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看護師がわかりやすく解説!認知症と物忘れ③物忘れが気になった時の検査と診断

  • 最近、物忘れが増えていることが気になってきた。
  • 認知症かもしれないと考えると心配なので、検査を受けたい。
  • でも何科にかかれば良いのだろう?
  • どんな検査をするのだろう?

いざ物忘れが気になって検査を受けようと思うと、こんな疑問が出てくるかもしれません。
この記事では、物忘れが気になったときの検査と診断について説明します。

問診票
この記事の目次

1.物忘れの相談ができる診療科

受診受付

物忘れが気になったとき、何科を受診すればいいのでしょうか?

病院には様々な診療科があり、どの科を受診して良いのか分からなくなってしまいますよね。
物忘れの相談に対応ができる診療科を5つ紹介します。

(1)心療内科

心療内科は、心理的な要因から現れた身体の症状を治療するための診療科です。
心理的な要因で現れる症状を心身症と呼びます。
物忘れは心身症として起こることもあるため、心療内科で物忘れの相談をすることができます。

(2)精神科

精神科は、精神疾患を専門に治療するための診療科です。
精神科では認知症による記憶障害や、混乱などの精神症状の診察・治療を行っています。
また、古くからある診療科であり、認知症を診療してきた歴史も長いです。

(3)脳神経外科

脳腫瘍やクモ膜下出血、脳梗塞などの脳の病気が原因で物忘れ症状が起きることもあります。
そのため、脳神経外科でも物忘れについての相談をすることが可能です。
脳神経外科では、手術によって改善が期待できる認知症の治療を行っています.

(4)神経内科

神経内科は、脳や脊髄、神経、筋肉の疾患を診察する診療科です。
扱う症状は、頭痛やめまい、しびれ、ふらつき、物忘れやしゃべりにくさなど多岐に渡ります。
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症は神経内科疾患でもあるため、認知症の診察・治療も行っています。

(5)物忘れ外来

物忘れと認知症を区別し、認知症を早期発見するための外来です。
総合病院の中の診療科の1つとなっていることが多いです。

外来の医師は精神科や神経内科の医師など様々ですが、認知症を専門に診察している医師が担当をしています。

物忘れの相談ができる診療科がいくつもあることが分かったけれど、結局どの診療科にかかれば良いのか分からない。そんな時は普段のあなたをよく知っている、かかりつけ医に相談してみて下さい。
いつもと何がどんな風に違うのかを客観的に診察してくれるのがかかりつけ医です。
かかりつけ医からあなたに適切な診療科を紹介してもらいましょう。 

また、市町村によっては認知症に対する取り組みの一環として、認知機能検査の費用の助成を行っているところもあります。

お住まいの地域の役所や地域包括支援センターに問い合わせることも有効です。

2.診察と検査の流れ

病院を受診し、検査を受けることになりました。
検査の流れは以下の順番が一般的です。

問診、診察 → 身体検査 → 神経心理学検査 → 画像検査

(1)問診、診察

問診では本人や家族から、気になっている症状や、家族歴、既往歴、生活歴などについて詳しく聞き取りをします。
また、麻痺や身体のこわばりなどがないか身体所見の診察をします。

(2)身体検査

血液検査、尿検査、心電図検査、レントゲン検査などの一般的な検査を行います。
物忘れが認知症によるものか、その他の疾患による症状なのかを鑑別するためにも行います。

(3)神経心理学検査

計算問題や文字や図形、絵を書く検査や口頭で質問に回答する検査です。
緊張や不安などによって結果が左右されることもあるため、診断のための1つの材料として扱われます。

(4)脳画像検査

放射性同位元素を標識した薬が注射され、血管を介して脳にたどり着いたタイミングで写真を撮影する検査です。 これによって、脳の機能が相対的に落ちやすい、あるいは高まりやすい場所を調べることができます。

3.検査の主な種類

PCにて説明

神経心理学検査と画像検査にはさまざまな種類があります。
主な検査の種類と概要を説明します。

神経心理学検査の主な種類

①改定 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

計算や日付、場所などの記憶に関する内容を口頭で質問し口頭で答える検査です。

動作をともなう質問がなく10分程度と短時間で行うことができるため、心理的負担が少ないと言われています。
30点満点で20点以下は認知症の疑いがあるとされています。

