- 職場での上司や同僚、部下との関わり。
- 家庭での夫や妻、子どもとの関わり。
- 友人や知人、近所の人やインターネット上での関わり。
誰かと一緒に何かをするのはやりがいあり、会話をするのは楽しいと感じることが多いと思います。
しかし誰かと関わることは、自分の思っていることが相手にうまく伝わらなかったり、相手が自分の思うように動いてくれなかったりすることで、イライラしたり悲しく感じることがあるかもしれません。
また相手の何気ない一言に、驚いたり傷ついたりこともあります。
このような時に、心の疲れを感じることがあるのではないでしょうか。
疲れには精神的疲労と肉体的疲労があり、精神的疲労の原因は過重労働と人間関係のストレスが原因といわれています。
これまでの記事で、疲労が心や体の不調、さらに病気につながる可能性があることをお伝えしてきました。
前回の記事
看護師がわかりやすく解説!慢性疲労症候群③疲れた心と体のセルフケア
前回の「疲れの種類と原因」では、疲れは休息が必要なことを知らせるサインであり、疲れの原因はストレスであるとお伝えしました。 日本リカバリー協会が全国10万人に調…
今回は人間関係において精神的疲労を少なくする、つまり心を守る方法についてお伝えします。
この記事の目次
1.心とは何か
「心」という言葉を使う機会はたくさんありますが、そもそも「心」とは何かを考えることはあまりないかもしれません。
「心」を使った言葉の一例
私たちの感情や気持ち、気分を表すのに「心」を使うことは多くあるようです。
「心」を国語辞典で調べてみると以下のような意味が説明されています。
- こころ。きもち。精神。対義語は身・体
- 五臓の一つ。心臓。
- まんなか。だいじな部分。かなめ。
近年は「メンタルヘルス」という言葉を耳にすることも増えていますが、「メンタル」とは「心の」「心理的な」「精神的な」という意味で、「メンタルヘルス」は「心の健康」と定義されています。
「心」は目に見えませんが、気持ち、感情、意思といった部分と大きく関係しており、私たちが生きる上で大きな影響を与える部分と考えられます。
近年の脳科学の研究で、感情は脳で作られることがわかってきています。感情を抑えるのも脳の働きということがわかってきています。
慢性疲労症候群の記事の中で、ストレスは脳に影響を与え、免疫や内分泌、自律神経の働きを低下させることをご紹介してきました。
私たちは日頃から「心」を大切にしていますが、「心」は脳と関連する部分が多くあります。「心」と「脳」を守るためにはストレスや疲労から自分を守る必要があります。
2.精神的疲労と肉体的疲労
たくさん歩いたり、スポーツジムでトレーニングしたりした時には体の疲れつまり肉体的な疲労を感じます。
精神的な疲労は、職場や家庭、地域などで人間関係において感じる疲労です。
疲労の原因は「心理・社会的ストレッサー」です。
普段私たちが「ストレス」と言っているものの多くは、この「心理・社会的ストレッサー」のことを指しています。
心理学者のアルフレッド・アドラーは人の悩みの9割は人間関係であると断言しています。
また、日本労働組合総連合会が発表した「コロナ禍における職業生活のストレスに関する調査2022」では、「現在、仕事や職業生活に関してストレスを感じている」労働者は74.3%でストレスの要因の1位は「職場の人間関係」となっています。
3.精神的疲労と慢性疲労症候群
慢性疲労症候群については明らかになっていないこともありますが、主な原因は過度なストレスとウイルスと考えられています。
過度なストレスによって睡眠障害となり自律神経が乱れ、免疫力が低下し体の中に潜伏していたウイルスが活性化し、免疫物質が過剰に放出され、脳の機能に異常が起こるというメカニズムが進行し、疲労が慢性化していきます。
多くの人が感じている人間関係のストレスが大きくなれば、疲労が慢性化し、慢性疲労症候群になる可能性があります。
慢性疲労症候群を予防する、つまり「心」を守るためにはどのような方法があるのかをお伝えします。
4.心を守る習慣
精神的なストレスの主な原因は人間関係です。
それでは、人間関係においてどのようなことがストレスになるでしょうか。
職場や家庭でこのようなことはありませんか。
- 意見が合わない
- 相手に変わって欲しいのに
- 変わってくれない
- 自分の考えが思うように伝わらずに感情的になる。
そのような時に役立つ、相手に伝わりやすり関係を形成する方法、自分のストレスにならず相手に伝える方法、人間関係で疲れた時の対処方法をお伝えします。
