目の前にいる人が急に意識を失ったり具合が悪くなったりすると、どうして良いかがわからずあたふたとしてしまいます。
このようなことは、めったにない事ですが、急変は様々な場所で予期せず発生するものです。
その時の判断が一人の命を救うことにも繋がりますので的確な行動がとれるようにしておくと安心できます。
今回は救急車を呼ぶ判断についてお伝えします。
この記事の目次
1.まずは安全の確認をする
急変した人を発見した場合、いきなり近づくのではなくまずは安全を確認する必要があります。
これには周りの状況を確認すること、感染予防から自らの危険を回避する二つの意味があります。
倒れた人を見かけたら慌てて近寄らずに、まずは周囲を確認し、自分の安全を優先しましょう。
①周囲の状況確認をする
人が倒れていた場合はまず、周囲が安全な状況であるかを確認する必要があります。
倒れている人が落下物や飛来物で怪我をしている場合は、慌てて近づくと、再び落下した物などで自らが被害を受ける可能性があります。
また、道路に面している場所や車の死角になる場所で人が倒れている場合は車にはねられないように注意をする必要がある。
まずは周りの人を呼び応援を求めていきましょう。
➁感染予防
倒れている人すべてに感染の疑いがあると判断するのが基本的な考え方です。
これは、倒れている人の血液や体液、分泌物によって感染媒体を受け取らないようにするためです。
呼吸をしていない場合でも、救急隊が到着するまでは人工呼吸はせずに胸骨圧迫にとどめます。
その時に自らもマスクを付け、倒れている人の鼻や口にハンカチやタオル、衣類などの布で覆い飛沫を防ぐようにしましょう。
また、血液や嘔吐物、体液は付着がある場合は触らないように気を付けることが大切です。
対応する際に医療用の手袋を付けると良いのですが、持ち合わせていない場合も手袋をした場合でも、救急隊に引き継いだあとには必ず流水と石鹼で手洗い、うがいをすると二次的な感染が予防できます。
2.判断と行動について
①まずは意識があるか、ないかを確認する。
周囲の安全が確認された後は意識があるか、ないかを確認します。
意識がない状態というのは呼びかけや痛みなどの刺激を加えても、反応がない状態です。
軽く肩を叩き「大丈夫ですか」と耳元で呼びかけても反応しない場合は、手背や腕をつねり痛みで反応するかを確認します。
それでも反応がない場合は意識がないと判断します。
外傷とは違い体の内部で起こっていることはなかなかわからないものですが、呼吸はしている、いびきをかいて眠っているようでも反応がない、ボーッとして反応が鈍い時は脳の血流障害があると考えます。
また、慢性疾患として多い糖尿病を持病としている方は、低血糖症状になると意識を失います。
前兆として顔面蒼白や大量の冷汗や震えがあるとブドウ糖を摂取しますが、意識を失った場合は医療処置が必要になります。
高齢者は心疾患や糖尿病などの慢性疾患を持病とされている方も多く、それにより身体機能が低下していることがあります。
寒暖差などで血流が悪くなると虚血性心疾患を発症しやすく、意識を失った際に頭部を強打し、意識消失につながることもあります。
意識がなければ救急要請が必要と判断しましょう。
➁むやみに動かしてはいけない場合
目の前で倒れた人を見た場合、まず、安全な場所に移動します。
嘔吐があれば窒息する可能性があるため、体を横にして吐物によって気道が閉塞しないようにします。
落下物や交通事故による損傷で倒れている場合は意識があっても頸椎や脊髄を損傷している場合があります。
骨折した際に折れた骨が頸椎や脊髄の神経を圧迫すると呼吸障害や麻痺を引き起こすことにつながりますので無理やり動かすことはせずに救急車が到着するまでは首をタオルで固定したり上着など、厚みのあるもので姿勢を保持できる工夫をしましょう。
③人を呼ぶ
意識がない人を発見した時にはまずは人を呼びましょう。
協力者で役割を分担すると救急車が到着するまでの時間、命をつなげることが出来ます。
心臓が停止して4分の間に心臓マッサージをすると、救命の確率は50%ですが何もしないと20%にまで下がります。
協力者を求める事、救急車に連絡をする人、AED(自動体外式除細動器)を探す人や救命措置を行うそれぞれの役割で救命の連鎖が広がります。
以下に一次救命の手順を載せましたので参考にしてください。
一次救命の手順
- 周囲の確認
- 意識の確認
- 救助の要請
- 呼吸の確認
- 胸骨圧迫
3.それでも迷ったら
痛みや症状は我慢できる場合でも少しずつ症状が進行していることがあります。
一刻を争うようでない場合は救急車を呼んだ方が良いかをとても迷うものです。
どうして良いかわからず困った時、主治医がいない時などは「救急安心事業センター」に相談すると良いでしょう。
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また、緊急性が高くないと判断された場合でも受診可能な医療機関を紹介したり受診のタイミングについてのアドバイスが受けられたりと非常に便利で安心できるサービスとなっています。
もう一つご紹介します。総務省消防庁の作成した救急受診アプリ通称「Q助」です。
このアプリはスマートフォン、タブレット端末で利用することができます。
画面上で該当する症状を選択していくと緊急度に応じた必要な対応が表示されます。
その後は医療機関の検索や、受診手段の選択ができるようになっているため救急車を呼ぶ判断の目安になります。
4.まとめ
急変した人が救命措置により命をつなぐためには一人ひとりの判断が重要な鍵を握ります。
急変を「避けられる死」にするためには、まず人を呼び周囲に知らせることが最優先されます。
一人ひとりの判断と救急車が到着するまでの役割が救命の連鎖を広げていきますのですぐに行動できるように優先されることを覚えておきましょう。
- 安全のために周囲の状況を確認し感染予防に努める。
- 意識の確認をして必要だと判断したら人を呼び救命の連鎖を広げる。
- 迷ったときは相談できるサービスやアプリを利用する。
この3つを日ごろから意識しておくと、もしもの時でも安心ですね。
現代は高齢化の影響もあり全国的に救急車の出動が増加しています。
救急車の台数には限りがあるため利用が増加することで救急隊の到着時間が遅れてしまいます。
こうした背景から救急医療に関するサービスやアプリが誕生しました。
地域によっても独自のサービスを提供しているところもあるため便利で安心して相談できます。とっさの時に慌てないように見えるところに番号を貼り付けておく、前もってアプリ登録をしておくと安心ですね。
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この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」