②MMSE(ミニメンタルステート検査)

長谷川式簡易知能評価スケールと同様に、アメリカで開発された認知機能の状態を評価できる検査です。

長谷川式簡易知能評価スケールより問題の数が多く、記述で回答する項目もあります。
麻痺などによって書くことが難しい場合は、長谷川式簡易知能評価スケールの方が適しています。

③時計描写検査(CDT)

時計の絵や時刻の描き方を評価する検査で、アルツハイマー型認知症が疑われる場合に有効な検査です。
3枚の用紙を使い、円、数字、時計の針の描き方を評価します。

時計描写テスト

認知症の疑いがある場合は、時計の形を極端に小さく描く、数字や時計の針の描き方を間違えることなどがあります。

④高齢者のうつ病評価尺度(GDS-S-J)

物忘れ症状が気になって受診する方の中には、うつ病を患っている方もいます。
うつ病による認知機能低下を仮性認知症といい、認知症とは異なります。
高齢者のうつ病評価尺度は、15項目の質問に「はい・いいえ」で回答します。
点数が高いとうつ病の傾向が強いと診断され認知症との鑑別診断として使われます。

脳画像検査の主な種類

①CT検査

身体にエックス線を照射し、各組織のエックス線の吸収量を画像化するもので、脳を輪切りにした断面図を撮影することができます。

脳腫瘍や脳梗塞などの有無を確認し、物忘れ症状の原因が脳疾患によるものかそれ以外によるものかを鑑別します。
また脳の萎縮度を調べることもできます。検査時間は30秒~5分程度と短いため、身体的負担が少なく検査を受けることができます。

②MRI検査

MRIは人体を強い磁場の中に置き、電磁波を当てたときに生じる微細な電気信号を画像化する検査です。
脳の形態を鮮やかに写し出しわずかな変化も写るため、早期診断に役立ちます。

検査時間は30分から1時間ほどと長く、装置が発する音も大きいため、CT検査よりも身体的負担は大きくなります。また、入れ歯やペースメーカーなど体内に金属がある人は受けることができません。

③SPECT検査

SPECT検査は特殊な放射性医薬品を用いて、脳の血流状態を画像化する検査です。

CTやMRI検査が脳の形状の変化をとらえるのに対して、SPECT検査は脳の機能の変化を知ることができます。
脳の血流が低下している部分や低下の度合いによって、認知症の診断や認知症の種類の鑑別のための診断材料となります。

上記の検査は必ず全て受けるわけではありません。どの検査を受けるかは医師の判断によって異なります

4.まとめ

物忘れが気になった時に、相談をできる診療科や検査の流れ、種類を解説しました。

認知症と診断が付くことが怖いという理由で受診を控える方もいるかもしれません。

しかし、認知症は早期に発見し適切に治療をすることで、進行が緩やかになる可能性がある疾患です。

気になる症状があるときは、早めに受診をすることをおすすめします。

また、検査を受けるときには、事前に家族や身近な人に気になっている症状を相談し、受診に付き添ってもらいましょう
自分では気が付いていない変化も身近な人は気が付いていて、問診や診察の際に重要な情報となることもあります。診断を受けるときも、信頼できる人と一緒にいることで安心して話を聞くことができ、医師の話を理解しやすくなります。

認知症や検査について事前に調べて理解しておくことも大切です。

事前に知っておくことで、落ち着いて診察や検査を受けることができます。
この記事が早期発見・早期治療のための受診のきっかけになれば幸いです。

次回は、物忘れの予防と対策について説明します。



この記事を書いた人

清水千夏
<プロフィール>

看護師経験15年(大学病院9年、訪問看護4年)
大学病院で、急性期(消化器外科、心臓血管外科、HCU)から退院支援部門まで幅広く経験を積む。その後、訪問看護ステーションに転職。

現在は立ち上げから関わっている訪問看護ステーションで勤務。0歳から100歳まで様々な年齢の方を対象に、住み慣れた自宅で暮らし続けるための支援を提供している。

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