(1)信頼関係の形成
心理学に「ラポール」という用語があります。
これは自分と対象となる相手の心が通じ合い、互いに信頼しあい、受け入れていることを表しています。
ラポールを築く代表的なテクニック
- 相手のしぐさや姿勢などを鏡に映しているかのように真似をする
- 相手の話す声の大きさや、声の高さ、口調の速さを合わせる
- 呼吸を合わせる
私たちは無意識に自分に似た相手に対して、安心感や親近感を覚えます。
相手が無意識的に、あなたを似た存在であると認識することで、相手の警戒心を解き、好意や安心感を与えることができます。
(2)Iメッセージ(アイメッセージ)
コミュニケーションの方法として聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
職場や家庭において、自分の思いが相手に伝わらず、イライラすることもあるのではないでしょうか。
怒りが発生する時には、悲しみや不安、困惑、恐れなどの感情が根底にあります。
相手の行動に対し怒りの感情を持った時に、感情にまかせて相手を批判しても自分の本心は伝わりにくく、人間関係は悪くなりがちです。
Iメッセージは主語を「私」にするため、自分の思いや要望にも気づきやすくなり、根底にある感情を伝えることが可能になります。
Iメッセージは私見なので、相手を批判したり相手の行動を制限したりするニュアンスは含まれません。
つまり相手を尊重しながら自分の意見や考えを伝えることができます。
Iメッセージの伝え方のポイント
- 相手の特定の行動を伝える
- それによる自分ヘの影響を伝える
- それによる自分の感情を恥ずかしがらずに伝える
- 行動は相手にまかせ指示しない
例えば、大音量で音楽を聴く息子に対して母親が困っている場面でIメッセージを使うとどうなるでしょう。
- あなたがそのボリュームで音楽を聴いていると
- 私は本を集中して読めないの
- 明日までにこの本の感想を友人に伝える約束をしていて、それを考えると焦って嫌な思いになるの
- 助けてくれる?
このようにポイントに沿ってこのように伝えます。
(3)瞑想
「心」を「今」に向けた状態です。
私たちは今この瞬間を生きているようでいて、実は過去や未来のことを考えて「心ここにあらず」の状態が多くの時間を占めています。
特に過去の失敗や未来の不安といったネガティブなことほど、考えを占める時間が長くなりがちです。
つまり自分で不安やストレスを増幅させてしまっているのです。
人間関係のストレス、更に自分でそのストレスを増幅してしまうと精神的な疲労へとつながります。
精神的な疲労で脳は疲れ、感情のコントロールも難しくなっていきます。
脳の疲れをとるのには瞑想が効果的であるといわれています。
瞑想の方法
- 楽な姿勢で座る
- 自然に呼吸し、吸う息と吐く息を意識する
- 意識が逸れたらそっと呼吸に意識を戻す
②と③を繰り返します。
今回は人間関係でストレスを感じやすい状況のコミュニケーションスキルや、疲労を感じた時の行動をお伝えしました。これらを日常生活で使っていただき、習慣化することが「心」を守ることにつながります。
5.まとめ
精神的な疲労の原因は人間関係のストレスが大きく影響しています。
疲労が蓄積すると体の調子が悪くなり、様々な病気になってしまうこともあります。
コミュニケーションスキルを身につけ、瞑想をすることで人間関係のストレスを緩和することが可能です。
「心」を守る習慣を続けることで、慢性疲労症候群の予防をしましょう。
また日々の生活をできるだけ快適に過ごす一助になれば幸いです。
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この記事を書いた人
清水明日香
プロフィール
看護師経験23年。総合病院(消化器外科・内科、整形外科)、リハビリテーション病院(地域包括支援病棟)、老人施設で勤務。
現在は精神科訪問看護師として月に約100件の訪問をしている。
精神科訪問看護では、薬物療法などの治療が継続して受けられるようにする支援、ご利用者様やご家族の悩みや困りごとを一緒に明確にし、解決する方法を考え、行動できるように支援している。
ウェルネスナースとして女性が健康でいるための情報を発信している。
執筆・講座
「いつも疲れを感じている40代女性がセルフケアを身につけ元気を取り戻すためのお話会」/ウェルネス講座
「自分で心とからだを元気にするためのブログ」/note