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看護師が解説!高齢者の骨折予防③骨折が治るまでの経過と注意点

事故や転倒で骨折した場合、ギプスや装具を使用した保存療法骨に直接プレートやボルトを埋め込んで固定する手術療法のどちらかを選択して治療していきます。

なぜ、一度折れた骨がくっつくのでしょうか。
ここでは、骨折から治癒に至るまでの過程を説明していきます。

この記事の目次

1.骨折が治癒する経過

骨折をすると、主に3つの段階を経て治癒していきます。

①炎症期 骨折直後~数日

骨が折れると骨の周りにある血管も傷つき出血を起こし、折れた部分に血液が溜まり血腫(けっしゅ)を作ります。
同時に骨折した部分の炎症も出てくるため、腫れと痛みが現れてきます。
腫れることで骨折した部分や近くの関節が動きにくくなる場合があります。

②修復期 骨折後10日~3ヶ月頃 

骨折でできた血腫の中から骨のもとになる組織が作られ始める時期です。
次第に組織がかたまり、仮骨(かこつ)という骨ができます。
最初はやわらかい組織から軟骨程度ですが、時間が経つにつれて強くなり強度を増していきます。
骨折後20日~60日で一般的な骨に戻りますが骨の強度は年齢や個人差があります。

③リモデリング期 骨折後3ヶ月~数年  

修復期で、仮骨から軟骨に移行しさらに修復が進んだ状態を指します。
軟骨から骨へと変わり、強度が次第に増していきます。
骨折治癒の最終過程で形をつくり、調整しているためこの時期は数か月から数年間にわたり経過します。

骨の変化

2.骨折が治る判断基準

①骨折が治る目安

どこの場所が骨折したかによって治る過程はさまざまです。
ここでは、部位別に治る期間について説明していきたいと思います。

橈骨(とうこつ)遠位端骨折約6~8週
鎖骨(さこつ)骨折約6~8週
上腕骨近位端骨折約8~12週
肘頭(ちゅうとう)骨折
ひじの骨折
約6~8週
大腿骨頸部骨折約8~12週
(手術を行った場合)
膝蓋骨(しつがいこつ)骨折
ひざの骨折
約8~12週
足関節骨折約8~12週
踵骨(しょうこつ)骨折
かかとの骨折
約8~12週
胸腰椎圧迫骨折
背骨の骨折
約8~12週

年齢や個人差・ご本人の持病が影響する場合もあるため治癒の期間は前後しますが大きく区別すると、以下の経過で治癒していきます。

  • 上肢(うで)の骨折では約2ヶ月
  • 下肢(あし)の骨折では3ヶ月

②治癒したと判断する基準

骨折が治癒することを骨癒合(こつゆごう)といいます。

骨癒合はレントゲンを定期的に行い、骨折した部分の画像を見比べて経過を見ていきます。
レントゲンでは骨は白く映るので、骨折が治癒してくると骨折した部分が濃くはっきりとしてきます。

骨折した部分は骨折線と呼ばれる亀裂の線が現れますが、治癒していくうちに骨折線が消えて骨の連らなりを認めたときに治癒と判断されます。

症状の説明

3.骨折が治る経過で注意したいこと

【炎症期】 骨折による炎症や腫れで痛みが起きる時期

まず、患部の安静を最優先に行います。
次に痛みが強い場合は鎮痛剤を服用し痛みを和らげます。
更に腫れている場合は患部を冷やします

炎症期で注意することは無理に動くことは避けましょう

骨折している部分が動くことで、ずれてしまい、痛みが強くなったりします。
また、ずれたまま骨がつくと痛みが続く場合があるため正しい位置で骨がつながるように安静にすることが必要です。

【修復期】元の骨に戻っていく過程(骨折後20日~60日の期間)

手術療法・保存療法のどちらにおいても骨が作られていく大切な時期です。

この時期に注意する点は以下の2点です。

  • 必要以上の力を骨折した部分にかけるのは避けること
  • 筋肉が落ちないように骨折部以外の運動を行う

この時期は、新しい骨ができ始める時期ですが、骨の強度は十分とはいえません。
無理をして必要以上の力を骨折部にかけると骨折部がずれてしまう、骨折部が再骨折する可能性があります。

この時期は、レントゲンで骨のつき加減を見ながら運動量を調整していく必要があります。
主治医が、運動量の指示を理学療法士や作業療法士に伝えてリハビリのメニューを調整します。

運動量は、骨のつき加減を見ながら調整していくので段階的に上がっていきます。
通常だと2週間から3週間の間隔で運動量を上げていきます

必要以上の力を骨にかけないことと、筋肉が落ちないように運動をすることは反対のように思いますが、身体を動かすのには筋肉が必要です。

骨折をすると、骨折部の安静やギプス・装具での固定を行うため、骨折した側の手足や骨折部の運動を制限する場合が多いです。

更に、入院をすると動く範囲が狭くなるため、運動する機会が減ります。
運動する量が減ると自然と筋肉が減っていきます。
筋肉を動かすことは骨に刺激を与えるため、骨折部の治癒を促すことができます。

どんな運動が筋肉を保つために効果があるのかは、骨折した部位や年齢によって異なるため、かかりつけのリハビリスタッフへご相談ください。

また、この時期でも熱感や腫れが続く場合がありますが、患部を冷やしすぎると血流がわるくなり筋肉も冷えてしまい動かしにくくなる場合があります。
そのため、冷やさないように説明されることがあります。

どうしても、腫れや痛みがある場合は1日のリハビリが終了したときだけ患部を冷やす場合があります。

【リモデリング期】修復された骨を更に強くする時期

リモデリング期で、骨折した部分の治癒を仕上げていくイメージです。

骨粗鬆症がある場合、骨がもろいと転倒や尻もちといった衝撃で再骨折しやすい場合があります。
この時期になると、治療が終わり退院し日常の生活に戻っていきます。

日常の生活では無理をしてしまうことが多く、再骨折や転倒することで別な場所の骨折を起こす可能性があるためご家族の協力が必要となっていきます。

退院前に、リハビリテーションスタッフと動作の確認を自宅で行うことがありますができることできないことの確認は必要となっていきます。

リハビリ

4.おわりに

骨折が治るまでには段階があり、注意することも段階によってさまざまです。
骨折をした場合、ほとんどが3つの段階を経過して治癒していきます。

なにに注意していけばいいかを知ることは再骨折を防ぎ、骨折が治癒する過程を助けることにつながります。

特に高齢者の場合、骨粗鬆症や持病といった骨折以外の要因で骨の治りが遅い・再骨折の可能性は高いため、退院前にご自宅で注意する点を主治医やリハビリテーションスタッフにしっかりと確認してください。

医師からの説明


この記事を書いた人

看護師:渡邉加代子

渡邉 加代子

【プロフィール】

看護師歴24年目。
これまで急性期(整形外科・外科・脳外科・内科・循環器)病棟での勤務を経験。
2016年に現在の職場に転職し、回復期リハビリテーション病棟は配属となる。
2019年から栄養サポートチームに所属し、各専門職と協力して週1回、入院患者様の栄養ケアを行っている。
今後は、退院先での適切な栄養ケアが継続できるようにパンフレットの作成や地域高齢者を抱えるご家族への栄養相談や講座の開催を考えている。

【所属】

一般社団法人 日本ナースオーブ所属 ウェルネスナース

【執筆】

食と健康について考えるブログ/note

【講座】

Wellnessチャートで賢くやせる/ウェルネス講座

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