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日本の家族構成は核家族から単独世帯の増加へと変容してきています。そして、単独世帯は年々増え続けてきている現状があり、一人暮らしのがん治療に対して不安や心配されている方もおられるのではないでしょうか。
この記事では、入院前、入院中に不安に思われることに対しての解決策や手続きをお伝えしています。
この記事の目次
1人ぐらしが増えている日本
(1)一人暮らしについて
一人暮らしといえば、おひとりさまを連想される方もおられるでしょうか?
2005年に岩下久美子さんという作家さんが提唱し、流行語大賞にもノミネートされ「おひとりさま」という言葉が広がっていきました。
おひとりさまとは一般的なイメージとしては離別や死別した人をイメージして使われることもあるでしょう。
対して一人暮らしとは厚生省の言葉の定義としては単独世帯という言葉で表されます。
(2) 単独世代の定義
単独世帯は単身世帯やシングル世帯とも呼ばれているますが、1人で独立して生計を維持している人のことを言います。
他のご家族様、例えば、お子様がおられても離れて生活をされていれば、単独世帯となります。
単独世帯が増加している背景には核家族化があるでしょう。
核家族が増加した理由として、兄弟数が多く、親と同居できない地方圏出身者が中心となって、大都市圏に転入・定住し、家族をつくったことで核家族世帯が大幅に増加して各家族が進行したと、札幌市立大学の丸山教授が考察しています。
そこから日本の未婚化・晩婚化など結婚に関する問題が表面化し、共働きにより夫婦が持っている子供の数も漸
減傾向にあります。
(3)単独世帯の推移
総務省統計局によると日本の人口は1億2452万人(令和5年6月現在)となっています。
単独世帯の公表されている最新データが令和2年ですので、令和2年の日本の人口を見てみると、1億2614万人でした。
約2年間に約160万人、人口が減少しているのがわかります。
令和2年度の単独世代は2115万人1世帯であり、世帯の38%、およそ4割となっています。
平成27年度の単独世帯は1841万7922世帯で、14.8%増加しています。このように年々単独世帯は増加傾向にあります。
抗がん剤や手術など入院決定時にしておくこと
(1)告知を受ける時
「医師から話を聞くときの心構えについて」にて書きましたが
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できるだけお身内の方か信頼のおける方に同行してもらい、一緒に話を聞いてもらうことをおすすめします。
同居されていないお子様がおられたとするなら、聞いてもらっていたほうがいいでしょう。
心の動揺はどなたも大きく、医師が話す内容も受け入れられない方もおられます。
同席してもらうことで、心の安定にもつながります。また現在の診断や今後の治療方針なども話されるので「同席者にメモをしてもらう」もしくは「医師へ許可をとり録音する」を行い、後ほど何度も見返せるようにしておくことをおすすめします。
そして、その場ですぐに決断するというよりは、ご自宅でゆっくり落ち着きながら今後のことについて考えられるのもいいでしょう。
(2) 治療方針が決定し入院となったら
①身元保証人
手術や入院同意書などに身元保証人のサインを求められることがあります。また手術中など何か不測の事態が起こった時の緊急連絡先を聞かれる場合がほとんどです。お身内の方が遠くともおられるなら話をしていく、またおられない時は、親しい友人に依頼をしておきましょう。
②身元保証人が不在の時
入院前に必ず入院説明を外来で受けられます。その時に身元保証人が不在であることを説明し病院に相談しましょう。
以下のような方法を用意している医療機関もあります
*すべての医療機関で下記対応をとっているわけではありません・クレジットカード番号登録
入院費用の支払いとしてクレジットカードを選択し、病院にカード番号を登録することで、連帯保証人が不要となる方法です・入院保証金
入院時に病院から提示された金額を払い、退院時の差額を支払う方法です。こちらの方法も連帯保証人が不要となります。・保証会社の利用
病院が提携している民間の保証会社を利用する方法です。連帯保証人を提示できない場合、所定の保証料金を支払うことで、一定額までの債務を保証してもらえる制度です。
③自治体や地域包括支援センターへ相談
頼れる方がいない場合は、自治体の支援窓口や地域包括支援センターに相談する方法があります。
介護保険の要介護認定やケアプランの作成だけでなく、「身元保証・身元引受等」のサポート事業もおこなっています。
④民間の身元保証サービスの利用
身元保証人を頼める人がいないときは、民間の身元保証サービスを利用する方法もあります。
入院や介護施設入所時の身元保証を依頼できます。ただし料金体系やサービス内容が異なりますので、よく調べたうえで利用するようにしましょう。
⑤ご自宅の準備
入院が決まればご自宅を整理しておくほうがよいでしょう。
具体的におこなっておくこと7個について説明します。
- 郵便物について郵便局に不在届を提出する。(最長30日間預かってくれます)
- 新聞や牛乳など定期サービスを一時停止する
- 貴重品の整理、戸締りをしっかり行う。病院へは貴重品は盗難のリスクが高いので持参は避ける
- 冷蔵庫はできるだけ中身を整理し、コンセントが抜けるなら抜いておく
- ゴミはできるだけ出す
- ペットを飼っているならペットホテルや知人に預かってもらう
- 電気、ガスを止めておく
⑥持参物品について
入院すると様々な物品が必要になります。
3種類のカテゴリーに分けて記載します。
・重要物品
保険証、印鑑、定期薬(病院からの処方)お薬手帳、診察券
・身の回りの物品
着替え、靴、下着、タオル、スマートフォン、充電コード、少額の金銭、飲み物、シャンプー石鹸など、
コップ、お箸、スプーン、ティッシュペーパー
・趣味やお仕事として
パソコン、ポケットWifi、雑誌、趣味に関するもの、これらに付随する必要な物品
(必須ではないですが、入院中の気分転換になるようなものも時として必要な場合があります)
病院内にコンビニなどが併設している病院もあり、入院後にある程度準備することも可能です。
寝衣などはレンタルしてくれる医療機関も多いでしょう。
入院中は治療(手術や抗がん剤治療など)による副作用(痛み、吐き気など)により、身の回りのことがご自身で困難になることも考えられます。
その時のために、株式会社エランさんは入院セットを個人にもレンタルされています。
こういったサービスを使い、入院中なるべく安楽に過ごす工夫が必要でしょう。
退院後について
治療が終了すれば退院となります。
がんの場合は治療された効果を見るために定期的な外来受診が必要です。
また外来で抗がん剤治療を継続して受けられる方もおられます。
継続的にまた治療内容によっては長期に治療費がかかる方もおられます。
日本には高額医療制度などの治療費をサポートするシステムがあります。
詳しくは、「医療費のサポート体制」に書きました。
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お1人で暮らされていると、治療による副作用により、今までできていた受診行動や日常の家事が困難にな
ることがあります。
そのような場合にそなえて、介護保険の利用や自費サービスを使い、できるだけ安楽に生活できるようなサポートシステムがありますので、次回お伝えします。
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この記事を書いた人
山川幸江
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」