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少子高齢化の現代は全国でも救急搬送の件数は年々増え続けています。
2022年の総務省消防庁のまとめによると、搬送車のうち6割超にあたる386万2874人が65歳以上の高齢者であったそうです。
もし、目の前で人が倒れた時やご家族の緊急事態に自分しかいなければ、救急要請や通信司令員とのやり取りを自らが行うことになります。
命のバトンをつなぐためには知っている情報、起こっている状況をありのまま伝えることが傍にいる人の役割です。
いつ何時起るかも知れない緊急事態に備えて、救急搬送する際に付き添う人の役割についてお伝えします。
この記事の目次
救急車が到着するまでの役割
救急車を呼んでから到着するまでおおよそ8分~9分かかります。
到着時間を早めるため伝えること
- 状況をありのまま
- 傷病者と通報者の氏名と年齢
- 所在地など質問された内容を通信司令員に確実に
司令員は慌てている家族の状況を踏まえた対応ができるよう、教育を受けているため心配はいりません。
質問の答えを聞いて上手く誘導してくれます。
そして、救急車が到着するまでに何をどうすればよいのかを順序立てて教えてくれますので、伝えられた通りに指示に従うようにしましょう。
他に家族がいた場合
傷病者の対応 | 応急手当てをする人 指示を伝達する人 |
嘔吐している | 体を横に傾けておく ※窒息を防ぐため |
意識がもうろうとした人 | 声をかけ続ける |
他人の場合
近くで倒れた場合 | 人を呼ぶ 119番に通報 |
役割分担 | 救命措置 119番に通報する人 ※司令員の指示に従い、救急車のサイレンが聞こえるまでは協力しながら救命措置を行う。 ※傷病者個人を確認しようと持ち物を探るのは救急隊の仕事になるので控える。 (免許証などの個人情報が第三者の手に渡ると確認に手間を取り余計に時間がかかってしまうから) |
通信司令員からの質問
消防か? 救急か? | 救急。 |
住所 | ゆっくりと落ち着いて番地まで答える。 ※緊急性が優先される場合はこの時点で出動が開始。 ※屋外や施設などで場所が特定しにくい場合は目印になる建物や電信柱に表示されている電柱番号からも位置が特定できます。 |
状況確認 | 意識はあるか? 呼吸は速いか? 痛みがあればその部位を伝える。 |
生年月日(年齢) 名前 | 正確な年齢がわからなければおおよそで構いません。 ※わからない質問は司令員に「わからない」と答える。 |
(通報者) 名前 電話番号 | 聞かれるので答える。 |
2.救急車が到着してからの役割
救急車が到着したら、救急隊員が意識状態を確認し血圧や脈拍など、身体状況の確認をします。
家族であれば既往歴、服薬中の薬やかかりつけ医を聞かれます。
その情報をもとに救急車の中で受け入れ先の病院を探していきますので、家族の受診情報は把握していた方が良いですね。
※この時、病院の受け入れ状況によっては時間がかかる場合がある。
宗教上の理由で治療に制限がある場合は、早めに隊員に伝える。
搬送先の病院が決まれば出発となるため必要なお手伝いをする。
※出口のドアを開放し、周囲の荷物をよけてストレッチャーが通りやすいようにするなど。
傷病者の細かい情報をとる場合もありますので家族はできる限り同乗した方が救急隊は助かります。
その時は保険証、現金、お薬手帳など必要なもの忘れずに持参する。
身内や知人以外は付き添う必要はありませんが、必要な個人情報は聞かれる場合があります。
3.救急車で搬送中の役割
状態にもよりますが、早急に点滴が必要な場合は救急救命士によって点滴を開始することがあります。
点滴が外れないような工夫はされていますが、認知症などの疾患によっては手足を激しく動かす場合があるので不安を軽減するための声かけは重要です。
また、救急車で搬送中の方の中には気管チューブが挿入したり電極が装着されている場合があるので、傷病者が医療機器に触れないように見守ることも大切な役割です。
私の経験では、嘔吐を繰り返す高齢者の搬送時に背中をさすったり、吐物を受けたりと付き添う人の役割は大切であると感じました。
救急車は急いで走行しなくてはならないため、車体が相当揺れるのでは?と思うかも知れませんがそうではありません。
意識のない人は脳に血流障害を引き起こしている可能性もあるため、症状を助長しないように運転は慎重にされます。
また、骨折では、振動するたびに痛い思いをしないように道路を選択する場合もありますので同乗者は傷病者に集中することが出来ると思います。
4.病院に到着してからの役割
到着後、傷病者は救急治療室に移動します。
付き添いの家族は救急外来の受付窓口で手続きを済まる。
その間に救急隊は搬送者を処置室に送り、必要な情報を病院側に伝えて役割を終えますが、家族は検査が終わるまで待合室で待機する。
検査が終われば医師や看護師から病状の説明がありますが、入院の必要性がある場合は入院手続きや必要物品の用意を行う。
そのような時に困らないよう入院セットを準備してくれるサービスもありますので活用すると良いでしょう。
5.まとめ
私は家族の立場で救急車に同乗したことがありますが、救急隊員の方はてきぱきした動きの中にも優しさと思いやりが感じられてとても親切だという印象があります。
緊急時は誰もが冷静に行動できるとは限りませんので、こうした対応は本当に有難いことです。
救急車を利用する側も、救急隊の業務が効率よく行われるよう日頃から家族の受診状況を確認したり保険証や診察券の保管場所を共有したりと緊急時にすばやく準備ができるようにしたいですね。
お世話になった救急隊員にお礼を言いたいと思われる方も多いと思いますが、病院へ搬送された後は慌ただしく検査や処置に進むので、救急隊と言葉を交わす時間はないでしょう。
所属の消防署がわかるのであれば感謝の言葉を手紙にして送ると喜ばれます。
感謝の手紙はきっと日ごろ忙しく働いている救急隊員の励みになると思います。
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この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」