅斑:首から胸にかけてⅤ字型に現れる発疹
③生活動作が困難になる(多発性筋炎・皮膚筋炎)
進行すると寝返りが打てなくなり、立ち上がれない、歩行が困難になるといった症状が現れます。
④嚥下障害・構音障害(多発性筋炎・皮膚筋炎)
更に進行すると、舌、喉の筋肉の炎症により嚥下障害や発音がしにくくなる構音障害を引き起こすことがあります。
➄多発性筋炎・皮膚筋炎
最も警戒される合併症は間質性肺炎とガンです。
間質性肺炎とは酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞の壁(間質)に炎症が起きて壁が厚く硬くなり線維化してしまう症状です。一般的な肺炎のように細菌やウイルスが原因ではなく自己免疫が自分自身の肺を攻撃する場合に起こります。
特に『抗MDA5抗体』が陽性の皮膚筋炎は、筋肉の症状が出ないまま間質性肺炎を合併し重症化する場合があります。
また、皮膚筋炎では「TIF-1γ抗体」という血液中の自己抗体が陽性である場合、ガンを発症するリスクが高くなります。
一般的に皮膚症状が長引く、腕が上がりにくい、起き上がりにくいなどに違和感を感じ、皮膚科や整形外科を受診するケースが多い傾向です。
年のせい、疲れているだけと思わずに気づいた時点で受診をすることが早期発見と治療につながります。
3.早期発見のために出来ること
多発性筋炎・皮膚筋炎自体は受診し、適切に治療を行えば日常生活を続けることが出来ます。しかし、ガンや間質性肺炎を合併すると急速に状態が悪化し、命に危険が及ぶことがあります。そのため早期発見、早期治療が予後を決定する最大のポイントになります。
早期発見のために出来ることを次にお伝えします。
①定期的な受診を徹底する
問診では自覚症状を確認し、観察しながら進行状態をみていきます。
新たな症状がなくても合併症の早期発見のためには全身の検査が必要です。
⑴ガンを早期発見するための検査
皮膚筋炎の患者の約15~30%の患者がガンを発症しており、これは一般的な人と比較し3倍の確率です。皮膚筋炎を発症してから1年以内にガンが見つかることが多いとされています。
特に胃ガン・肺ガン・乳ガン・大腸ガン・卵巣ガン・子宮がんの発症率が高いため、定期的に下記のガン検診によって対策をしていきます。
受診では合併症を確認するために以下の検査が実施されます。
- 血液検査(ガンの指標となる腫瘍マーカーを測定)
- 全身のCT検査
- 胃カメラ
- 大腸カメラ
- 婦人科検診
- 血液検査(腫瘍マーカー)
⑵間質性肺炎を早期発見するための検査
筋力低下が少ない患者でも『抗MDA5抗体』を持っていると非常に高い確率で間質性肺炎を合併するリスクが高まります。
そのため診断された後の定期受診では以下の検査を行います。
- 血液検査(間質性肺炎を合併しやすい抗MDA抗体などを調べる)
- 胸部レントゲン・CT検査
- 呼吸機能検査
- 血液中の酸素飽和濃度を測定
②いつもと違う症状を見逃さない
以下の症状は間質性肺炎の初期のサインです。
気づいた時点で主治医に連絡し指示に従うようにしましょう。
- コンコンと痰が絡まない乾いた咳が続く
- 少し歩いただけで呼吸が苦しくなってきた
- だるい・食欲がない
- 胸の不快感、食べ物が飲み込みにくい
- 微熱がある
定期受診を徹底し、治療を続けること、気づいたことは必ず主治医に伝えることで合併症の早期発見が出来るようになります。
同時にセルフケアを取り入れながら病気と上手く付き合っていきましょう。
4.多発性筋炎・皮膚筋炎と付き合うためのセルフケア
膠原病のセルフケアにおける最大のポイントは病気と薬の副作用による免疫低下と感染リスクのコントロールです。体力を保ちながら感染対策を行うことで病気と上手く付き合うことが出来ます。具体的なセルフケア以下の通りです。
①充分に休息する
症状を感じない時でも時間を決めて休むようにしましょう。
長時間集中する作業や立ち仕事はストレスのもとになり、免疫力を低下させます。また、寝る前にスマートフォンやパソコンの画面を見るとブルーライトが睡眠の妨げになるため避けるようにします。
②手洗い・うがいを徹底する
風邪などの感染症にかかると間質性肺炎を悪化させる原因にもなりかねません。外出後、作業の後などこまめに手洗いやうがいを行いましょう。心配であればインフルエンザや肺炎の予防接種も受けておくと安心です。
③バランスの良い食事
動物性脂肪や加工食品を摂りすぎると腸内環境を悪化させ免疫力を低下させます。薬物治療で使用するステロイドは食欲増進の作用があります。服用開始から1週間程度で空腹感を感じるため、いつもより食べ過ぎて体重増加、糖尿病のリスクが高まります。カロリーの高い間食を控えて低カロリーでも満腹感のある海藻や野菜を活用するようにしましょう。
あまりにも空腹感が強くてストレスを感じるようであれば主治医に食事の管理方法や減量法について相談してみましょう。
④定期的な運動
適度な運動は免疫力を高め、感染症の予防に効果があります。しかし、多発性筋炎・皮膚筋炎では急性期に無理に体を動かすとかえって筋肉を傷めることになります。必ず医師の許可をとったうえで行うようにしましょう。
お勧めはウオーキングやストレッチ、ジグリング(手足をぶらぶらする貧乏ゆすり)などです。心地よいと感じる運動を定期的に取り入れていきましょう。
また、ラジオ体操は3分で全身の筋肉や関節を動かすことが出来ます。体調によっては動きを小さくすること、回数を減らすなど工夫して行いましょう。
軽い運動でも血行促進によって自律神経が整い、リラックス効果や免疫力の維持に効果が期待できます。
まとめ
多発性筋炎・皮膚筋炎は、完治することは難しい病気ですが、早期に発見し適切な治療を行うことで、日常生活を続けることが可能になります。しかし、ガンや間質性肺炎を合併すると、命に重大な危機を及ぼすことにもなりかねません。
定期受診と治療を土台にして無理のないセルフケアを続けることが病気と上手く付き合うポイントです。
<参考資料URL>
難病情報センター皮膚筋炎/多発性筋炎
https://x.gd/y5VfB
一般社団法人日本血液製剤機構
https://x.gd/ar9A2
この記事を書いた人
福井 三賀子
看護師歴20年。
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、熱傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務し、ケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、家族の関係性が社会的な問題に発展していることに気づき、介護者が多い更年期について探究し始める。 現在は、更年期探究家として50代女性対象の講座を開講しながら、動画配信やブログを通じて更年期女性の自律を応援するために活動している
<経歴>
看護師経験20年。外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム・グループホーム)
介護支援専門員6年
(一般社団法人)日本ナースオーブ 常務理事
<活動>
講座「更年期は黄金期」他
ブログnote「幸せな更年期への道のり」
動画配信YouTube「看護師mikakoの更年期チャンネル」
著書『更年期は黄金期』GalaxyBooksより出版
合気道家